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組織が動かないのは「重荷」があるからだ  アサヒビール復活に学ぶ、チームを上昇させるたった一つの発想



ぼくは施設長になりたてのころ、
ずっと「どうすれば職員が動いてくれるのか」を
考えていた。

研修をやっても変わらない。
朝礼で話しても伝わらない。
個別に声をかけても、翌週にはまた元どおり。

そのたびに
「うちのスタッフは意識が低い」
「やる気がない」と、
心のどこかで職員のせいにしていた。



でも、本当の問題は別のところにあった。


「熱気球」のたとえが、すべてを変えた
最近、ある書籍を読んで、
アサヒビール元社長・樋口廣太郎さんの言葉に
出会った。

「組織というのは熱気球と同じだ。
重荷があるなら、重荷を取ってやれば必ず上昇していく」

これを読んだとき、
ぼくの頭の中でバチッと何かがつながった。

熱気球は、バーナーをいくら燃やしても、
砂袋という重りをぶら下げたままでは
上がらない。

逆に言えば、
砂袋さえ外せば、自然と上昇する力がある。

組織も同じだ。

職員は最初から「やる気がない」わけじゃない。
入社したとき、誰だって「ここで頑張ろう」と思っていた。

それが時間とともに失われていくのは、
組織の中に「重荷」が積み重なっていくからだ。



うちの施設にも、重荷はあった
樋口さんはこう続ける。

「いいものを造ろうと思っても、会社はなかなかそれをさせない。三流の原材料を使わせる。営業は無理なものを売ろうとする。そういう構造がスタッフの不満を生むんだ」

これ、介護の世界でもまったく同じだと思った。
たとえば、
「ケアの質を上げたいのに、人手が足りなくて時間が取れない」
「利用者さんと向き合いたいのに、書類仕事に追われる」
「意見を言っても、どうせ上は聞いてくれないと思っている」
これ、全部「重荷」だ。

現場のスタッフが「やりたい」と思っていることを、組織の構造そのものが邪魔している。

そのうち職員は、諦めを覚える。
「言っても無駄」「どうせ変わらない」が口癖になる。

そしてある日、黙って退職届を出す。
ぼくが施設長になった当初、離職率は60%を超えていた。
あのころは、まさにこの状態だった。

「困ったことを言いなさい」それだけでいい
樋口さんが実践したことはシンプルだった。

「困ったことがあれば言いなさい。
あとはできることとできないことを決めてやればいい」
これだけだ。


難しいビジョンを掲げたわけじゃない。

大きな改革をいきなり断行したわけでもない。

ただ、現場の「困った」を拾い続けた。

そして、古くなったビールを捨てるように、組織の中にある「おかしな慣習」「無駄なルール」「誰も得しない手続き」を一つひとつ外していった。

重荷を取り除いた結果、
組織は自然と上昇し始めた。

アサヒビールは奇跡的な復活を遂げ、
「スーパードライ」という伝説のブランドが
生まれた。


管理職がやるべきことは「熱を加える」ことじゃない
ぼくはずっと勘違いしていた。
リーダーの仕事は、バーナーをガンガン燃やして、職員に「もっと上へ、もっと上へ」と熱を入れ続けることだと思っていた。

でも、それだけじゃ組織は上がらない。

砂袋が残ったままなら、どれだけ熱を入れても現状維持がやっとだ。

本当に大切なのは、重荷を見つけて、外すこと。

そのためにリーダーがすべきことは
・現場の「困った」に耳を傾ける
・「それは無理」と切り捨てず、「できること」と「できないこと」を一緒に考える
・古い慣習を疑い、必要なければ捨てる勇気を持つ

これだけで、チームは変わり始める。


離職率60%が9%になった、本当の理由
うちの施設が変わったのも、まさにこのプロセスだったと思う。
ぼくが最初にやったのは、派手な研修でも、理念の刷新でもなかった。
現場の職員に「何が困ってる?」と聞いて回ることだった。

出てくる出てくる、重荷の数々。
「シフトが急に変わる」
「申し送りが長すぎて残業になる」
「備品がどこにあるかわからない」
一個一個、地味に潰していった。

「こんなことで?」と思うような小さなことばかりだった。
でも、それを続けていくうちに、現場に変化が生まれた。

「この施設長は、ちゃんと聞いてくれる」という空気が生まれた。

そうなると、職員が自分から「改善したい」と言い出すようになった。

組織が、自分たちで上昇し始めた。



今日、一つだけやってみてほしいこと
もしあなたが施設長やリーダーなら、今日一つだけ試してほしい。

スタッフに「最近、何か困ってること、ある?」と聞いてみてください。

答えが返ってきたら、すぐに解決しようとしなくていい。

まず「そうか、教えてくれてありがとう」と言うだけでいい。

それだけで、砂袋が少し軽くなる。
組織は熱気球と同じだ。
重荷を取れば、必ず上昇する。

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【書いた人】高坂涼介(こーさか)

離職率60.3%の特養を、3年で9.1%にしました。
介護労働安定センター理事長表彰 最優秀賞
内閣総理大臣表彰 厚生労働大臣奨励賞

現場で実際に効いたことだけを書いています。
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