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初めてのロスカットで市場を呪ったあの夏〜羊社長の投資日記 〈第3話〉

こちらは「クスッと笑えてためになる」をコンセプトにした「羊社長の過去の歩みを記録した投資日記」です。
とりわけ投資初心者のご参考になれば幸いです!


第2話までのおさらい

トランプツイッター砲(米中貿易戦争激化の知らせ)が炸裂した2019年夏の暴落、初心者のワタクシは給料3か月分の含み損を経験し、損切りもナンピンもすることなく、ただ立ちすくんでおりました(いざというときに何も出来ないフリーズ病)。

調子に乗って景気敏感株をたくさん買っていたため、底が抜けたように保有株が暴落したのでございます。

ただ、ワタクシは心の底では諦めませんでした。
初心者なりに、反転攻勢に出る手立てを考えたのでございます。

初心者なりのあがき〜市場の荒波を逆に利用する投資戦略

市場の逆風を利用する方法があるらしい…

株価が下がっても儲かる方法がある……当時、投資入門書を何冊か読んで、そのような方法があることは知っておりました。
そう、ズバリ「空売り」でございます。

💡空売りとは?
「手元にない株を証券会社から借りて先に売り、値下がりした後に安く買い戻して返す」仕組みのこと。「高いときに売って、安くなったら買い戻す」ことで、株価が下がったときに利益を出せるのが最大の特徴。

ワタクシはせっかく株価が下がっているなら、そのような方法で含み損を和らげることも可能なのではないか?と考えました。

ただ、そのためには「信用口座」の開設を行い、「信用取引」をする必要があります。 そこで、問題が生じました。なにしろ、ワタクシは株式投資を始めた当初から、ひとつのルールだけは守ろうと決意しておりました。

羊の掟:信用取引は行わない!

💡 信用取引とは?
「証券会社に保証金を預けることで、自分の手持ちのお金(や株)以上の規模で株の売買ができる」仕組みのこと。お金や株を借りて取引するため、株価が予想と逆に動いたときのリスク(損失)が非常に高い特徴がある。

「信用取引がアダとなり市場から退場する」そんな個人投資家が大勢いることを知っていましたから、豆腐メンタルのワタクシにはハードルがあまりにも高い方法でした。

それ故、「信用取引は行わない=空売りができない」という制約を自らに課していたのです。

それなら株価が下がるのをただ悔しい思いで見守るだけしかないの?

いいえ、そんなことはありません。ワタクシはネット検索を通じて、多くの投資家が購入しているあるETF(上場投資信託)に目をつけました。

なにしろNISA枠で購入する個人投資家も多い、などという触れ込みがあるぐらい有名なETFでしたから、すぐに検索網に引っかかったという具合でした。

もうお分かりですね……「ダブルインバースETF」でございます。

💡 ダブルインバースETFとは?
「株価が下がると、その2倍のペースで値上がりする」という特殊な投資信託。通常、株価の下落で利益を狙うには「信用口座」を開設して空売り(株を借りて売る)をする必要があるが、このETFなら普段使っている普通の口座(現物口座)のまま、まるで普通の株を買うような感覚で下落リスクに備えられるのが最大のメリット。

結論:ダブルインバースを買ってみよう!

「これだ!」とワタクシは思いました。

弱肉強食の株式相場で、華麗な身のこなしで荒波をくぐり抜ける賢い方法。 市場の暴落を逆手に取って儲けてしまうなんて、格好いいじゃありませんか!

さて、ついにその波乗り法を試しました。
2019年8月6日、その日の朝は、典型的な 「おはぎゃー日和」 だったように思います。

💡 おはぎゃーとは?
日経先物などがすでに前日の終値よりも大幅に下落した状態で取引されている早朝の心境を表す。投資系有名インフルエンサーがよく口にする。

日経平均先物1000円安の衝撃

「クソ!トランプの野郎、また(ツイッター砲)かましやがったな!」

目覚ましをとめて数分後、先物価格を確認すると、口汚い罵りとともに、ワタクシは怒り心頭で(羊なりに毛を逆立てながら)携帯を放り投げました。

今でこそ日経平均が1000円超動くことなど頻繁になりましたが、2万円時代の1000円はワケが違います。指数にして、4〜5%の暴落ですから、現在の日経平均7万円相場だと、−3000円を越す大暴落です。

