見出し画像

ビギナーズラックの宴と市場の洗礼(後編)~羊社長の投資日記 〈第2話〉

こちらは「クスッと笑えてためになる」をコンセプトにした「羊社長の過去の歩みを記録した投資日記」です。
とりわけ投資初心者のご参考になれば幸いです!


導入

上がったら下がり、下がったら上がる。もっぱら株価というものは、そのような力学で動きます。日足、週足、月足でも、大小必ずうねりはあるもの。ポジションを置く時は、そのうねりの上昇カーブの手前で置きたいものですが、初心者ほど〝良い〟と思ったらすぐに飛びつき買いをしようとする衝動(=魔物の誘い)に取り憑かれるものでございます。

2019年に相場歴数カ月で〝あの病〟に感染

前編(2019年当時のこと)でお話したように、トヨタで初めての儲けを出し、気を良くしたワタクシは、意気揚々と、株価指標が安いと思われる低位株をあれこれと拾っていきました。
当時の売買記録を振り返ると、数日ごとに何かしらの買いを入れて、同時におかしなタイミングでふっと手放したり、あるいは同じ銘柄を買い直したり、小忙しい売買を繰り返しておりました。

いったい何がしたいのかわかりません⋯💦

ところが、どういうわけか大きな怪我をせず、それとなく数千円単位の利益が出るので、薄給に倦んでいるワタクシとしては、意義のあることに思えたのでございます。

振り返ってみると、目の付け所はそれほど非常識なものではなかったからでしょう。
安物好きのワタクシは、持ち前のドケチ精神で、低PBRや低PERなど、もともと不人気株を選んでおりました。そういう銘柄は、買った途端上昇することはめったにありませんが、下落するとしてもたかが知れているのです。

なるほど、もともと株価が安いものは、その価値がたとえゼロになっても、最大損失額は小さくて済む。初心者のワタクシが自ずと行っていた方法は、リスクを抑えるには適切なやり方だったというわけです。
ただ、褒められたものではないのは、小刻みな売買です。安いと思って買ったのに、同じく安い値段で売ってたかだか数千円の利幅を狙う。
思えば、トヨタやトレファクの売買はまさにそれでした。
「出口戦略なきポジション形成」⋯初心者がもっとも陥りやすい悪手でございます。

はい、ワタクシはもうその頃から「感染」させられていたのでございます。

「強迫性ポジション形成症候群(通称・ポジポジ病)」

それは市場関係者のなかにパンデミックのごとく蔓延する病に他なりません。病は人から人へ、非接触に感染します。橋渡し役は「欲望」「競争心」「焦燥感」。誰かに先んじて安値を拾いたい⋯他人より少しでも多くの利益を狙いたい⋯なにかをしないと置いていかれる気がする⋯。
そういう強迫観念が心の目を少しずつ曇らせ、視野をどんどんと狭くするのでございます。

気がつけば、ワタクシは自分の力量を遥かに超える多くの銘柄を保有していたのです。
そして、その時が訪れます。

木を見て森を見ず〜飛びつき買いのあとには決まって下げが来る

トランプのツイッター砲で初めて本格的な含み損の世界に⋯。
その規模は、前編でお話したとおり、400〜500万円ほどの運用で含み損が50〜60万円。
大したことないといえばそうなのですが、当時は証券口座を毎日開いて価格変動を気にしておりましたので、日々自分の資産が減っていくことや、良いと思った銘柄のチャートが穴に落ちるように滑落する様は、ジェットコースターの下り坂さながら背筋がゾッとする感覚でした。

そこで、はじめて、ワタクシは自分のリスク許容度の低さを痛感したのでございます(思えば、昔からジェットコースターは大の苦手⋯なんならバイキングすら怖いのに⋯なぜそのことに気がつかなかったのでしょう)。

もとよりポジションが増えるにしたがい、心配材料も同時に増えるもの。
やれ今日は何%下落した、今日はいくら反発した、そういう情報をワタクシはエクセル表に書き込みました。初心者ですので、なにかヒントになるような情報をキャッチしたかったのだろうと思います。
また、日経平均やNYダウの終値、為替、各種の株価指標、その日あった相場の出来事などを記録して、株価の方向性などを気に留めるようにもなっていました。
しかし、バックミラーで相場を記録してもさして意味がないことはお察しの通り。

ただ、ひとつだけ分かったことがあります。

⚡️自分の銘柄⋯指数よりもずっと下がってない?

