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【ファンタジー小説】第六話 鉄の病と危険な果実『今日も魔女の住む森で 機械仕掛けのワンダーランド編』

季節は夏から秋へ移ろうとしていました。

季節の変わり目らしく、不安定な天候が続きました。

暑い日があったり、寒い日があったり。

大雨が降ったり、乾燥した日があったり。

そんなある日のこと。

お昼ご飯のあと、ヒグマとシロクマ、それに先生は増幅装置にジェルカプセルを投入するために、大杉のてっぺんへ続く螺旋階段を登っていました。

半分ほど登ったあたりでシロクマが、「なんかパイプから血が出てる」と言って冷却水を汲み上げている鉄パイプを怯えながら指さしました。

確かに鉄パイプのつなぎ目から、真っ赤なドロッとしたものがにじみ出てきていました。

先生はそれを指先ですくうと、顕微鏡の焦点を合わせるように、静かなモーター音をたてて青い瞳を大きくしたり、小さくしたりしました。

「これは鉄バクテリアがヘドロ状になっている物のようです。増殖してパイプを詰まらせる可能性があるので早急に対処する必要があります」

シロクマが心配そうに先生に訊きました。

「パイプが詰まるとどうなっちゃうの?」

「冷却できなくなった増幅装置は緊急停止し、最悪の場合、爆発します」

ヒグマとシロクマは口をあんぐりと開けて見つめ合うと、「ピンチじゃん!!」と叫びました。

二匹のクマは先生を残して転がるように螺旋階段を駆け下りると、みんなにこのことを知らせるために走り出しました。

その直後。

「ゴォォ、ボンボン」

低く重い、巨大な獣の唸り声のような音が細かい地響きとともに鳴り響きました。

ヒグマとシロクマが恐る恐る振り返り、大杉を仰ぎ見ました。

すると、激しい振動音とともに大杉全体が揺れ始め、真っ赤なヘドロが増幅装置からも鉄パイプのあちこちからも勢いよく噴き出してきました。

それはまるで、大杉が真っ赤な血の涙を流しているようでした。

「わぁぁ!大変だ!!」

ヒグマが恐怖の悲鳴を上げました。

「見て!煙突から紫の霧が出てないよ!!」

シロクマは後ずさりしながら増幅装置の煙突を指さしました。

「ヒグマさん、シロクマさん、みなさんを呼んできてください。私は上に登って原因を突き止めます」

ヒグマとシロクマは先生の言葉に頷くと、がむしゃらに走って森の中へ消えていきました。

残された先生は、再び螺旋階段を登り増幅装置の中へ入りました。

入り口や通路には真っ赤なヘドロが流れ出てしまっていましたが、制御室は無事でした。

先生は自身のシステムと増幅装置のコンピューターを、内蔵されているデータ転送用ケーブルで繋ぐと、まず冷却水の汲み上げを停止し、それから必要なデータを集め、原因の分析を始めました。

しばらくすると、ウサギが制御室に血相を変えて飛び込んできました。

「先生、何かわかった!?どうして急にこんなことになったの!?」

ウサギに続いて、魔女とヒグマとシロクマとフクロウ、最後に日記ちゃんが息を切らして制御室に入ってきました。

先生はみんなに聞こえるように言いました。

「まず、この真っ赤なヘドロは鉄バクテリアが繁殖したものです。そして、なぜ鉄バクテリアがこんなにも急激に異常繁殖したのかというと、数日前に降った大雨に原因があります。冷たい地下水に大量に雨水が流入したため、汲み上げる冷却水の温度が上昇し、鉄バクテリアが繁殖するのに最適な温度になったためだと考えられます」

フクロウが目を細めて記憶を掘り起こしました。

「確か、鉄バクテリアの弱点は『酸』だったよね……でも、パイプ全部を綺麗にするには大量の『酸』が必要になるけど……」

日記ちゃんが恥ずかしそうに小さな声で言いました。

「なんか、知ってるかも……昔々の魔女が『強力な酸を含んだリンゴ』について書いていたような……」

魔女が日記ちゃんを捕まえて、ペラペラと勝手にページをめくりました。

「どこに書いてあるの!?何ページ目の何行目!?」

「ちょっと待ってね……あった!」

日記ちゃんはみんなに見えるようにページを開いて見せました。

あの憎たらしいお姫様め!

もう我慢できない!

この、『森の図書館の裏手にある岩山の上に生えている、見るからに怪しいリンゴの木に生る、強力な酸を含んだリンゴ』を食べさせて苦しませてやる!

シロクマは丸い耳をヒクヒクさせました。

「なんか聞いたことあるお話だね」

ヒグマはフカフカの尻尾をピクピクさせました。

「これぞ、魔女っていう感じで好き」

魔女はヒグマの頭をガシッと鷲掴みにすると、言いました。

「私が魔女らしくないみたいじゃない」

騒がしくなってきたところで先生が「トントン」と机を叩きました。

「あまり時間がありません。外を見てください。紫の霧が消えそうです」

みんなは一斉に外へ駆け出しました。

そこには、紫の霧の境界がどんどん迫ってくる恐ろしい光景が広がっていました。

魔女が信じられないという驚きの表情を浮かべて叫びました。

「増幅された紫の霧のせいでわからなかったんだ!天然の紫の霧はもうほとんど残っていなかったんだ!!」

ウサギが早口で作戦を立てました。

「僕と先生で冷却水を逆流できるようにしておく、フクロウはパイプにゆるんでいる箇所がないかチェックして、魔女とヒグマとシロクマは酸のリンゴをたくさん採って来て!」

魔女と二匹のクマが螺旋階段を降りようと一歩踏み出した時、日記ちゃんが「わたしも仕事したい!」と、魔女の頭に飛び乗りました。

(※記事内のイラストはAIによって生成されたものを使用しています)

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