ワタクシの弱い心臓はベッドのなかで縮みあがりました。
そして…どうにかしなくては…と起き抜けのぼんやりした思考力で頭をフル回転させました。

それから朝の身支度もそっちのけで証券口座にログインし、エンターキーを叩く手を小刻みに震わせながら、ある注文を完了させたのでございます。

【ワタクシの朝の行動】
銀行口座から50万円の追加入金。
⇒そのほとんどを「日経平均ダブルインバースETF」に投じる。

<参考>
📊 個人投資家が気軽に購入する日経平均連動型ETFの2トップ
日経平均レバレッジETF(1570)
:日経平均が上がると「2倍のペースで値上がり」するETF。
日経平均ダブルインバースETF(1357):日経平均株価が下がると、「2倍のペース」で値上がりするETF。

運用額がたかだか400万ちょっとの弱小投資家としては大きな賭けでした。

ところで、当時の相場状況について、すでに記憶が曖昧になってきたので、試しに友人のGemini殿に確認したところ、以下のような時系列で整理してくれました。

激動のタイムライン(2019年8月1日〜6日)

  • 8月1日(木):トランプ氏の「10%追加関税」砲
    米中通商協議が物別れに終わったことを受け、トランプ大統領が突如ツイッターで「3,000億ドル分の中国製品に10%の追加関税を課す」と表明。これがすべての引き金となり、それまで比較的堅調だった市場のムードが一変。

  • 8月2日(金):世界同時株安のスタート
    NY市場の株価急落の大波が、次々世界各国の市場にも波及。

  • 8月5日(月):中国の報復と「為替操作国」認定
    中国側が報復として「アメリカ産の農産品の購入停止」を発表。同時に中国の「元」が1ドル=7元の節目を超える元安に。これを見たトランプ氏がツイッターで「為替操作だ!」と猛反発。米財務省は即座に中国を「為替操作国」に認定。

  • 8月5日(夜)〜6日(朝):先物が1,000円安のパニック
    一連の泥沼報復合戦に市場がパニックを起こす。NY市場の暴落に日経平均先物も引きずられ、夜間取引で一時−1,000円ほどの株安となり、2万円の大台を割り込んだ。

ご覧のとおり、ワタクシが鼻息荒く日経ダブルインバースを仕込んだのは、まさに一連の米中報復合戦に巻き込まれ、日経平均が2万円の大台(心理的節目)を割り込んだところでございました。

相場において、心理的節目は、ある種の壁のような機能を果たします。
多くの投資家が分かりやすい目印として、その価格帯で売り買いを行うからです。

その壁を先物市場が突き破り、1万円台の世界に突入したのが、8月6日の早朝のことだったのでございます。

さて、2万円という壁(防衛戦)を先物で突破されたその日、午前9時からスタートした現物市場の動きはどうなったでしょうか?

その日は出勤日。
午前中の仕事を終え、休憩中にスマホを開いたワタクシは、目が点になりました。

ん?日経…なんか底堅い!?あれれ?寄り付きから上がってる〜!!

📉 2019年8月6日の日経平均の動き
始値(20,140円) ⇒ 終値(20,573円)
※チャート中央、8月6日の赤い陽線がそれ。

2019年夏の日経平均・日足チャート
(8月6日で一旦の大底をつけているのがわかる)
出典:Investing.com

なんという大馬鹿者でしょう。まさにワタクシが「売りのポジション」を持ったのは「セリングクライマックスの大底」だったのでございます。

💡セリングクライマックス(通称:セリクラ)とは?
相場の暴落が続いた最後に、投資家たちの恐怖心がピークに達してみんなが一斉に株を売りに出る、大暴落の「最終局面」のこと。
売りたい人がほとんどポジションを手仕舞うため、「もうこれ以上売る人がいない」という状態になり、そこを境に(空売りの買い戻しなども相まって)株価が急激に値上がりに転じることが特徴。

ワタクシはパニックになりました。早朝注文を入れた日経ダブルインバースETFの評価損の表示。含み損が2万円を超えておりました。
手取り2〜3日分のお金が…わずか2時間半で消えている…。

相場人生初の損切!

