山の暮らしの物語6 手作りのおひな様

白い障子に、柔らかな早春のひかりがあふれ
そこに映った庭木の影が、ゆらゆらと風に揺れている。
それを眺めながら、掘りごたつを囲んだ母さんとゆきちゃんは、熱心に千代紙のおひな様を作っていた。
かたわらには、父さんが街で買ってきた雑誌が広げてある。ひな人形の作り方が載っているのだ。あまり器用とは言えない母さんだが、ゆきちゃんのために作ったおひな様は、母さんとしてはなかなかの出来である。
でも、三人官女の一人はちょっと首が傾いてしまい、何か考えているみたいだ。おまけに、ゆきちゃんがクレヨンで塗りたくった ぼんぼりは、炎がはみ出して危ない事になっている。
そんな楽しい仲間が揃ったところで、小さな文机に飾る事にした。
桃の花はまだなので、ゆきちゃんは、日当たりのいい畑のそばで咲き始め紅梅を採りに出かけた。
母さんは、昨夜から仕込んでおいた小豆に、干して保存してあったお餅を入れて、甘いおしるこを作り始める。
おしるこのいい匂いが漂い始めた頃、何やら話し声がして、ゆきちゃんが近所のおばちゃんと一緒に帰ってきた。
「こんにちは。寒いの〜 変わりないかい?」
おばちゃんは、この一軒家を心配して様子を見に来てくれたらしい。
「まあ おおきに。おかげさんでなんとか… さあさ 上がって」
まだ所々に雪の残る山道を登って来たおばちゃんは、かじかんだ手をいろりの火にかざしながら、文机の上のおひな様を見やった。
「あれまあ、可愛らしこと、あんたがこしらえたんかい?」
「下手で恥ずかしけど…」
母さんはちょっと照れくさそうだ。
「いやいや、大したもんや」
「これ、わたしが塗ったの」
ゆきちゃんが、得意そうに炎がはみ出したぼんぼりを指さす。
「お〜 上手にできとるね」
おばちゃんがほめてくれた。
やがて、母さんが小瓶にさした紅梅を飾り、小さなおわんのおしるこをお供えすると、おばちゃんは「どれ わたしもお参りさせてもらおかいね」と、文机の前に座って手を合わせた。
白酒はないが、おひな様だって甘いおしるこは大好きなはずだ。そして、こたつの上にも三人分のおしるこが並んだ。
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