だから私はエルフじゃないの! -4- #胡乱エルフ
「なっ……!」
既にテッカがトリガーに指をかけていた砲撃グリップが途中から切断されていた。まるで黒曜石の断面めいた滑らかな切断面が、テッカの眼の前に踊る。
「ナンジャコリャアアアアアア!?」
ありえない、砲撃を行う為のトリガー周りは今日の出発前の段階でも念入りに整備を行っていた。砲撃が出来ない戦車など半ば棺桶も同然だからである。
テッカが眼を剥くと、ネクロエルフはすごすごと木陰の死角へと身を隠す所だった。まだ間に合う、テッカはグリップがつながっていた伝導管を握りしめ、シャーマニズムによる精霊操作で代替!
「逃がすものかよ!」
ぎこちない挙動で獲物を追う砲塔!一方で戦車の装甲に張り付いたゴブリンゾンビ達は己の身が砕けるのもいとわずうち続ける!正気が吹き飛ぶおぞましい光景だが、それでもテッカは冷静さを保ったままに照準のうちに捕らえたネクロエルフの影へと射撃命令を下そうとした、その時であった。
「うん……!?」
自らの喉元に矢じりが寸止めされていた。その矢はナナマルの強固極まりない正面装甲を撃ち抜き、済んでの所で止まっている。だがこれは決して運が良かったわけではない。装甲を貫かれているということはすなわち、二射目があればこの寸止め矢が前へと押しすすめられ、テッカの首を貫くことも可能だということだ。
「降参なさい!でなければこちらも容赦しないわ!」
テッカは勘案する、自分はどこで間違った?
「……最初の射撃が屁の突っ張りだったのは、攻撃が通用しないって思わせる為の囮かよ。カワイイ面してえげつないぜ、あのアマ」
戦車の脚は止まった。砲撃はまだ出来るが、動かせばピュアエルフの射撃は正確に自分の首を貫くだろう。走攻守、全てにおいて今の自分は無力化されている。この状況下でもって意地を張るほどテッカは愚かではなかった。
「……降参、降参だ!負けを認めるから命ばかりは助けてくれ!」
―――――
変な気持ちだ、とヨミジは素直な感想をいだいた。さっきまで自分を殺そうとしていた相手と並んで火を囲み座り込む事になるとは。命の恩人の希望である以上無下にも出来なかったのだが。
そのおっかない仇敵はというと、自分の愛車を射抜いた矢じりをしげしげと観察している。黒曜石めいた漆黒の矢じりだが、もちろん黒曜石などで戦車の装甲が貫けるわけがない。
「これが竜の鱗だって?こんなの見たこともねぇよ」
「だから言ったでしょ、私はこの世界の存在じゃないの。エルフなんて、初めて聞いたし」
「その見た目でかよ……いや、いい、信じる。信じるぜシャンティカ。アンタの世界の竜とこの『エルフヘイム』の竜は、同じ竜って名前の生き物だろうが本質的には全くの別物だ。だったらアンタもよそから来たのは本当だろうよ」
「よろしい。もっと詳しい話も聞かせてほしいんだけど」
ヨミジが黙りこくっているのを流し目で見れば、テッカはクソデカため息と共に言葉を続けた。
「この世界の名前は『エルフヘイム』、ドコモかしこもエルフって名乗る連中だらけのゴキゲンな世界さ」
【だから私はエルフじゃないの! -4-:終わり|-5-へと続く|第一話リンク|マガジンリンク】
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