飲食アルバイト50代お局様‼第12話 先輩はお客様ではない
一号さんは面倒見が良いタイプで本当に私の事をよく見ていた。
客席に行くときに忘れているものがあると「ちょっとちょっと、忘れてるよ」と言って渡してくれる。
そういうときの口調は子供に忘れ物を渡すお母さん風。三人も息子がいるからそういう言い方になるのかもしれないけど。
ただ機嫌が悪いのか、意地悪なのか言い方が嫌だった。
「しっかりしてください」「ちゃんとやってね」と付け加えて言われるのが嫌だった。指摘は指摘として受け止めるとして怖い言い方をするのが理解できなかった。そしてそのお叱りを受けるたびに返事をさせられることが本当に苦痛だった。
私が所属しているお店での返事は「かしこまりました」で統一されている。
私は客の前でならいくらでも「かしこまりました」をいう事は出来たけどそれは演技をしている自分に酔えたからだった。
お金の付き合いだと割り切ると楽にそれはできる。客はお金だ。その場を離れれば気持ちを切り替えることは可能だ。
でも仕事仲間を同じように思えるだろうか。
仕事仲間に演技する意味・・・ある?
お前客じゃないじゃん。お金じゃないじゃん。ただの人じゃん。
こんな事思ってしまう私はやっぱり性格が悪いのだろうか?
ダメダメ 先輩なんだからもっと敬わないと。
あーあ・・・。
でも、先輩 お前も東京都の最低時給じゃん。
二十歳前後の若い女の子が来店しミーティングや面接で使われるテーブルに座った。Gパンにトレーナー、コンバースのハイカット、髪はポニーテールにしていてアラレちゃんみたいな眼鏡をかけている。若さが違和感なくコーディネートを成立させている。
「一年は続けてくれるという約束だったのにこんなにすぐに辞められてこちらはとても迷惑しています。」と言いながら社長が給料袋を机の上に置いた。
女の子は無表情でうなずくだけでなにも答えない。
こんな若い子が働いていたんだ!という驚きと共に一年は続けてほしいというあの言葉は本気だったんだ・・・この令和の時代に給料手渡しって・・・辞める方としては二度と来たくないだろうから振り込みがありがたいよな・・・と色々な思いが渦巻いた。
そして彼女がバイトを辞めた理由を考えた。
もしかして怖いオバサンにいじめられたから?
中年の私でも怒られた時怖かったからこんなに若い人があの恐怖に耐えられるわけがない。一緒にシフトに入ることのなかった彼女と話したい気持ちが湧き起った。もちろん叶わなかったけど。
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