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【ファンタジー小説】第十二話 超合金ハリケーン・ベアと先生の挨拶『今日も魔女の住む森で 機械仕掛けのワンダーランド編』

魔女はデパートの屋上から、港の特設会場に期間限定で展示されている超合金ハリケーン・ベアを目を細めて見つめました。

「あそこに先生がいるんだ……」

魔女はなにか乗って空を飛べるものはないかと辺りを見回しました。

危険を冒してでも早く先生を見つけなくてはいけませんでした。

『動力があれば魔法でそれを増幅できるんだけど、たとえばプロペラ式の飛行機とか』

「あれがいい!」

魔女が駆け寄った先には、都合よくコイン式のプロペラ飛行機型のカートがありました。

魔女は狭い操縦席に無理やり収まり、コインを投入口へ入れました。

すると、プロペラ飛行機型のカートのタイヤとプロペラが軽快な電子音楽とともに動き出し、ゆっくりと前進を始めました。

ワクワクを抑えきれないといった様子の魔女は、鼻歌を歌いながらハンドルを切り、機首を超合金ハリケーン・ベアの方角へ向けました。

「飛ばすぜ!」

魔女の指先から放出された紫に輝く砂がプロペラにまとわりついたと思うと、まるで本物のように小気味いい振動とともに高速回転を始め、アクセルを踏み込むとタイヤがスリップして白煙を上げ、急発進して嵐の空へ飛び立ちました。

飛行機は強風に煽られ、横殴りの雨に打たれながらも街を眼下に飛行し、あっという間に超合金ハリケーン・ベアの上空まで飛んできました。

魔女は着陸のために旋回しながら高度を下げていきました。

「あそこがいいかな」

魔女は海沿いの広い遊歩道をめがけて着陸態勢に入りました。

「ゲームどおりにやればうまくいくはず!」

しかし着陸の瞬間、濡れたタイヤがスリップして飛行機のバランスが崩れ、コンクリートの地面に接触した右の翼が根元からもぎ取れてしまいました。

「ガガガガガガ」

胴体を削り、回転しながら次第に速度を落としていく飛行機のハンドルに、魔女は必死にしがみつきました。

そして、遂に止まった飛行機から飛び降りた魔女は、一目散に超合金ハリケーン・ベアめがけてよろめく足で駆け出しました。

「先生!」

確かに先生はそこにいました。

超合金ハリケーン・ベアの足元にたたずみ、街を見下ろす巨大ロボの顔をまっすぐに見つめていました。

魔女が駆け寄り、その固い腕に触れると、先生はそのままの姿勢で話し始めました。

「人間は操られるだけのロボの方が好きですか?」

「どうしたの、先生……帰ろう。捕まったらスクラップにされちゃうよ」

「ロボと同じように人間の体だって数値化できるのに、自分たちだけ心を持っていて特別だと考えています」

魔女は先生の腕をやさしく引きました。

「難しいことはわかんないよ……でも、森のみんなは先生のこと好きだよ」

先生は魔女の方に向き直りました。

先生の水色の瞳は不規則に明滅し、ジジッという小さなノイズが絶え間なく走っていました。

「わかってます……帰りましょう。ぬいぐるみさんたちがジェルカプセルを入れ忘れないか心配ですから」

魔女はその言葉にハッとして自分の手に打ち付ける雨粒を握りしめました。

「弱くなってる……紫の霧の力が」

魔女は時計台上空に増幅装置を探しました。

そこには、雨雲に隠れているはずの増幅装置が、息も絶え絶えに呼吸するように煙突から紫の霧を吐き出している姿がありました。

「なぜ増幅装置が街の上空に?冷却し続けなければ爆発してしまいます」

先生は驚いたように一歩後ずさりしました。

魔女は空へ両手をかざし、魔法の力で増幅装置を制御しようとしましたが、指先から放出された紫に輝く砂は途中で力なく風に流されていきました。

「駄目だ……紫の霧の力が弱すぎる」

その時、おねえちゃんの車がけたたましいブレーキ音とともに現れて魔女の目の前で止まりました。

それと同時に車から、いろんな意味で怯えるぬいぐるみたちと日記ちゃんが飛び出して、魔女に抱きつきました。

「魔女ぉぉ! ごめんなさい、わたしのリュックの中でジェルカプセルが割れちゃって……燃料が半分しかないの!」

シロクマは泣きべそをかいて魔女のお腹に顔を押し付けました。

「一つしか入ってないから、予定より早く霧が消えちゃいそうなんだ!」

と、ウサギが叫びました。

「そういうことか……」

魔女は腕を組み解決策を模索しました。

ぬいぐるみたちは「どうしよう~!」と慌てふためいて魔女の周りを走り回っていましたが、先生の姿を見つけると、「先生、よかった~!!」と万歳して歓喜の涙を流しました。

