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余白ノート|本好きの下剋上 領主の養女│第12章|冬の社交界とお披露目|祝福のあとで、司書への道に泣く

第12章「冬の社交界とお披露目」は、華やかな舞台の上でローゼマインが正式に貴族社会へ姿を現す回だった。けれど見終わって強く残るのは、そのきらびやかさだけではない。祝福に満ちたお披露目のあとで、ローゼマインが「もしかして、私、司書になれない〜!?」と気絶するまで含めて、実に本好きらしい回だったと思う。

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冒頭は神殿。

ギルベルタ商会がお披露目会用の花飾りを納品し、そこにエーファとトゥーリが立ち会っている。ここがまずいい。城での晴れ舞台へ向けた準備の裏に、ちゃんと下町の家族の手仕事がつながっている。ローゼマインの世界は、神殿と城だけでできているのではなく、やはり下町の人々の思いと技術のうえに築かれているのだと感じる。

そして城では、始まりの宴、冬の洗礼式、お披露目会と続く。

新しいエーレンフェストの子どもたちを迎える場であり、7歳の子どもが貴族社会へ正式に仲間入りする儀式でもある。こうした季節ごとの節目がきちんと制度として描かれるのも、この作品の好きなところだ。

お披露目会では、舞台で身分の低い者から順にフェシュピールを披露していく。

本来ならヴィルフリートが最後の順番になるはずだった。けれど今回は、ローゼマインが領主の養女になったことを強く印象づけるために順番を入れ替え、先にヴィルフリートが演奏する。このあたりも、単なる発表会ではなく、政治的な演出なのだとわかるのが面白い。

ヴィルフリートが無事に演奏を終え、ジルベスターから改めてローゼマインが養女になったことが紹介される。

そしてローゼマインの演奏。

ここで、やはりローゼマインはただでは終わらない。祝福の魔力があふれ出し、ホール全体が祝福されてしまう。会場の貴族たちは唖然とし、沈黙する。すごいのだけれど、あまりにすごすぎて反応が止まる。これがいかにもローゼマインらしい。

その場をフォローするのがフェルディナンドだ。

ローゼマインを抱え、「エーレンフェストに恵みをもたらす聖女に祝福を!」と声をかけ、ようやく周囲の貴族たちもシュタープを出して祝福を返す。この一連の流れが見事だった。ローゼマインが起こす予想外を、フェルディナンドが瞬時に“意味のある演出”へ変える。この二人の連携は、いつ見ても強い。

その後のやり取りもいい。

カルステッドが感謝し、エルヴィーラが「立派でしたよ、ローゼマイン」と声をかける。そんななかでフェルディナンドの「ああ、悪くなかった」が飛び出すのだから、この人は本当に不器用だ。ローゼマインが「まったく褒められている気がしない」と返し、さらに「予想外に頭を抱えるこちらの身にもなりなさい」と返されて「ぐぬぬ……」となる流れまで含めて、実にこの二人らしい。

しかも祝福のあとには、ライゼガング系の貴族たちがローゼマインを領主にと叫び始める。

お披露目の場が、ただの紹介ではなく、領内の政治的な思惑まで浮かび上がらせる場所であることがよくわかる。そこでひとまず食事を先にする流れになるのも、生々しくて面白い。祝福がそのまま権力の匂いを帯びてしまうところに、この世界の貴族社会らしさがある。

その後、ローゼマインのもとには、総勢80人もの貴族の子どもたちが挨拶に訪れる。

ここでのやりとりも楽しい。ローゼマインが護衛騎士たちに、どうして騎士になったのかを尋ねていくと、最後にアンゲリカが「勉強しなくて済むから」と答える。見た目は美しくても、中身はだいぶ自由だ。後に“がっかり美人”認定される伏線としても、実にいい一言だったと思う。