相場あるあるの最たるものですね(もはやRGさんに歌っていただきたいほど)。
今になってみれば、その答えは簡単でした。
その当時の保有銘柄の一例を見れば一目瞭然。

JXTG(現ENEOS)⋯富士石油⋯国際石油開発帝石(現INPEX)⋯飯野海運⋯丸紅⋯住友化学⋯東レ⋯レンゴー⋯パナソニック⋯カシオ⋯エディオン⋯オリンパス⋯など

はい、8割方、景気敏感銘柄(マクロ環境の影響で、業績の変動が大きくなる銘柄)でございます。上記のなかで、ディフェンシブ銘柄(マクロ環境に影響されにくい銘柄)は小売のエディオンと医療関連のオリンパスだけ。
しかも、当時、業績や成長性に不安があるものを多く拾っておりますし、詳しく見ると、景気敏感セクターのなかでも資源関連に比重が偏りすぎていることも分かります。
なにしろJXTG〜住友化学(あるいは東レ)まで、すべて資源価格に商品価値が左右されそうな企業ですから。

資源価格と景気は基本的に連動する(地政学リスクなど特殊要因を除いて)というのが教科書的な定石です(為替やエネルギー需要の変化など複雑な要因は考えないことにして)。
そこに、トランプ砲で「追加関税による関税報復合戦と景気不安」が出てくれば、ワタクシのポートフォリオにとって環境は最悪。

もっとも、事前にその不安を十分に織り込んでいれば別(悪材料を想定して先に株価が下落していれば)なのですが、前編でもふれたとおり、トランプ定食は日替わりメニュー。周囲を安心させておいてから手のひら返しが定石でございます。その時も、7月までは米中の関係改善の淡い期待が残っていたと思われます。
なるほど、景気敏感株が半端な価格で持ち直している時、あるいは下げ止まっている時に、たまたまワタクシが買いを入れていたというわけです。
そしてトランプ氏のツイッターのボタンで底が抜けたという具合でしょうか。

下げの局面で発病する〝もうひとつの病〟とは?

証券口座の数字が真っ赤に染まるのを見て、ワタクシはシンプルに失敗した、と思いました。想定外に下げがキツかったからでございます。想定外⋯これほど相場でよく起こることはないのですが、初心者のワタクシは自分のイメージを最優先に考えていたのでした。

さて、その時なにを見ていたのか⋯それはなんとなくですが「少し引いた目で見た株価推移」でした。
ん?なんと、今とそれほど変わらない視点です。
正直に申しまして、実は当時と現在で概ね目の付け所は変わっていないのでございます。
例えばその時に一番資金を投じていたJXTG(現ENEOS)のチャートを見てください。

2017年末〜2019年半ばまでのENEOS(JXTG)のチャート
出典:Investing.com

2018年秋をピークに猛烈な勢いで下落トレンド入りしています。
当時、ワタクシは思いました。
石油元売りの大手がとんでもない安値⋯これはおかしい!(トヨタと同じ感覚ですね)
ただ、そこで調べると、先述のような原油価格(資源価格)との関係性が見えてきました。当時、WTI原油価格は下のチャートのとおり。

2017年末〜2019年半ばまでのWTI原油価格の推移

2018年の秋の1バレル70ドル台をピークに50ドル台まで15〜20%近く下落しています。
そこで、初心者なりに想像したのでした。

今は色々なリスクがあって景気の悪化局面ということか⋯なら近いうちに戻るはず!

根拠は薄弱でしたが、景気と不景気を波のように繰り返すのが経済の掟。だとすれば、そのうち景気はどこかで活発になるだろう。そして、原油価格も上がり、ついでに資源関連銘柄の株価も上昇するはずだ、とそんな推論を立てました

ちなみに、当時、スタグフレーション(不景気の物価高)という概念はあまり表に出てこなかったため、資源価格を考えるうえで、エネルギー構造の変化、すなわち原油からグリーンエネルギーへのシフトだけが懸念点でした。
ワタクシは、購入する前にその点だけは考えました。少し進歩して、思考を巡らすようにはなっていたのでございます。
そして「買い」だと思いました。それはある種の正義感でした(そこでも正義の衝動買いをやったのです)。

どんな技術進歩があっても人類は石油は使うに決まっている。石油は文明の燃料そのもの、経済基盤そのものではないか。環境負荷をなくすための努力はともかく、散々石油を使って良い暮らしを享受しておきながら、脱炭素だの脱プラだの、少々傲慢すぎやしないか?そういう態度は、オイルまみれになりながら、日夜文明社会の灯火を焚いている石油掘削メーカの労働者に対して失礼だ!

by羊社長

ワタクシは正義感を発動させ、買いをいれました。
彼らを応援するということは、日本の動力源を支えるということでもある!
ENEOSだけでなく、日本最大のエネルギー開発企業・INPEXにも買いを入れたのはそのためです。

そして、繰り返しになりますが、直後のトランプ砲でございます。
日経平均の日足チャートは大崩れし、2万円近辺をいったりきたり、ハラハラさせられる場面が続きました。これ以上の暴落はやばい!そう思わせる瀬戸際の雰囲気です。

ワタクシは悔しくてたまりませんでした。おかしいぐらいに安かった株が、さらにおかしい安値になったのですから。社会に欠かせない大切な企業が、どうしてこんな不当な扱いを受けるのか!納得がいかない!不条理だ!

さて、その時どうしたのか?ーー答えは、なんとフリーズです!