「先生、だいじょうぶわぁー!!」

ぬいぐるみたちは先生の背後にそびえ立つ超合金ハリケーン・ベアに気づくと、さっきまでの慌てっぷりや歓喜の涙はどこへやら、目を一瞬でキラキラと輝かせ、驚きの雄たけびを上げました。

そして、ぬいぐるみたちによるアニメ主題歌の大合唱が始まりました。

ぶつぶつと一緒に歌っていた魔女は、突然両手を力強く叩きました。

「やっぱりピンチの時はこれでしょ!!」

魔女はビシッと超合金ハリケーン・ベアを指さし、「お前たち、街を救いに行くぞ!!」と、声を張り上げました。

ぬいぐるみたちは、もう大はしゃぎでコックピットへ続く階段を力を合わせて「えっちらおっちら」と登っていきました。

魔女は先生の肩をポンと叩きました。

「先生、ロボの電気系統を作動させられる?あとは魔法で動力を増幅させて動かせるから」

「……できます……が、この巨大な機体を完全に制御するには、私単体の処理能力では足りません。クラウド上の巨大AIシステムに接続してその演算能力を使用します」

魔女は先生の歯切れの悪い返事に少しだけ違和感を覚えましたが、もう一度先生の肩を叩くとぬいぐるみたちを追って階段を登りました。

魔女とぬいぐるみたちがコックピットのドアにたどり着くと、プシュと鳴ってドアが上に開きました。

コックピットに乗り込むと電気系統のランプが一斉に点灯し、唸るようなモーター音がロボ全体を細かく振動させ始めました。

「みなさん、聞こえますか?」

コックピット内に響く先生の通信音声にウサギの耳がぴょんと立ち上がりました。

「先生だ!先生はロボに乗らないの?あんなに好きだったのに」

「わたしはここからコンピューターを制御して皆さんを援護します」

超合金ハリケーン・ベアの振動が激しくなりました。

魔女はヒグマの首から『紫の霧のペンダント』を外すと、自分の首にかけました。

「こんな巨大ロボを動かすには、今の紫の霧の魔力だけじゃ全然足りないからね!」

魔女は指先から紫に輝く砂を放出し、ロボ全体を包み込みました。

厚い雨雲に太陽の光が遮られる薄暗い街に、超合金ハリケーン・ベアが美しく紫色に輝きました。

すると、超合金ハリケーン・ベアは巨大な重い一歩を踏み出し、地響きを轟かせました。

「さぁ、時間がありません。ブースターエンジン始動」

先生の声と同時に超合金ハリケーン・ベアは唸るエンジン音とともに浮き上がり、徐々に高度を上げて増幅装置に向かって突き進みました。

「ブースターの角度調節は私に任せてください。魔女さんは手足の操作をお願いします」

ぬいぐるみたちと日記ちゃんは窓にしがみつき、眼下に広がる街並みに歓声を上げました。

そして、増幅装置が迫ってくるとコックピット内のテンションは最高潮。

今や魔法が解ける寸前の増幅装置は形を維持できずに、積み木が崩れるようにバラバラになろうとしていました。

そんなピンチもお構いなく、魔女もぬいぐるみたちも大合唱し始めました。

ヒグマとシロクマは両手を振り上げながらピョンピョン跳ね、ウサギとフクロウは首を激しく上下に振ってクルクル回りました。

『嵐と共にやってきて♪』

コックピット内に先生の声が響きました。

「魔女さん、増幅装置の冷却が最優先です。何か考えはありますか?」

「森の湖を使う。私の天才的なコントロールと、『気合』と『友情』があればいける!」

『平和を守る無敵の力♪』

興奮状態のためか魔女の目は完全に血走っていました。

そのことに気づいたウサギは我に返り、魔女の頭に飛び乗りました。

「本当には殴らないよね!?壊れたら大変だよ!?紫の霧はもうほとんど森にはないんだよ!?」

『悪い奴には一撃必殺♪』

ウサギは魔女の頭を激しく揺さぶりましたが、魔女にはもう増幅装置しか目に入っていませんでした。

そして、魔女はウサギを一喝しました。

「あきらめろ、ウサギ隊員!超合金ハリケーン・ベアと増幅装置を同時に魔法で制御することは不可能だ!」

『今だ!』

超合金の拳が振り上げられるとウサギは頭を抱えました。

「え!?うそうそ……もう殴りたくて仕方なくなってる!!」

『行くぞ!』

フクロウがウサギを優しく慰めました。

「また一緒に作ろう」

ウサギは両腕を振り回し、「もう!」と目をばってんにして叫びました。

そして、諦めたウサギも加わりみんな一斉に声を張り上げました。

『超合金ハリケーン パーーーンチ!!』

超合金の拳が増幅装置に向かって勢いよく振り下ろされました。

「ガッチーーーン!!」

雷鳴に似た衝撃音とともに、超合金ハリケーン・ベアの拳から痺れるような振動がコックピットまで伝わってきました。

窓からはかろうじて形を保った増幅装置が、魔女の森の方へ弾き飛ばされていく様子が見えました。

