【書評・要約】現代の覇権争いの裏側がわかる!名著『シルクロード全史』徹底解説
学校の歴史の授業...だいたいこんな感じで教わったと思います。
古代ギリシャやローマが発展して
やがてヨーロッパのキリスト教社会ができて
ルネサンスが起きて
現代のアメリカやヨーロッパの繁栄につながった
みたいな。
これ、間違ってはいいないんですが、すごーくヨーロッパ中心の一直線な歴史の見方なんですね。
これに風穴を開けた名著と言われるのが、オックスフォード大学の歴史学者ピーター・フランコパンが書いた『シルクロード全史』です。
この本は、世界史の本当の主役はどこだったのかを解き明かした世界的名著です。
今の世界がなぜこうなっているのかを知るための最強の本なので、今日はこれを紹介!
なぜシルクロードなのか?
著者のフランコパンは子どもの頃、自室の壁に貼られた世界地図を眺めながら、学校で習う歴史は、ヨーロッパとアメリカのことばかりで、世界の巨大な地域が無視されていると違和感を持ちました。
彼が導き出した答えは、文明が生まれ、宗教が広まり、世界の富が集まっていた本当の中心地は、地中海から中東、そしてヒマラヤへと続く『シルクロード』だった!というものです。
シルクロード(絹の道)と聞くと、ラクダに乗った商人が中国からヨーロッパへ絹を運ぶロマンチックな風景を想像するかもしれません。
でも、この本で描かれるシルクロードはもっと激しい。
この巨大なネットワークが運んだのは絹だけではなかったんですね
ネットワークが運んだもの
この本は全25章で構成されており、各章が「〇〇の道」というタイトルになっています。
それぞれの時代で、シルクロードが何を運び、どう世界を変えたのか、とくに面白いエピソードをいくつか紹介します。
信仰の道
キリスト教や仏教、イスラム教といった世界宗教は、教えの素晴らしさだけで広まったわけではありません。
商人たちが行き交う「交易ルート」があったからこそ伝播しました。
特に7世紀に誕生したイスラム教は、周辺の大国(ビザンツ帝国やペルシャ帝国)の支配にウンザリしていたアラブの部族たちに「精神的・物質的な救済」を約束することで、この交易網に乗って爆発的に広まりました 。
毛皮の道と奴隷の道
中世において、北のスカンジナビア半島からやってきたヴァイキング(後のルーシ族、現在のロシアのルーツ)は、東方へ進出して毛皮の貿易で巨万の富を築きました。
さらに彼らは、人間を商品とする奴隷貿易も活発に行いました。
この強制的な人々の移動が、結果的に北ヨーロッパの経済を大きく押し上げ、アジアとヨーロッパのパワーバランスを変えるキッカケになったのです。
死と破壊の道
シルクロードは恐ろしいものも運びました。
14世紀、中央アジアのキルギス周辺を起源とするペスト(黒死病)は、交易ルートに乗って猛烈な勢いでヨーロッパへ広がりました。
このパンデミックにより、ヨーロッパの人口の推定30%から60%が亡くなるという大惨事になります。
しかし歴史の皮肉なところで、生き残った人々の間では働き手不足が起き、労働者の賃金が跳ね上がりました。
これが富の再分配を生み、ヨーロッパが経済的に急成長する(西欧の台頭)逆説的なキッカケとなったのです。
石油と戦争…現代の中東はなぜ揉めるのか?
この本のすごいとこですが、古代や中世の話で終わらず、後半で一気に20世紀から現代の世界情勢(中東問題やテロ戦争など)へとつながっていく点です。
黒い黄金の道
近代に入ると、かつて絹やスパイスが行き交った道は石油を運ぶ道に変わります。
大英帝国(イギリス)は、イラン(ペルシャ)の石油利権を徹底的に搾取しました。
その後、第二次世界大戦後にはアメリカが中東に介入しますが、現地の代表者からはアメリカはイギリス人以上にイギリス的だ(搾取的だ)と批判されるほどでした。
大国が自国の利益のためだけに中東の指導者をすげ替え、現地の社会を破壊していった生々しい歴史が描かれています。
って今とやってること変わんねえじゃん、っていう…
もうひとつのシルクロード!
シルクロードを扱うもう一つの名著に、イェール大学の歴史家ヴァレリー・ハンセンが書いた『シルクロード』があります。
フランコパンの本が世界全体を俯瞰するマクロな歴史であるのに対し、ハンセンの本は「実際に発掘された文書」に基づくミクロな歴史です。
ハンセンの研究によれば、実際のシルクロードを行き交ったのは大陸を横断するような大商人ではなく、近隣のオアシス間を移動し、硬貨すら使わずに物々交換をしていた名もなき人々(ソグド人など)だったことが分かっています。
また、ハンセンの本は対象地域を約2000マイルの実際のルートに絞り、時代も1400年で区切っています。
両方の本を比較して読むことで、壮大な世界情勢と、そこで暮らした人々のリアルな生活の両方を知ることができます。
こっちもおすすめです。
いまこそ読んでほしいかも
シルクロード全史は、無意識にかけている西洋中心という歴史のメガネを外し、新しい視点で世界を見渡すことが大切だよってことを教えてくれる本。
大学とかだと課題図書になってるとこも多いです。
学校の歴史の授業では満足できなかった人、中東やアジアの国々が、なぜ今ニュースでよく話題になり、紛争が絶えないのか、その根本的な理由を知りたい人、古代の交易から現代の中国やアメリカの覇権争いまで、すべてが繋がっていることを知りたい人、ぜひ読んでみてほしい。
【追記】
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