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キックバイクの嗜み方

そろそろ自転車デビューを考えないと。気づけば長男がそんな時期にさしかかっている。

自転車に乗る前段階として、私の幼少期は三輪車しか無かった記憶だが、今はキックバイクが主流なのかもしれない。公園に行くとキックバイクを乗り回す子どもたちで一杯だ。

近所で大会が開かれると聞いて、一度見に行ったことがある。愛車に跨りスタートラインに並ぶ子どもたち。その佇まいはレーサーそのものである。号砲とともに凄いスピードで駆け抜ける。華麗なハンドル捌きで、次々にコーナーをクリアする。ふらっと見学に来たつもりが、じっくり観戦してしまった。

長男に「あれ欲しい?」と尋ねたところ、「乗ってみたい」とのこと。体を動かす練習になりそう、バランス感覚も良くなりそう、そんな親側の想いもあり、その足で近くのショッピングセンターへ買いに行った。

息子が選んだのは、大好きな黄色のキックバイク。肘当て、膝当ても購入し、そのまま公園に戻り、遂に実践である。これまで割と何でもすぐにできた長男。キックバイクもすんなり乗りこなすとのと思っていた。

だが、なかなかうまくいかない。どうしてもハンドルを持つ手に力が入り、かえってバランスが取れないようだ。励ますように声をかけながら、練習を促していたが、遂にキックバイクから降りた。

キックバイクを押しながら、こちらに歩いてくる。できないことが悔しいんだろうな、と顔を覗いてみたが、すごくキリッとしていた。ん?…何とも言えない違和感があった。

そのまま表情を変えず、キックバイクを押し続ける長男。思わず何してるの?と尋ねた。

「ゆうまもこうしてたから!」

ゆうまとは、ちょうどハマり始めたウルトラマンシリーズの主人公である。たしかに、自転車を押しながら歩くシーンがよく出てくる。長男はなりきっていたのだ。だから、キリッとしていたのか。

そして、おもむろに木陰に向かっていく長男。エアスタンド上げを繰り出し、近くの木にキックバイクを立てかけた。これは、我々が自転車を停める時のマネだ。水分補給し、また自転車を押す。そして、停める。

乗ってくれ。結構な衝動買いだったのに。さっきのちびっこレーサー達は誰も愛車から降りて無かったぞ。あんな風に乗り回してくれないか。

はは〜ん、さては『格好からはいるタイプ』だな。乗る雰囲気を求めるタイプ。身に覚えがあるぞ。

さすが、ジム通いを決心し、ちょっと良いウェアとシューズ、プロテイン専用のボトル、筋トレ用手袋まで買って、1週間続かなかった私の血を継いでいるだけある。

それから約2年、彼は無事にレーサーになれた。「ここは降りて押して歩いて!」と言っても、頑なに跨ろうとするほどだ。

私は手袋をどこに片付けたかわからない。




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