Split of Spirit 15
分離した三つの組織の内の一つである『仲村』を中心とした班は、鳴田たちによって撲滅された。
確実に、着実に吉沢を追い詰めている。
鳴田たちは、南場の家に戻り、次の計画を立てている。
「え~と、」
南場は、組織の主要メンバーをリストアップした資料を眺めながら、吉沢ではなく、「西枝」、二つ目のグループに属している人数を把握している。
「よし、鳴田、ちょっと武内呼んでこい。」
「おう。」
「で、次はどこなんだ。」
武内が急かす。
「西枝だ。」
「あぁ、そういってたな」
武内にしては反応が薄いように感じられる。
「あいつは能力に偏りがないのが強みだ。」
「そうそう、どの分野でも俺たちの得意分野に負けず劣らずだった。」
「あいつは強い。
何より人望が厚い。」
「西英は今どこにいるんだ。」
「前に抗争があった廃駅の隣の駅の立体駐車場らしい。
目撃者が大勢いる。」
地図を表示してカーソルでなぞる。
「じゃあ行くか。」
武内が仕切る。
鳴田たちは沈黙し、二人で視線を合わせ、ため息をつく。
近くの雑居ビルの空き部屋から立体駐車場の状況を確認する。
「おい、アジトが分かってんだからさっさとぶちのめしに行こうぜ。」
「「行けるわけないだろ」」
かれこれ丸二日張り込みをしている。
だが、一向に組織の人間らしい動きが見えてこない。
「どうなってんだ?」
南場が双眼鏡を覗き込んでいる。
「情報は確かなんだろ?」
「ああ、警察の情報網をハッキングした。」
「おい、南場ちゃん、それ大丈夫なのか?」
「まぁ、大丈夫だろ。」
「……」
「楽しそうですね。」
3人の視線が一点に集まる。
「お久しぶりですね。」
「あれが西英……。」
礼儀正しいスーツ姿とは裏腹に、拳や顔に見られる傷跡は歴戦のもののようだ。
整った顔立ちに、坊主頭。
敵ではあるが、整った所作に好印象を覚える。
「一人で乗り込んできたのか?」
「えぇ、そうですよ。」
西英はニヤリと笑う。
「相変わらず嘘が下手くそだな。
訓練で習わなかったのか?」
武内が時間を稼ぐ。
「私はあなたと違って正直な「人間」ですから。」
「どの口が、」
南場がつぶやく。
「どうですか?鳴田くん。
今、この下を優秀な部下たちが囲んでいます。
おとなしく降参すれば、命だけは助けてあげます。
その二人の命は保証できませんが、あなただけは見逃してあげましょう。」
「初対面の俺に噓がバレるって、相当単純ですね、あなた。
考えて話してるんですか?」
「思考回路が腐ってんのはお前だろうが!!
そんないい物持っておきながら有用に使えない愚図が!!」
(やっぱ単純だなぁ)
一歩で鳴田の間合いまで詰めてくる。
(速っ)
武内が刀で受ける。
「じゃ、作戦決行で。」
鳴田は南場の腕につかまり、武内も鍔で西英を押し返して、体勢を崩す。
南場が外に向かって発砲する。
銃弾に繋がっているワイヤーを頼りにガラス窓を蹴破り、ビルの一室から脱出する。
武内も刀の峰を使ってワイヤーを伝いながら、胸ポケットに入っているスイッチを、肘で押す。
雑居ビルの柱と天井に仕掛けられた爆弾が同時に爆発し、一瞬で雑居ビルは崩壊する。
「やりすぎだろ!!」
建物の屋根を飛び移りながら後ろの惨状を目の当たりにして鳴田が驚愕する。
「これくらいじゃ西英は死なないよね。」
「だろうな。」
<回想>
「で、警察の情報網をハッキングして手に入れた情報って確かなのか?」
武内が尋ねる。
「どう考えても罠に決まってるよな、こんなもん。」
南場曰く、警察の機密情報が信じられないほどわかりやすいところにあったそうだ。
「そうだな。」
なんとなく共感できる。
だが敵の罠がそんなに単純でいいのだろうかとも考えている。
「あいつ強さは確かなんだけど如何せん策が見え見えだからなあ。」
「そこはやっぱり変わってないんだな。」
南場の主張に武内が頷く。
南場と武内がいうのだから確かなのだろう。
「だから、西英は作戦なしに数で押してくるだろうな。」
「そうなってくると武器が必要になる……。」
鳴田が沈黙する。
「俺、爆弾なら作れるぜ。」
武内のカミングアウト。
「俺も、」
南場もカミングアウト。
二人は鳴田を見つめる。
「いや作れないからな、というか作らないからな。
人殺しの武器なんて。
嫌だぞ、俺は、おい、何で工具持たせてんだ。
嫌だって!!」
「はぁ……」
結局ほぼ軟禁状態で一日中手伝いをさせられたのを思い出す。
(きっと下にいた部下たちを俺たちの爆弾で殺してしまったのだろう。)
自責の念に駆られているようで、実はそこまで深く考えていない、鳴田の性格が垣間見える。
その時。
ドンと鈍く、瓦礫の崩れるような音がした。
やはり西英は生きていたらしい。
鳴田の視界が暗転する。
(あいつ、をここで、倒さ、なければ、ならない……。)
(これは俺のもう一つの意思……)
ふと吉沢の殺した人間の表情がよみがえる。
焦点の合わない目を虚に向けている。
「俺たちがここで市街地に逃げると、被害は大きくなる。
やっぱり逃げちゃダメだ。」
「鳴田もそう言ってることだしな。
西英とやるのが道理ってわけだ。」
先頭に着いていた南場が減速して立ち止まる。
「まぁ3人なら何とかなるか。」
3人は踵を返す。
