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山の暮らしの物語28 文ちゃんが生まれた日


The day my brother was born


<  このシリーズは
 戦後、ある山村に実在した一家をモデルとして、創作したものです >


その日の朝、父さんは急いで村の産婆さんを呼びに走った。
昨夜から、母さんのお腹が痛くなったからだ。
前の日から泊まりに来ていた実家のばあちゃんが、そばに付き添っている。


ゆきちゃんは、庭をうろうろしているだけだ。
梅雨が明けたばかりで、あちこちでセミが鳴いている。


やがて、父さんに連れられたおばちゃんが、汗を拭きながら山道を登ってきた。
ゆきちゃんは、急いで井戸端から冷たい水を汲んでくる。

「あ〜 おおきに」
産婆さんは、コップの水をぐっと飲み干すと 母さんの寝間に入っていった。


ゆきちゃんは ちょっと怖くて
でも気になって、やっぱりうろうろしている。

昼近くなって、母さんの声が大きくなった。
そして、つぎの瞬間に奇妙な泣き声がした。


赤ちゃんが生まれたのだ。
「お〜 よしよし 元気な男の子やね」
産婆さんの明るい声に、父さんも、ばあちゃんもほっとしている。


次の日、ゆきちゃんは 一人で夏休みのラジオ体操に出かけた。
去年、母さんと歩いた細い山道を駆け降りて
あひるの池を通り越し、まあちゃんちの前を過ぎると、その先に神社がある。

境内には、世話役のおじさんと子供たち十数人が集まってにぎやかだ。
近所の犬も走り回っている。

さっそく、まあちゃんをつかまえて
「あのね 弟が生まれたの」と一番に報告した。

「え〜 ほんと かわいい?」
まあちゃんが目をくるくるさせる。

「まだ わかんない」

そんな話をしていると、6時半になってラジオ体操の放送が始まった。
みんな並んで、前にいるおじさんのマネをして手足を動かす。



上級生のお兄ちゃん達は、さすがに上手だ。
小さい子は、ちょっと危なっかしいけど、みんな一生懸命。

そんな体操も、あっという間に終わった。
20分もかけて来たのに、あっけないものだった。

ゆきちゃんは「またね バイバイ」と手を振り、山の一軒家に帰ってゆく。
山歩きは、まったく体操より大変だ。

それに、朝ごはんの後は 夏休みの宿題と、鶏のエサやりが待っている。

「でも、がんばらなくちゃ」 

小学一年生の夏、ゆきちゃんはお姉ちゃんになったのだ。



小さな 英語レッスン

弟が生まれた日
The day my brother was born

小学一年生の夏 ゆきちゃんはお姉ちゃんになったのだ
In the summer of her first year of elementary school,
Yuki became a big sister.

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