だから私はエルフじゃないの! -3- #胡乱エルフ
意気軒昂な反面、テッカの頭は戦闘に入った途端にキビヤックエルフのキビヤック蔵よりも冷めていた。良い金属は冷ましこそが肝要、それはタンクエルフにとって不文の心得だ。
(あの高慢ちきなピュアエルフの土手っ腹、ど真ん中にアタイの取って置きを打ち込んで木っ端微塵にする。そのためにはきっちり狙いとタイミングをあわせなきゃいけねぇ)
愛車のナナマルに装填された必殺の黒虹鋼弾は、高い。希少金属を一流の職人が磨きあげたのだから、値が張るのは当然だ。だが、値が張るとはつまるところ実物が少ないことを指す。
(カネで済むならありったけ積むんだがね!)
高い墓標だ。だが惜しみはしない。エルフの部族にとって自分たちを象徴する存在を侮られるのはすなわち自分たちすべてを愚弄する行いである。死を持って悔いさせるほかにない。
戦車の視界は、狭い。駆動は精霊に割り振ることでテッカは愛車を自分一人で運用していたが、敵を視ることだけは最終的に自分でやらなければならない。湾曲望遠鏡を通して周囲の光景を採取するも、見渡す限りのまばらな林が続くばかりだ。個々の木の背は高く葉は茂っており、敵の姿は一向に見当たらない。
「煽るだけ煽って逃げやがったか……?いや」
エルフは気位が高い、その点は千変万化を遂げた数多のエルフ達でもほぼほぼ共通している基本要素である。テッカは相手が逃げていないと判断する。
(こっちは相手が見えねぇ、相手はこっちを撃ち抜けねぇ。ヤツが勝つにはナナマルのガタイをなんとかしなきゃダメって訳で)
矢の投射は相変わらず前方から続いている、が、テッカはここで戦車を前進からの急ブレーキ!さらには高速後退に移る!つい先程まで戦車があったポイントに着地するシャンティカ!
「そうするしかねぇよなあ!アタイのタマ取るならよぉ!」
勝った、そう確信しターゲットに砲身を向けるが、照準が合わない。明後日の方向へと逸らされ、シャンティカを捉えることが出来ない!
「クッソ一体何だ!」
かすかな望遠鏡から周囲を探ったテッカは絶句。自分の愛車に無数に張り付いているのは……ゾンビである!それもどす黒い緑肌のゴブリンゾンビだ!
「チイィィイィイッ!」
振り払わんと急旋回するも、ゴブリンゾンビは離れない!死者特有の自損をいとわない怪力で戦車の僅かな突起に食らいついているのだ!さらなる衝撃がテッカを襲った!ゴブリンゾンビによる丸太特攻!戦車の履帯が悲鳴をあげる!戦車の軌道が停まった!
「ファックファックファーック!あのスカム死体いじり野郎!戻ってきやがったか!」
怒りにはらわたは一気に溶岩めいて煮えたぎるが、それでもテッカは冷静さを損なわない。この状況で冷静さを欠くことはすなわち死を意味する。鉄火場を乗り越えてきたタフさがテッカの理性を支えた。
「ピュアエルフは後!先に鬱陶しいネクロエルフだ!気張りなアンタ達!」
テッカの叱咤を受け、ナナマルを駆動させる炎の精霊達が駆動管の内で熱く瞬いた!ゴブリンゾンビの妨害をねじ切り、砲塔が獲物を探す!薄汚れた外套に隠れた標的を捉える!
「逃げなかったことだけは褒めてやるぜネクラ野郎おおおおおおっ!」
【だから私はエルフじゃないの! -3-:終わり|-4-へと続く|第一話リンク|マガジンリンク】
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