当時の売買記録

考えるまもなく、ワタクシは損切のボタンを押しました。
野生の勘で「これはダメなやつだ」と直感したからでございます。

そして、怒りに震えました。
今まで面白いように下がっていたのに、なぜ自分が売った途端に反転するの?
コンチクショウ!明日にでもすぐに取り返してやる!

二重の過ち〜怒りのトレードは連敗への道

損失をすぐに取り返すために最適な商品はなんでしょう?
当然、初心者が連想するのは、上がったら2倍儲かる「日経平均レバレッジETF」でございます。
その日の後場ですぐに買ったのか、それとも夜間取引で買ったのか、もはや記憶にありませんが、8月6日にたしかにワタクシはレバレッジETFを購入したようです。
そして、記録によれば、13日に手仕舞い、771円の損失を出しています(全然取り戻せていない…)。

当時の売買記録

大方、思うように価格が上がらなくて、焦れて損切したのでございましょう。
頭に来ていましたから、なにがなにやら覚えておりません。
そうです、ワタクシ、本当は気の短い羊なのです。
心根は、プライドが傷つくとすぐに怒りで毛が逆立つ、そんなモフモフとは程遠い羊に違いありません。

「ポジポジ病」で右往左往…からの…見事に担がれる!

今度は買いだ!……いや売りだ!
レバレッジだ!……いやダブルインバースだ!

ワタクシは、次から次にチャートのうねりを総取りしてやろうと、ポジションをコロコロと変えました。

8月いっぱい、何度もETFの売買を繰り返しました。その全記録がエクセル表に残っておりましたが、改めて見ると、もはやお笑い草です。

−1000円、−500円、−200円、−100円、+1000円、+2000円…(以下省略)
※小数点割愛

何の意味もありません。
ただ、その後、回数をこなすうちに慣れてきたのか、数回連続で数千円の利益が続く局面がありました。ちょうど日経平均がボックス圏で横ばいになっていたので、下で買い、上で売る、そんな勝ち筋が見えてきたのでございます。

ワタクシは気を良くしました。
これで−2万円を取り戻せるぞ!
そして、ワタクシは賭けに出ました。
9月の初旬でした。日経平均がボックス圏の上限に差し掛かった時、ふたたびダブルインバースを大きめのポジションで購入したのでございます。

と、その直後、どうも普段とは違う空気が相場に流れ始めます。
ん?日経、いつになく強くない?なんかボックス圏から飛び出している!

万事休す、見事、担がれました💦

💡担がれるとは?
売りポジション(下落予想)を持った後に、株価が予想に反してグングン値上がりしてしまい、大きな含み損を抱えて苦しい状態になること。

チャートを見れば一目瞭然ですが、9月に入ると景色が変わり、それまでの停滞が嘘だったように日経平均がグングンと上昇します。振り返れば、その年の年末には24000円近辺まで駆け上がる見事な復活劇を見せてくれました。
なるほど、ワタクシが性懲りもなくダブルインバースを仕込んだのは、その上昇相場の入り口だったのです。

そして最後に暗黒面(ダークサイド)へ


見事、上昇相場の入り口で見事担がれたワタクシでしたが、その負けず嫌い性分のため「判断の先送り」という空売りポジションにおいて最もやってはならない愚行を犯します。

💭 当時の希望的観測
「またトランプが手のひら返しをすれば相場が急落することもあるだろう。その時に売れば損失がなくなるかもしれない……」

それから日経平均はグングン上がりました。気になる銘柄を調べると、毎日、毎日、株価が上がっていくではありませんか…。
ワタクシはまんまと買い場を逃したことに気が付きました。そうこうしているうちに、保有株の含み損も徐々に消えていったのですが、なにか素直に喜べません。
いうまでもなく「ダブルインバースの呪い」です。
なにしろたくさんの株が上昇していく一方で、日に日に値を下げていく商品を持っている気持ち悪さたるやありません。

ダークサイドに堕ちた羊社長。
※水晶のチャートは羊社長から見たら上昇相場です(笑)

