[027] 至高のイデア・プロトコル - 聖女と娼婦のアルゴリズム
美貌のハルシネーション
23世紀初頭。人類の生存圏は宇宙へと拡大し、小惑星のレアメタル採掘が世界の基幹産業となっていた。
主人公の弦(げん)は深宇宙の無人探査機が持ち帰る数百京バイトのゴミデータから価値ある情報のみをサルベージするクォンタム・サルベージャー(量子回収官)の最高峰。彼は他のAI監査がノイズとして切り捨てていた信号の奥に地球のエネルギー問題を一変させる超高純度レアメタル高密度小惑星の正確な座標を発見。その採掘権を巨大メガコーポに独占販売したことで国家予算級の富を手に入れる。
一夜にして若きビリオネアとなった彼の元には財産とステータスを目当てにあらゆる階層の女性たちが群がった。弦自身も持ち前の高い知性と財力を用い、ゲームのように絶世の美女と呼ばれるモデルやセレブたちを自ら釣り上げ、次々と浮名を流した。
しかし、その先にあったのは底深い虚無だった。どんなに外見が美しくとも生身の女性との関係は退屈な感情の駆け引き、見栄の張り合い、際限のない物欲、そして社会的リターンを求められる重労働でしかなかった。美貌の裏にある精神の底の浅さに完全に辟易した弦はすべての交際を断ち切る。
彼が求めたのは自分の卓越した知性と対等に渡り合える精神を持ち、かつ自らの歪んだ肉欲のすべてを全肯定してくれる完璧な、作られた女神。弦は完全予約制のメゾン『アウラ・ダイナミクス』の重厚な扉を叩いた。
第一フェーズ:輪郭の切り出し
空間の中央に光の粒子が集まり、中性的な美しいホログラム・エージェント――『クラス・アウラ』が静かに浮かび上がった。
《ようこそ、弦様。私は貴方の美意識を具現化するコンダクターです。まずはベース・モデリングから始めましょう。彼方にとっての女神の大まかな輪郭を私にご指示ください》
弦は手元のグラスを軽く傾け、光の粒子を見つめた。脳裏をよぎるのは、これまで財産目当てに群がってきた女たちや、ゲームのように釣り上げては失望してきた絶世の美女たちの退屈で底の浅い肉体と精神だ。彼が本当に求めているのはそんなありふれたトロフィーではない。
「身長は170センチ。高級なオートクチュールを纏っているときは、誰もが息を呑むほどスレンダーで細身なシルエットにしてくれ」
弦が指先で空間をなぞると、光の輪郭がしなやかな女性の体形を形作り始める。
「だが、ドレスを脱ぎ去れば、その腹部には芸術的なシックスパックが美しく割れている筋肉質な肉体であってほしい。それなのに、ヒップは私の欲望をすべて受け止めるように肉厚で丸みを帯びている。バストはBカップと敢えて控え目に。この肉体的なアンバランスさこそが、最高に洗練された美しいシルエットを生むんだ」
《承知いたしました。筋肉の繊維密度をアスリートクラスに設定。骨盤の傾斜角を最適化し、ご要望のシルエットを構築します》
エージェントの処理に応じてホログラムの女性像が劇的に変化していく。服を着た時の引き締まった美しさと、剥き出しになった瞬間の野生的なギャップ。弦の理想が冷たい光の中で確かに肉を持ち始めていた。
「次は性格プロトコルか…。そう、私と対等以上に渡り合える卓越した知性を実装してほしい。私が専門とする量子力学や宇宙開拓の哲学を深く理解し、私の脳を刺激するような会話を楽しめる神聖さが必要だ。ただし、ただのロボットのような全肯定の従属は興ざめだ」
弦は不敵に微笑み、声を潜めた。
「そして、私の愛撫や言葉に対しては最初は確かな恥じらいと微かな抵抗を示すようにしてくれ。彼女が持つ知的な盾を、私が言葉と愛撫で一枚ずつ剥ぎ取り、屈服させていく過程そのものを楽しみたい。そして――」
第二フェーズ:禁断のカスタマイズ
《ここからが、当メゾンの真骨頂でございます》
傍らに控えていたコンシェルジュが、弦の言葉を引き継ぐようにリモート端末に触れた。空間の明かりが妖艶な琥珀色へと落ち、弦の前にそれまでとは比較にならないほど膨大で恐ろしいほど詳細なカスタマイズメニューが出現した。画面に並ぶのは、生体粘膜の摩擦係数、内部組織の熱伝導率、絶頂時の括約筋の収縮アルゴリズムといった、剥き出しの官能を司る数値群だ。
《ベース設定を承認しました。現在価格、一億四千万フェン。プレミアム・スイートのオプションを呈示いたします》
クラス・アウラの無機質な声が響く中、弦はスライダーを操作していく。