学名:瞬間氷結神経症

ここで相場あるあるが再び出ました。
それは、暴落する前は強気だったのに、いざ暴落すると思考回路がフリーズしてしまう「瞬間氷結神経症(通称:フリーズ病)」でございます。購入ボタンにも売却ボタンにも指が届かなくなるあの症状。罹ってみた者にしか分からないもどかしさ⋯。

どうしてフリーズしたのか、相場経験者ならお分かりかと思います。
「下落を想像していなかった」もしくは「下落した場合どうするかを準備していなかった」⋯それに尽きると思われます。

相場のどんな局面でも通用する心構えなのに、ワタクシは十分下がっているのだから、あとは上がるはず、と根拠もなく考えていたのでございます。また、いざ相場が下落した時に、「何を買いたいか」の候補も立てていなかったという有り様でした。
だから何もできなかった。
目を閉じると、今でもその悔しさの感覚が蘇ってくるようです。

トレンドの終わりは早かれ遅かれいつか来る〜明けない夜はない

2019年8月は、人生で一番長い1ヶ月でした。大げさかもしれませんが、終わりの見えない暗雲が毎日を息苦しく憂鬱なものに変えました。
ワタクシは、たくさん銘柄を買いすぎていることを自覚しました。
しかし、もう後の祭り、含み損を眺めるだけでございます。

ただ、ワタクシは投げ売りだけはしませんでした。なぜならフリーズしているので、端からできないのでございます。そして、プライドだけは異様に高く、間違いを認めることが死んでも嫌な性格だったので、いつか元に戻るだろう、とそう納得することにいたしました。
いや、いつか戻るのは本当のところ分かっていたのです。なぜって、石油は文明の燃料そのものですから。
改めて、その後の展開を見てみましょう。

2017年末〜2026年春までのWTI原油価格の推移

ワタクシが購入した19年の半ば、1バレル50ドル台だった原油価格はいったん60ドル台まで回復します。大きな流れとして、下げ止まったと思わせる動きでした。
ただ、その後、ナイアガラの滝のごとく凄まじい下げが来ています。
周知のとおり、コロナの襲来でございます(あの時の凄まじさはまた違う投稿で⋯)。

ところが見てください。その翌年から素晴らしい上昇トレンドを描いているではありませんか!もちろん、ウクライナ戦争などの地政学リスクが顕在化したことも一因ですが、その他に大事な要因として、3つの軸による世界構造の変化を見逃すわけにはいけません。

  1. コロナをきっかけにしたグローバルサプライチェーンの寸断

  2. 米中対立の固定化によるブロック経済圏時代への突入

  3. 欧米発グリーンインフレの恒常的リスク

要するに世界が分断されることで、モノが容易に入る時代ではなくなったということです。さらに環境規制や自然エネルギーシフトをやりすぎて、エネルギー供給が細った(グリーンインフレ)わけですから、相対的にエネルギー企業の価値が上昇したわけですね。そこに目をつけた投資の神様バフェットが日本の商社を買ったのは有名な話でございます。

次に、改めて、先ほどのENEOSの長期チャートをご覧ください。原油価格と足並みを揃え、いや、それ以上に上昇しています。今更いうまでもないですが、資源関連は皆同じような軌道で上昇しました。あの時の銘柄のすべてとはいいませんが、持っていて損はない株ばかりだったのです。

2016年〜2026年までのENEOS(JXTG)のチャート
出典:Investing.com

では、ワタクシはどうしたのか?

最後のオチでございます。2019年の秋頃、スルスルと値を戻した日経平均に連れ高し、ワタクシの含み損も次第に消えていきました。そこで、苦しめられた銘柄を中心にポンポンと売っていったのです。

同値で撤退したもの、数千円の利益が出たもの、誤差はあるものの、満足のいく投資ではありませんでした。
もしフリーズせずに、素早く損切りして別の優良銘柄を安値で拾っていれば⋯。もし底値で大胆にナンピンしてそのまま保有していたら?

投資の正解はひとつではありません。
ただ、想定外の下げに備えて、想定通りの行動を取る、そういうリスク管理が希薄だったことを痛感させられた経験でございました。

後編(第2話)の振り返り(自戒をこめて)

  • 出口戦略なきポジション形成は「ポジポジ病」の始まり

  • ポートフォリオの偏りを無自覚に行うな!

  • それはただの衝動買いではないか?一歩立ち止まる冷静さが必要

  • 想定外を想定する、それもリスク管理のうち

  • 長い目で見れば、失敗も成功への扉だった可能性がある

おまけ〜第3話に向けて

実のところ、暴落の局面で、ワタクシは本当の意味で立ちすくむだけではありませんでした。自分なりにもがき、対策をあれこれと考えました。
そして買いを入れた数少ない銘柄がございます。
それが結果的に泣きっ面に蜂となるのですが、それは次回の投稿でお話しいたします。

📘前編(第1話)はこちらから⤵️

PS
👉 [羊社長の呟き]
こちらのマガジンでは、日々の売買記録や市場動向、個別銘柄の独自分析を、羊なりの視点でふわっとお伝えしてまいります。
どうぞ鼻で笑ってください。



いいなと思ったら応援しよう!