余白ノート|本好きの下剋上 領主の養女丨第4回|フェルディナンドは、パンフレットの表紙になるのか!?
ハッセに神殿工房が建ち、印刷事業はまた一歩前へ進みました。
けれど、建物ができただけでは物事は動きません。必要なのは運営資金。
そこで始まったのが、フロレンチアとエルビーラ主導のお茶会、そしてフェルディナンドを起用したフェシュピール・チャリティー・コンサートという新たな仕掛けでした。
第4回は、ローゼマインの“本好き”と“商人”の顔が同時に光る、とても楽しい回だったと思います。
とくに面白かったのは、ローゼマインが寄付集めを、ただのお願いで終わらせなかったことです。
招待状のかわりにチケットを売り、席の場所によって価格を変える。さらにパンフレット販売まで視野に入れる。その発想はもう完全に商人のものなのに、目的はあくまで印刷工房を前へ進めることにある。
この「理想のために仕組みを作る」感じが、今回も実にローゼマインらしくてたまりませんでした。
渋るフェルディナンドに、新しい曲と新しい料理のレシピ提供を条件にコンサート出演を持ちかける流れも、いかにもこの作品らしいやり取りでした。本人はまったく乗り気ではないのに、周囲はその人気と価値をよくわかっている。そして最終的には、リヒャルダの一喝まで飛び出して、フェルディナンドも渋々引き受けることになる。
このあたり、本人の意思とは別に“貴族女性の憧れ”として担ぎ出されるフェルディナンドが、ちょっと気の毒で、でも妙におかしいのです。
さらに今回、ローゼマインの“悪い顔”がいちばんよく出ていたのは、その先でした。
騎獣を作る魔術訓練をさせられ、読書を制限される。そんな日々への反動もあったのでしょう、彼女が考えたのは反抗ではなく商品化です。
フェルディナンドの肖像画をパンフレットの表紙にして売る。
しかも、そのためにろう原紙の開発を進め、ベンノを焚きつけ、ルッツまで借り受ける。
静かな顔をして、とんでもない革命の準備を始めているのが、本当にローゼマインらしいと思いました。
今回あらためて感じたのは、ローゼマインが持ち込む“現世の知恵”は、ただ便利な知識として使われているのではないということです。
チケット制も、席ごとの価格設定も、パンフレット販売も、現代では珍しくない仕組みかもしれません。
けれど、それをこの世界の貴族社会や商人社会に合わせて、ちゃんと機能する形に変えていくところに、この物語の面白さがあり、知識の持ち込みではなく、仕組みの翻訳。ローゼマインは毎回、その世界に合ったかたちで小さな革命を起こしているのだと思います。
しかも今回は、その革命が印刷技術そのものとしっかり結びついているのがいい。単に資金を集めるだけなら、お茶会や演奏会だけでもよかったはずです。
けれどローゼマインは、その先を見ている。
肖像画を印刷して売る。そのためにろう原紙を開発する。つまり今回の資金集めは、目先の運営費を確保するための話であると同時に、印刷の新しい可能性を切り開くための布石にもなっているのです。
このあたりが、本好きの下剋上の気持ちいいところだと思います。ひとつの出来事が、ひとつの意味だけで終わらない。寄付集めの話が、いつの間にか興行の話になり、出版の話になり、技術開発の話になり、社会そのものを少しずつ変えていく話になっていく。
ローゼマインは本が好きな少女だけれど、気がつけば文化そのものを前に押し出す人になっている。その歩みの静かさと確かさが、今回もとても魅力的でした。
そして、フェルディナンドの扱いもまた絶妙です。ローゼマインにとって彼は、怖い保護者であり、優秀な後ろ盾であり、時に読書を妨げる憎たらしい相手でもある。でも今回はそこにもうひとつ、“売れる存在”という見方が加わってしまった。本人が聞いたら露骨に嫌そうな話なのに、視聴者としては思わず笑ってしまう。この作品は、人物の関係性が深まるほど、感情だけでなく役割まで増えていくのが面白いのです。
ハッセに工房が建ち、お金を集めるための企画が動き、印刷技術の新しい一歩も見えてきた。第4回は、派手な戦いや大事件の回ではないかもしれません。でもその分、ローゼマインがどんなふうに世界を変えていくのかが、とてもよく見える回だった気がします。本を作りたい。その願いが、いつの間にか人を動かし、仕組みを生み、文化を育てていく。この“静かな革命”の手触りが、今回もたまらなく好きでした。
次回は、この企みがどこまで形になるのか。フェルディナンドは本当にパンフレットの表紙になるのか。そしてローゼマインの商人顔は、さらにどこまで加速してしまうのか。そんなことを思いながら、次回も楽しみに待ちたいと思います。
✽ ✽ ✽
フェルディナンドは本当にパンフレットの表紙になるのか。そんな笑ってしまう企みの裏で、印刷の未来は確かに前へ進んでいる。おかしさと前進が同時にあるところが、やっぱり本好きの魅力だなと思いました。
前の物語を映像でたどり直したい人へ
『本好きの下剋上』映像作品(Amazon)
※この記事にはAmazonアソシエイトリンクを含みます。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします!
とても励みになります!
いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!