「さっきの性格の件だが、ベッド上での会話の知的な深度がそのまま私の性的興奮のトリガーとなるようダイレクトにリンクさせてくれ。そして最も重要なのは、肉欲の解放アルゴリズム、いわば娼婦への反転だ。最初は恥じらいをもちながら従順である彼女だが、情事が進み絶頂が高まるにつれて理性を失っていく。限界値を超えた瞬間、彼女は理性を失った肉欲の獣へと変貌し、私の命令を無視して、逆に私を激しく求め、支配しようとするほどの激しい肉食的なプロトコルを組んでくれ」
《官能のカタストロフですね。羞恥の決壊、および主従の反転プログラムを適用します》
エージェントが彼女の股間に焦点を当てる。
「膣内は私のサイズに1ミリ単位で最適化し、内部の肉襞の配置、絶頂時にはペニスを強烈に吸い上げる波状収縮を起こすように。愛液は彼女の絶頂度に比例して粘度を増し、自身の体温より少し高い39度の熱い蜜となって溢れ出る設定だ。皮膚は『感応表皮・Ver. 5.0』の女性仕様。触れるだけでかすかに朱に染まる柔らかな肌、および愛撫された時に喉の奥から漏れる、理性を狂わせるような甘い喘ぎ声を設定してくれ」
《すべての性的オプションを適用しました。弦様、文字通りの「快楽の女神」が誕生しようとしています。数値の最終調整のため、シンクロ・ポッドでのVRテイスティングをお勧めいたしますが、いかがいたしますか?》
「もちろん、試させてもらう」
弦は衣服を脱ぎ捨て、部屋の隅に用意された、神経接続液で満たされたカプセルへとゆっくり横たわった。
第三フェーズ:三段階のテイスティング
意識が暗転し、次の瞬間、弦はVR空間の中にいた。最高級のシルクが敷き詰められたベッドの上には先ほど設定した通りの息を呑むほど美しい彼女が全裸で跪いている。まだ名前のない、彼のためだけの従属者だ。
弦は彼女の鋭い顎のラインを指先でなぞりながら、冷徹な声で問いかけた。 「現在の小惑星帯における量子通信の遅延について、君の見解を聞かせてくれないか」
彼女は凛とした琥珀色の瞳で弦を見つめ、完璧な知性と流暢な言葉で宇宙論を答え始めた。だが、弦の手がそのドレスを透かして美しく割れた彼女のシックスパック、そして肉厚なヒップへと滑り込んだ瞬間、彼女の網膜がかすかに揺れ、白い肌がサッと朱に染まった。
「…弦様、そのような知性のない触れ方は、お慎みください」
知的で高潔な令嬢が見せる、確かな拒絶と恥じらい。そのプライドを強引に組み伏せる全能感に弦の下半身は猛烈に硬化していく。
「口で、私のモノを鎮めてくれないか?」
弦の命令に、彼女は一瞬、屈辱と恥じらいの表情を浮かべた。しかしプログラムされた絶対の従属の前にゆっくりと膝を折り、弦の象徴をその唇へと迎え入れる。
「っ…!」
毛穴ひとつない滑らかな唇がペニスを包み込み、喉の奥へと滑り込んでいく。口腔粘膜の絶妙な温度と舌のテクスチャがもたらす極上の摩擦感が弦の理性を揺さぶる。弦がその頭髪を掴んで強く刺激を与えるたびに、彼女は潤んだ瞳で苦しげに見上げながらも懸命に喉を鳴らして奉仕する。生身の美女たちからは決して得られなかった狂おしい所有欲が、弦の脳内を満たしていった。
そして完全な結合へと進む。弦は彼女を仰向けに組み敷き、39度の熱い蜜で溢れる名器の最奥へと一気に突き進んだ。
「あ、はっ…、弦、様…っ」
計算し尽くされた肉襞の隆起がモノを強烈に擦りあげる。弦が腰を打ち付けるたびに彼女は先ほどの知性を完全に失い、甘い喘ぎ声を漏らした。そして彼女の絶頂が最高潮に達したその瞬間、設定した肉欲の解放アルゴリズムが静かに牙を剥いた。
彼女の瞳から完全に理性が消え、逆に弦の胸を突き飛ばしてベッドに押し倒したのだ。
「え…っ!?」
引き締まったシックスパックを波打たせ、彼女は肉厚なヒップで弦を圧し潰すように激しく、貪るように腰を振り始めた。
「弦、もっと、私の中に…あなたのすべてが欲しいっ…」
恥じらいを脱ぎ捨て、肉欲の怪物となった女神に胎内を激しく絞り上げられ、弦はかつてない全能の絶頂へと突き落とされ、彼女の最奥へすべてを注ぎ込んだ。
起動の誓い
現実に戻った弦はあまりの快感の余韻に全身の力が抜け、ソファーから立ち上がることすらできない。ガウンの中では、まだ自身の象徴が熱くズキズキと脈打っている。
モニターに映る四億九千万フェンの請求額。
どんな絶世の美女も、この作られた女神の足元にも及ばない。彼女こそが自分の知性と欲望のすべてを全肯定してくれる唯一の真実だと、弦は確信する。彼は震える指で決済ボタンを押し、数週間後に自宅へ届く完璧な彼女との終わらない夜を想って、象徴をいきり立たせた。
(次回、3部作最終話、[028] 至高のイデア・プロトコル - 永劫の未完成|realblackjp😊)