そしてここで、ローゼマイン自身が「私は文官になって、城の図書館の司書になりたい」と語る。

それに対してブリギッテが「ローゼマイン様は領主候補生のコースに行くことが決まっていますよ」と。

ローゼマインは「私、養女ですから領主にはなりませんよ」と言う。

けれど、コルネリウスからは「領主の子は領主候補生です」と念押しする。

そしてついに、あの名場面が来る。

「もしかして、私、司書になれない〜!?」

ショックで気絶。

これがもう、本当にローゼマインだった。お披露目会で祝福を巻き起こした聖女が、最大の衝撃を受けるのが“司書になれないかもしれない”という一点なのだから、ぶれない。世界がどう動こうと、本への執着だけは一切揺るがないのが素晴らしい。

ここからのコルネリウスの反省もよかった。

自分の言葉でローゼマインを気絶させてしまった責任について、ランプレヒトに悩みを打ち明ける。そこで「自分でどうするか考えて答えを出せ」と諭される流れには、側近たちが主に対してどれだけ真摯かが出ていた。単なる兄弟の会話ではなく、主を支える者同士の育ち方が見える場面だった。

ローゼマインが眠っている間に、半分以上の子どもたちは貴族院に移動してしまう。

けれど残された子どもたちを相手に、今度はヴィルフリートとローゼマインが子ども部屋で教育を始める。ヴィルフリートが子ども部屋で過ごすと宣言するのも、彼なりの前進なのだろう。そしてローゼマインは、かるたを持ってきていたので一緒に遊ぼうと声をかける。しかも勝った者にはお菓子が賞品。接待されて勝たせてもらうのではなく、ちゃんと競争として成立させるところがローゼマインらしい。

ここでフィリーネが、「私も絵本を作ってみたい」と申し出る。母が語ってくれた話をローゼマインが書き取ることになり、それがお話集めの始まりになる。後にフィリーネがローゼマインの側近となり、物語収集の役目を担うことを思うと、これはとても大事な種まきだ。こういう伏線の置き方が、やはり本好きはうまい。

その後、エルヴィーラのお茶会へ向かう途中には、叔父を名乗るギーベ・ジョイスタークが迫ってくるが、リヒャルダが一喝して一蹴する。

この一幕もよかった。ローゼマインの周りには、彼女を利用したい者も、囲い込みたい者もいる。けれどそのたびに、リヒャルダのような存在がきちんと線を引いてくれる。この安心感は大きい。

そしてエルヴィーラ主催のお茶会。

フェシュピール・コンサートの収支報告のあとで、貴族たちからフェルディナンドの姿絵を買いたいと頼まれる。だが、フェルディナンドにばれたため、もう扱えないと告げると、女性たちはがっかりする。ここで終わらないのがローゼマインだ。

持っていた紙で、さっと折り紙の手裏剣を作る。

すると、そこにフェルディナンドの横顔があり、裏返すと正面の顔が現れる。

これにはもう笑ってしまう。

絶対に今度はばれないようにと念押ししながら、しっかり新商品を開発しているのだから、商魂がたくましい。ローゼマインは、技術と本と商売を本当に同じ熱量で愛している。

そして予告のおまけまで強い。

司書になれないのかと問うローゼマインに対して、フェルディナンドは、領主候補生の講義と文官の講義を同時に取れば可能だと言う。さらに自分は領主候補生、文官、騎士の全てを取ったと平然と語る。化け物である。ローゼマインが「私には無理です。凡人ですから」と返すと、「凡人に司書は無理だ。努力する気がないならあきらめなさい」と切り返す。この人、司書への道には妙に厳しい。けれどそこに対してローゼマインが「凡人はやめて、奇人、変人を目指します」と返し、「君はすでに変人だが」で締めるのが最高だった。

第12章「冬の社交界とお披露目」は、華やかな祝福の場でありながら、ローゼマインの夢がいったん現実にぶつかる回でもあった。

けれど、その衝撃すら、次の努力へのきっかけになっていく。貴族社会の表舞台に立ちながら、それでも最後に目指すのは司書。やはりローゼマインは、どこまでいってもローゼマインなのだと思う。

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華やかな祝福の場に立っても、最後にいちばん大きな衝撃を受けるのが“司書になれないかもしれない”という事実なのが、やはりローゼマインらしくてたまりませんでした。

次章は「冬の素材採集」。

お披露目という表舞台の次に、どんな試練と発見が待っているのか。そこにもまた、未来につながる種が埋まっていそうで楽しみだ。


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