あの先生になりたくて#26 園長先生の言葉
ーー15年後ーー
あれからどんな道を歩いても、私の心の中にはいつもあの先生がいた。
夢は一度も揺らがなかった。
私は、あの先生のようになる――。
#26 園長先生の言葉
でも、園長先生だけは違った。
「これからは子育てをしながら働く人が増えていく。そういう時代になっていくと思う。あなたの思いを私は応援する。園には産休・育休という制度があるのだから、使ってみてほしい。そして、若い先生たちに“子育てをしながらでも仕事を続けられる”という姿を見せてあげてほしい。」
そう言ってくださった。
「この園では、まだその経験をした人がいないから、大変な思いをすることもあるかもしれない。でも、何かあったら力になるから、遠慮なく言ってね。」
その言葉に、張りつめていた気持ちが少しほどけた。
園内で反対の声ばかりを耳にしていた私にとって、園長先生の応援は何より心強かった。
そして、私は仕事を続けることを決めた。
翌年度は担任を外れ、預かり保育を担当することになった。複数人の先生で担当することに加え、バス乗車がないことも理由の一つだった。
そして、しばらくして私は妊娠した。
いろいろなことを言われることもあった。でも、「これは自分で決めたこと。そして大切なわが子のためなんだ。」そう思うことで、心を強く持つことができた。
そして、ここでも保護者の方々は本当に温かかった。
「体調は大丈夫ですか。」
「無理しないでくださいね。」
そんな何気ない声かけが、どれほど励みになったことだろう。
妊娠中の体験談やアドバイスをいただき、つわりのつらさにも共感してもらえた。そのたびに、お母さん、お父さんたちの強さや優しさを感じた。
日に日に大きくなっていくお腹を見ながら、「本当に私も母になるんだ」と実感する毎日だった。
園に通う子どもたちのお母さんも、みんなこうして命を育み、出産を経験し、今ここで子育てをしている。その当たり前のようで当たり前ではない時間の積み重ねを思うと、とても感慨深かった。
幼稚園という場所は、子どもを育てる場所であると同時に、お父さんやお母さんの人生ともつながっている場所なんだ。
そんなことを、初めて心から感じた。
後輩たちも、周りの空気を気にしながらだったと思う。それでもたくさん気遣い、支えてくれた。
たくさんの人に支えられながら、大きなトラブルもなく、予定していた産休の日まで働き切ることができた。
感謝の気持ちを一人ひとりに伝え、私は無事、産休へと入った。
