見出し画像

幻想小説|尊き君へ─第10話:静寂と君と─



そうして、君は──

僕の目を、真っ直ぐに見つめていた。




そして、僕は──

繋いだ手を、ぎゅっと握り返した。




──僕たちの“心”は、同じだった。




周りにあった優しい景色は、


大きく揺れたかと思うと──


その後、


まるで“糸”のように──


この世界は、静かに解けていった。




僕が、後に聞いた話によると──




この森では、立ち入った者に対して、

心から“望む世界”を見せてくれるらしい。


それは──

喉から手が出そうなほどに。


その者にとっては、

この上なく──幸せなもの。



そうやって、世界に誘われ。




戻れない者は──

この森の“糧”となるようだ。





  紡──起きて。

  この森を、早く抜けてしまおう。
                  」




木に寄りかかるようにして、

君は──目を、閉じていた。


そして、植物の蔓(つる)のようなものは、

まるで、君に狙いを定めるようにして──。



足の近くまで──

静かに、伸びてきているように見えた。




  君は、本当に世話が焼けるな。
  隣にいるのが──僕でよかったよ。
                   」



まだ目覚めそうにない“君”を抱き抱えると。




僕は、森の出口がある方へと

──静かに、歩き出した。


森の中では──

“静寂”だけが響き渡っていた。



僕は、もう揺らぐことのない心で。



尊い君と一緒に──

前へ向かって、歩いていった。




いいなと思ったら応援しよう!