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あの先生になりたくて#8入園式

ーー15年後ーー
あれからどんな道を歩いても、私の心の中にはいつもあの先生がいた。
夢は一度も揺らがなかった。
私は、あの先生のようになる―。

#8 入園式

夕方、打ち合わせを終えて、ようやく一息ついたころだった。
入園式を明日に控え、園内はどこか落ち着かない空気が流れている。

そんな中、先輩たちが「入園式で履く靴」の話をしていた。

——靴?

服装の確認はしていたけれど、室内履きのことまでは深く考えていなかった。
幼稚園だし、上履きでいいのかな。そんな軽い気持ちで聞いてみた。

すると、空気が一変した。

「え?今さら?」
「ソールの柔らかい黒のフラットシューズだよ!」
「分からないことは早めに聞いてって言ったよね!?」

思わず背筋が伸びる。時計を見ると、すでに18時を過ぎていた。

ーーまずい。

同期3人で顔を見合わせ、そのまま靴屋へ走った。
閉店間際の店内で、必死に条件に合う靴を探す。
なんとか3人とも購入できたときには、全員ぐったり。
「こんなことあるんだね」と苦笑いしながらも、心臓はずっとバクバクしていた。

分からない、というより
「気づけていなかった」ことへの怖さ
を、初めて実感した瞬間だった。

そして迎えた、入園式当日。

バタバタの準備だったけれど、式自体は予定通り、無事に終わった。
ほっとしたのも束の間、帰り際には保護者の方からたくさんの質問をいただいた。

持ち物のこと。
役員のこと。
預かり保育のこと。

どれも、私にはまだ分からないことばかりだった。
「すみません、確認してみます」

そう言いながら周りを見渡すけれど、近くに手の空いている先生はいない。
結局、「明日お返事しますね」とメモを取ることしかできなかった。

不安な気持ちで来てくださっている保護者の方に、何も答えられない自分が、ただただ情けなかった。
力になれなかったことが申し訳なくて、
胸の奥が、ずんと重くなる。

それでも。
初めて、自分のクラスの子どもたちに会えた。
その瞬間のうれしさは、ちゃんと心に残っている。
明日から始まる保育を思うと、楽しみな気持ちもあった。
不安と反省と、期待。

いろんな感情を抱えながら、
私は「先生」としてのはじめての入園式を終えたのだった。

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