見出し画像

俺氏、失いたくなかったものが友情ではなかったと気づく件。

五十路のおじさんが中二病を再発したので、ラノベ文体で日常ログを書いた。
「痛い」とか、「キモイ」とか、そう思っても胸にしまっておくように。
オジサンはしいたげられているんだ!
……そうだろ?
……そうだよな?

中二病を再発した著者近影

閑話休題。

休日の昼下がり。
俺氏は、完璧に防衛された要塞(リビング)で、平和という名のコーヒーをすすっていた。
そこへ、静寂を切り裂く着信音。
画面に光るのは、大学時代の友人の名前だった。
「おお、懐かしいな」
警戒心ゼロで、通話ボタンをスワイプした俺氏がうかつだった。

繋がった途端、耳元に浴びせられる英語の弾幕。
ネイティブらしさなど微塵もない、ただテンションだけが異常に高い、意味不明な英語の羅列である。

「……もしもし?」

状況が飲み込めず、素のトーンで返す俺氏。
すると向こうは、電話口の向こうで大きく笑い、一方的に電話を切った。
ツーツーという乾いた電子音だけが残る。

さらに数分後、今度は別の友人から、まったく同じノリで着信が来た。
見事な連携攻撃である。

……笑えなかった。

たぶん、昔なら笑っていた。
学生時代なら、「馬鹿だなあ」「お前ら昼から飲んでんのかよ」と、同じテンションで笑い返していたはずだ。
だが、俺たちはもう、いい年をした大人だ。
それぞれの休日の昼下がりがあり、それぞれの生活のペースがある。
そこに酔っ払って土足で踏み込み、何十年も前の内輪のノリを一方的に押しつけて笑う。
スマートフォンの黒い画面を見つめていると、自分の中で何かが、静かに終わっていくのが分かった。

彼らが変わったのか。
俺氏が変わってしまったのか。
たぶん、どちらでもあるのだろう。

画面を操作し、連絡先の詳細を開く。
指先は、ひどく冷静だった。
『着信拒否』。
赤い文字をタップする。

俺氏が今まで失いたくなかったのは、彼らとの現在の友情だったのか。
それとも、無傷のまま残しておきたかった、ただ眩しい青春時代の思い出だったのか。

だがもう、そのどちらも、あの通話と一緒に切れてしまった。

冷え切ったコーヒーを、一気に喉へ流し込む。
部屋には、換気扇の低い唸り声だけが響いていた。


*この出来事について、後日もう少し静かに考えた文章も書きました。
笑いではなく、過去との距離について書いたものです。
👉エッセイ:切断された回線


俺氏シリーズのマガジンはこちら👇

KDPなどに関する制作ログはこちら👇

自己紹介記事はこちらです。
各作品のあらすじやマガジンへのリンクもあります。👇

いいなと思ったら応援しよう!