23. これで大丈夫
入園からこれまで小さなタオルケットを、毎日肩身離さず持ち歩いている彼は、年長組になった4月も毎日泣いていました。
なかなかママと離れられなくて、
「初めてやること」は、いつも先生と一緒。
何かあるたびに、そっと私の手を握ってきていた。
そんな彼がタオルケットを手放せるようになり、頼もしく卒園証書を受け取り、この1年で本当に大きく成長したなぁと胸がいっぱいになりました。
卒園式が終わり、保護者の方と帰る時間。
いつも通り……ではない、
どこか特別な空気が流れる中で、
彼は私のそばに、ちょこんと座りました。
少しうつむきながら、ぽつり。
「明日から、先生に会えなくなっちゃうの、さみしい。」
その不意打ちのひとことに、胸がぎゅっとなって、
思わず私も、「先生もだよ」と返しました。
少しの間、静かな時間が流れる.....
すると彼は、お母さんのスマホを手にして、
私の顔の前にぬっと差し出してきました。
「ん?」と思った次の瞬間。
カシャ。
ものすごく近い距離で、私の顔を撮影。
どアップ。笑
あとで見せてもらったら、顔のパーツしか写ってない。しかもピンぼけ。
正直、これが大丈夫かどうかはだいぶ怪しい。
写真を確認した彼は満足そうにうなずいて、
「これで、だいじょうぶ!」
そう言いました。
そのとき、ふと思ったんです。
彼はきっと、“離れるために” 写真を撮ったんだなって。
これからは、今までみたいにすぐ頼れない。
それをちゃんとわかっているから。
だからその代わりに、
「見るための先生」を持って帰ろうとしたんだ。
こんなふうに、自分なりの方法で次のステップに進もうとしている。
卒園って、やっぱりすごい瞬間だなと思いました。
ずっと甘えん坊だった彼が、
「もうだいじょうぶ」
って、自分で言えるようになった日。
それはきっと、私にとっても
「もうだいじょうぶ」
って手を離せる日だったのかもしれません。
卒園って、子どもだけじゃなくて、
先生にとってもひとつの節目なんだなと
改めて感じた瞬間でした。
