余白ノート|本好きの下剋上 領主の養女丨第5回|フェルディナンドは、表紙を監修する
第5回は、次回のフェシュピール・コンサートへ向けた準備回でした。けれど、この作品の準備回は、いつも準備だけでは終わりません。ろう原紙のための道具作り、フェルディナンドの表紙問題、そして表には出せない秘密の管理まで。今回もまた、印刷と商売と危うさが同時に進んでいく、本好きらしい面白さが詰まっていました。
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第5回は、次回のフェシュピール・コンサートへ向けた“準備回”だった。
けれど、ただの準備では終わらないところが『本好きの下剋上』らしい。今回もまた、印刷、商売、家族、そして危うい秘密が、ひとつの回の中で静かにつながっていた。
まず印象に残るのは、ろう原紙製作用のローラー作りだ。
二人の職人が競い合い、実際に現物を作って優劣を決めることになる。活字を作ったヨハンに対して、ザックが闘志を燃やす流れもよかった。ただ道具を作るだけではなく、職人同士の誇りや競争心がちゃんと物語になっている。この作品は、技術開発の場面にもしっかり熱があるのが面白い。
印刷の未来は、ひらめきだけでは進まない。
誰が、どんな道具を、どこまで使える形に仕上げるか。そういう現場の手触りが見えるからこそ、ローゼマインの“革命”が机上の空論ではなく、本当に前に進んでいることが伝わってくる。
今回うれしかったのは、トゥーリの場面でもある。
貴族マナーを学び、ローゼマインに髪飾りを献上しに来る。しばしお茶を飲みながら話ができる時間は、華やかな企画や技術開発とはまた別のぬくもりがあった。立場が変わっても、姉妹の間に流れる空気はやはり特別だ。この作品は、ときどきこういう静かな場面が入るから、余計に胸に残る。
その一方で、ローゼマインの企み顔は今回もしっかり健在だった。
フェルディナンドから「プログラムの表紙に自分を使うなら事前に見せろ」と釘を刺される。そこでちゃんと版画タイプを仕込むあたりが、まず抜け目ない。だが、それで終わらないのがローゼマインである。さらに別口で、写実的なフェルディナンドのブロマイドを、エルビーラの協力のもと、こっそり売ろうと画策しているのだからたまらない。
このへん、本当に絶妙だと思う。
フェルディナンドに対して正面から逆らうのではなく、条件を守る顔をしながら、別の出口を探してしまう。しかもそれが単なる悪だくみではなく、印刷技術と販売戦略の実験にもなっている。ローゼマインの商人魂と出版人魂が、今回も見事に手を組んでいた。
ただし、第5回はそれだけの楽しい回では終わらない。
孤児院のダリアが育てているディルクの問題があり、見食いである彼の魔力を吸い出すためにタウの実が使われる。ここであらためて示されるのは、この世界の技術や資源が、ただ便利なものではなく、社会の根幹に触れてしまう危うさを持っているということだ。
タウの実の性質が貴族に知られれば、魔導具に頼る貴族社会そのものを揺るがしかねない。
さらに、孤児院の最高級紙であるトロンベ紙の材料が、魔力を吸ったタウの実から生まれる新芽であることも、また秘匿しなければならない。印刷が未来を切り開く一方で、その材料や技術の背後には、知られてはいけない危険な秘密がある。今回の回は、その光と影の両方をしっかり見せていた気がする。
だからこそ、第5回は“準備回”でありながら、かなり緊張感があった。
表向きにはフェシュピール・コンサートへ向けて華やかに準備が進む。けれど裏では、技術競争があり、販売計画があり、そして社会を揺るがしかねない秘密を抱え続けなければならない。ローゼマインたちはいつも、本を作るだけでは済まされない世界の中で、本の未来を少しずつ押し広げているのだと思う。
次回はいよいよフェシュピール・コンサート。
ここまで積み上げてきた準備や企みが、どんなふうに花開くのか。フェルディナンドはどこまで“商品化”されてしまうのか。そしてローゼマインの静かな革命は、またどこまで進むのか。次回も楽しみでならない。
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フェルディナンドが表紙を監修しても、ローゼマインの企みまで監修できるわけではない。その感じがとても楽しい第5回でした。次回のコンサートも楽しみです。
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