山の暮らしの物語18 初めての運動会
First sports day
朝早く家を出た一家は、細い山道を歩いていた。
草の露を払いながら先を行くゆきちゃんに、日傘を抱えた母さんが続く。
最後は、リュックを背負って、くるくる巻いたむしろを担いだ父さんだ。
リュックには、いなり寿司や海苔巻きやみかんが詰まっている。
今日は小学校の運動会なのだ。
学校は、東西に細長く広がる集落の真ん中あたり… 山の上に建っている。
途中で母さんの実家に立ち寄ると、いとこ達が待っていた。
同い年のメイちゃんとお兄ちゃん。
じいちゃん、ばあちゃんもいる6人家族だから、にぎやかだ。
おばちゃんが、にこにこしながら「いい天気でよかったね〜」と空をあおぐ。
おばちゃんは母さんの姉さんで、お婿さんと一緒にこの実家を継いだ人だ。
縁側に座ったメイちゃんが、足をぶらぶらさせながら聞く。
「ゆきちゃん 駆けっこ出るんやろ?」
「うん」
「僕も出るよ、パン食い競争」
お兄ちゃんがふざけると
庭先のコスモスに止まったトンボが すい〜っと飛んで行った。
やがて、みんなの支度ができたので そろって山の上の学校に向かう。
学校への登り道はあちこちにあって、村人はそれぞれ手近な道からやって来る。
校庭の門をくぐって、初めての場所にきょろきょろしていると
「ゆきちゃ〜ん」と誰かの呼ぶ声がした。
振り向くと、校庭の向こうで手を振る背の高い女の子がいた。
「あ、 まあちゃん!」
初めて友達になった近所の女の子だ。
山の上の校庭はとても狭いので、
外に張り出した 木組みの見物席がこしらえてある。
青年団のお兄さん達が作ったものだ。
ゆきちゃん達は、まあちゃん一家の隣に陣取った。
校長先生のあいさつが始まり
子供たちのお遊戯 駆けっこ 大人たちのパン食い競争と続く。
そして、一番のお楽しみは皆で食べるお昼だ。
真っ青な空の下 楽しい時間が過ぎて
いよいよ ゆきちゃんの出番がやって来た。
それは、来年 小学校に上がる子供たちの駆けっこだ。
メイちゃんは同い年でも、学年はもう一級下になるから、今日は見物席にいる。
ゴールの細長いテーブルの上には お菓子の入った袋が横一列に並んだ。
「よ〜い」でいっせいに構えると パン! とピストルが鳴った。
ゆきちゃんは 右から三つ目の袋を狙っていた。
駆けっこには自信があるから、ぜったい取ってやると思っていたのに
隣の男の子に、横からひょいっと取られてしまった。
当てが外れたゆきちゃんは泣き出してしまった。
「ほれほれ、泣かんでも おんなじものやし…」
残った袋を差し出して先生が慰めてくれたが、涙が止まらない。
まあちゃんがそばに来て、困ったような顔をしている。
(だって、あの袋を取りたかったんだもん)

ゆきちゃんは、こだわりの強いちょっとめんどくさい子だったのだ。
小さな 英語レッスン
初めての運動会
First sports day
ユキちゃんはとても個性的で、ちょっと面倒な女の子でした
Yuki-chan was a very particular and somewhat troublesome girl
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