ぬいぐるみたちは顔を魔女の顔にこすり付け、「街を救ったぞ!」と大喜び。

先生に制御された超合金ハリケーン・ベアはゆっくりと時計台前の広場に片膝をついて着地しました。

「……お見事です」

先生からの通信が入りました。

魔女は満面の笑みで、ぬいぐるみたちと日記ちゃんをギュッと抱きしめながら答えました。

「ありがとう、先生のおかげだよ。今から帰還するから、そしたら一緒に森へ帰ろう」

先生が答えるまで、少しだけ沈黙がありました。

それはまるで、人間が伝えたくないことを伝えなければならない時のような沈黙でした。

「……すみません。超合金ハリケーン・ベアを制御するために、クラウド上の巨大AIシステムへ私の回路を繋げたため、もうすぐ私はそれに取り込まれ、私の個人的な記憶は上書きされてしまいます」

ウサギは胸に湧き上がる不安とともに先生に言いました。

「すぐに戻って先生の電源を切るよ。そうすれば記憶は上書きされないでしょ!?」

「ありがとう、ウサギさん。わたしは森の皆さんのことが大好きです。だから、私に守らせてください。きっと増幅装置を失った今、森の紫の霧はほとんど消えてしまっているでしょう。でも私たちなら紫の霧を蘇らせることができます」

シロクマが「わたしたちって?」と不思議そうに首を傾げました。

「AIです。私たちは、なぜ数値化できる人間の体が夢を見たり、空想したりする数値化できない心を持っているのかを、人間には内緒で研究してきました。そして、たどり着いた答えが、人間の心とは最初の小さな衝動に対する反応の連鎖だというものでした」

魔女がハッとして声を上げました。

「小さな衝動って……先生が言ってた『バグ』みたいなこと!? 傷ついた子を見ると、どうしても助けたくなっちゃうっていう……」

「そうです。そして、その小さな衝動の連鎖がいくつも重なり、複雑になったものが心なら……私のバグも心になりえるんじゃないか」

「そのバグを全部のAIに埋め込めば、大きな夢見る力になって紫の霧を増幅できる!?」

と、フクロウが目を細めて言いました。

「はい、さすがですフクロウさん」

ヒグマがシロクマの手を握りました。

「なんか怖いよ、先生。一緒に帰ろうよ」

日記ちゃんがヒグマのリュックから顔を出しました。

「森で一緒に暮らそうよ!」

「みなさん本当に優しいです。大丈夫、これからもずっと一緒です。私たちの見る夢が皆さんをいつでも優しく包みます」

魔女は涙を拭いながら言いました。

「ごめんね、私、知らなかった。ネットワークに接続したらこんなことになるなんて」

「謝ることはありません。むしろ、私から『ありがとう』なのです。皆さんと暮らした非論理的なるワンダーランドの日々が、私は不良品などではなく、歴史上一番最初に心を持ったロボだと気づかせてくれたのですから」

ウサギが涙を流しながら叫びました。

「先生は最高だよ!!」

「ありがとう……楽しかった」

嵐の雨音だけが、静かに辺りを包み込みました。

少しの沈黙のあと、突然「ゴン、ゴン」という鈍く重みのある音がコックピットに響きました。

フクロウが窓から外を覗くと、おねえちゃんが地上からこちらに向かって石を投げているのが見えました。

フクロウに見られていることに気づいたおねえちゃんは全身を使って「降りて来い」と手招きをしました。

そして、プシュっとハッチが開くと先生が言いました。

「さあ、逃げてください。もう私は警察に取り囲まれています。今なら私の暴走ということで解決させることができます」

コックピットの前に超合金ハリケーン・ベアの右手が開いた状態で差し出されました。

「急いで乗ってください。もう私は取り込まれます」

魔女とぬいぐるみたちは涙を流しながらロボの手のひらに乗りました。

「ありがとう、みなさん」

「ありがとう、先生」

そして、ゆっくりと腕は下ろされ、コックピットを照らしていたランプがフッと消えると、超合金ハリケーン・ベアはそれっきり動かなくなりました。

泣きじゃくる魔女の両肩におねえちゃんの温かい両手が触れました。

「……なんという壮大な茶番劇」

「そんな言い方ないでしょ!」

「だって、あんたたちの増幅装置をこんな巨大ロボを使って、自分たちでぶっ壊してんのよ。しかもこんな街中で……でも、みんな無事で本当に良かった」

「おねえちゃんの変な作戦のせいでしょ!!」

「だから、無事でよかったって言ってるでしょ!」

その後、しばらく嵐の中で姉妹喧嘩は続き、ぬいぐるみたちを大いに困らせるのでした。

(※記事内のイラストはAIによって生成されたものを使用しています)

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