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Split of Spirit 18

舗装されたコンクリートの上。

靴と地面の当たる音を反響させながら歩く。

とあるビルに辿り着く。

「ここみたいだな。」

武内が、平良に渡されたメモとスマホの画面の地図を見比べる。

「そうか。」

鳴田の眼は濁っていて、光が灯っていない。

鳴田がドアを蹴破る。

中で作業している人たちが、全て人造人間であることは調査済みだ。

襲撃に気づいた彼らは、どこかと連絡を取り合う者もいればあわただしく武器を取り出す連中もいる。

武器を持って襲ってきた人造人間を次々と撃ち殺す。

乾いた音と苦痛にゆがむ声が響き合う。

「俺は争いがしたいわけじゃない。」

そういって弾薬を装填する。

「吉沢を出せ、」

襲い掛かってくる敵の眉間を機械的に撃ち続け、返り血を浴びる。

ようやく静かになった空間。

「吉沢はこの上だろうな。」

少しひきつった顔をした武内が言う。

赤黒い液体が、靴の裏にこびりついて、歩くたびに耳障りな音を立てる。

鳴田は返答せずに、使いつくした拳銃を捨てて、歩いていく。

「おい、鳴田!!」

後ろから武内が殴り掛かってくるが、拳を受け止める。

止めた後も、武内の拳は力強く震えている。

「フラフラ信念曲げやがって!!

お前はそんなに浅い男だったのか!?

殺さないって決めたなら最後まで貫き通せよ!

あの頃の鳴田を思い出せよ!!」

肩をゆすられる。

鳴田は瞼を閉じる。

「……もう涙が出ないんだ。

人が死んでも、悲しくもなんともない。」

武内が手を放す。

そのまま背中を向けて、武内を置いて、一人で非常階段へ向かう。

「おい、南場がいなくなったからって……」

「もう、いいんだ。」

何かを察した武内の足音は、自分の歩幅よりも速く遠ざかっていく。

俺は一人になってしまった。

救われていたのは俺の方だった。

南場は多くの刺激を与えてくれた。

もちろん苦しいこともあったが、南場が来てから今までの何もかもが楽しくなかったわけではない。

今までの経験を塗り替えるぐらい南場との思い出が鮮やかだった。

だがそれももう過ぎた話。

取り返しはつかない。

階段の先に、もう一人の自分が待ち構えている。

「覚悟はもうできていたようだね。」

「あぁ」

「後悔は無いかい?」

「もちろんだ。」

「それじゃあ僕の力を貸そう。」

「頼む。」

鳴田が目を開けると、瞳が黒く染まる。



ドアを開けると、白い壁で包まれた異様なほど殺風景な部屋。

ただ、そこにいる吉沢から目を逸らさない。

吉沢が口を開く。

「君は何に成ろうとしている?何を望む?」

「優しい人格者か?他人に愛してもらえる魅力的な人間か?」

「そのどちらでもない。」

「誰かに必要とされたいんだろう。」

「…そうだ。

誰かが俺のことを必要だと言ってくれれば、俺はその人のために動く。」

「献身的だな」

「それだけで良かったんだ。

人を助けることに俺の意思なんて……要らなかったんだ。」

息を細くして、戦闘に入る。

吉沢が動こうとした瞬間に、鳴田はもう目の前にいる。

空気を切る音と共に、吉沢の腹部に三発叩き込む。

身体を浮かして、衝撃を和らげた吉沢は前を向きなおすと腕を構える。

「一回触れたらゲームオーバーだ。

どう攻略する?」

一切、気に留める様子はなく突っ込む。

「考えなしか、」

助走をつけて殴りかかる。

鳴田の拳を吉沢が受け止めて、意識を奪う。

鳴田の眼が虚ろになった瞬間、鳴田の身体が震える。

「なんだ」

咄嗟に手を離した吉沢。

鳴田は意識を取り戻す。

「自傷か?必死すぎて泣けてくるね!!」

「これは南場が残してくれたものだ、」

鳴田の身体には特殊なベルトが巻かれている。

南場の使っていたテーザ―銃を改造していた。

鳴田の動きが止まった瞬間に、強い電気が流れる。

「君は無傷じゃすまないだろう。」

乗っ取られた意識を起こすには相当の衝撃が必要だと鳴田は仮定していた。

そのため、吉沢が意識を奪うために自分の身体に触れた瞬間を狙い、電撃を通して、意識を奪い返すのと同時に、吉沢を感電させるのが鳴田の作戦だった。

だが初撃で見破られてしまった。

二度は通じないだろう。

吉沢から距離をとって、待ちの姿勢に入る。

「さっきまでの威勢はどうしたんだ?

まさかもう終わりか?」

「……」

「何を考えているのか知らないが、来ないならこっちから行かせてもらう」

拳が視界に飛んでくる。

身体をひねって避ける。

「安心しろ、能力は使わないでやる。」

吉沢は確かに能力を使わない。

しかし押されている。

吉沢の拳を避けながら反撃の機会を伺う。

避けられなかった吉沢の拳を受け流したときに一瞬だけ姿勢が崩れた。

そこを狙って吉沢が連打を仕掛ける。

「がっ、」

胸に鋭い痛みが走り、殴り飛ばされる。

状況は劣勢だ。

まだ吉沢に決定的なダメージを与えられていない。

切り札を使うタイミングは今だ。

『完全同調』

鳴田の精神を、イマジナリーブレインの精神と完璧に共有することで身体能力、戦闘時の思考力を飛躍的に上昇させる。

「なるほど、イマジナリーブレインとのほぼ完璧な共存か、そこまで伸ばしていたとは……、

ここがおそらく到達点。

イマジナリーブレインを回収するなら今だな。」

「………消す。」

「!!」

吉沢の視界から、鳴田が消える。

「………飛ばす。」

背後に気配を感じた吉沢が振り向くとすでに拳が向かってくる最中だった。

思わず腕を組むが、威力が強く、受け止められない。

部屋の窓ガラスを突き破り、隣のビルの屋上まで飛ばされる。

「………斬り、、、落とす!!!」

向かいのビルに飛び移りながら、刀を抜き、吉沢の倒れている場所目掛けて、斬撃を繰り出す。

「くッ、」

間一髪で避ける吉沢。

流れた刃は、コンクリートを引き裂き、屋上の床を破壊して、二人とも下の階層へ落ちる。




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