「日経よ……下がれ!下がれ!下がれ!」
「あ……でも……自分の持ち株は上がれ!」
「あ……でも日経は暴落しろ!あ……なになに?なんでそんなに上がるのよ!」

まるで、ヒーロー映画の悪役キャラを、負けると分かっていながら応援するような矛盾に満ちた心境でした。
市場が盛り上がっても、ちっとも楽しくありません。
なにか世界で自分だけ取り残されたような孤独のなかで、ワタクシは呪いをかけ続けました。
そう、まんまと暗黒面(ダークサイド)に落ちたのでございます。

💡暗黒面とは?
怒りや憎しみなどの負の感情から生み出される悪のフォースの力を指す言葉。投資家がこれに取り憑かれると「下がれ!」と呪詛を唱え続けたり、持ち株の悪口を掲示板に書き込んだりするようになる。

結局、ダブルインバースを損切したのは10月の下旬になった頃でした。
損失額は約2万5千円…。最初に失った2万円を取り戻すはずが、同額以上の損失で失敗の上塗りをしてしまう最悪の結果です。

10月にもしれっと別のダブルインバースを買って見事撃沈しています…。

それは初心者のワタクシにとって、額面以上に高い授業料でした。
なにしろ、その年の秋の相場は好調そのもので、特にそれまで売り叩かれていた景気敏感セクターの逆転劇が目覚ましい様相を呈していたからです。

そのとても美味しい局面を、ワタクシは日経レバとダブルインバースにうつつを抜かしているせいで、すべて取り逃がしていたのでした…。

なんという失態でしょう…。
ただ、純粋に安値を拾っていたら…応援したい会社を見つけて果敢に買いを繰り出していたら…。
後悔先に立たずとはこのことか!
神に誓って、もう二度と売りポジションなんて持たない!

ワタクシは暗黒面から目覚め、正気に戻りました。
そして、自戒のルールに新たな条文が加わりました。

羊の掟 : 空売り厳禁!どんな時も愚直に買いのみでエントリーせよ!

ダブルインバースの高い授業料を払って、ワタクシが悟ったことは「信念」の大切さです。

株式投資において、信念なしに売買を行うことは危険です。
株価が下がっても、その会社の価値を信じる理由があるなら、目先の値動きに振り回されにくくなります。また、たとえ大きな含み損を抱えても、究極、自分を許すことができるのでございます。
そういう投資スタイルなら、たとえ大きく儲けることができなくても「下がれ〜下がれ〜」と相場を呪うよりは100万倍マシではないでしょうか?

もちろん、売りポジションが悪だとはいいません。
しかし、呪いを込めるようでは投資家として本末転倒です。
一方で、買いの姿勢には、大なり小なり企業を「信じる」という純粋な気持ちがあります。たとえ、保有株が紙くずのように無価値になっても、その会社を応援していたという気持ちに重みはあったはずですから…。
成功(高く売り抜けること)だけが投資の価値ではないはず!
それなのに、ワタクシは呪いました。
人の失敗や挫折を願ってしまったのでございます。たった2万円の含み損をどうにかしたいために…。

そして、決意したのです。
どんな時も企業の価値を信じる投資家でありたい!
いっそ「損切ゼロ」のルールを作り、自分に誇りが持てる売買だけに徹しようと!

まとめ : 第3話の振り返り(自戒をこめて)

  • 暴落時の「売りポジション」など小賢しい戦術はとても危険

  • 怒りのトレードは連敗への道

  • 相場に呪いをかけると「暗黒面(ダークサイド)」に堕ちる

  • 個人投資家の機動力はたかが知れている。愚直に買いで勝負すべし

  • 買いは「価値を信じる」という信念が大切

✏️(予告)次回以降のエピソード…

ダブルインバースの高い授業料を糧に、その後、ワタクシは心機一転「買いポジション」に徹しようと心に誓います。
その決意こそが、今日まで貫く「損切ゼロ」の投資スタイルの始まりでした。しかし、その道のりには鳩尾のよじれるような「未曽有の試練(コロナ禍の暴落)」が待っていたのでございます。
乞うご期待を!

📘第1話はこちらから


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