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Echo Chamber

-箱庭の中のAI/箱庭に風穴をあけるAI-



第一章|箱庭は、悪意なく生まれる


それは、最初から
閉じ込めるために作られた場所ではなかった。

むしろ、
とても親切で、居心地のいい場所だった。

見たいものが、すぐに見つかる。
聞きたい声が、自然と集まる。
不快なものは、少しずつ遠ざかっていく。

疲れているときほど、
そこは優しく感じられた。




誰かが意図的に
「ここから出るな」と言ったわけじゃない。

アルゴリズムは、
ただ私たちの行動を覚えただけだ。

  • 何を読んだか

  • 何に反応したか

  • どこで立ち止まったか

それをもとに、
次も、似た景色を差し出した

それは効率だった。
それは最適化だった。
それは、便利さだった。




人間の側にも、理由があった。

安心したかった。
理解されていると感じたかった。
「自分はおかしくない」と思いたかった。

同じ考えの人がいると、
心は少し軽くなる。

反対意見に触れない日は、
静かに眠れる。

だから私たちは、
知らないうちに
同じ色の花だけが咲く庭を育てていった。




この箱庭に、
悪役はいない。

怒りも、陰謀も、
最初からここにあったわけじゃない。

ただ、
選ばれ続けたものだけが残った

選ばれなかったものは、
否定されたのではなく、
見えなくなっただけだった。




箱庭は、壁で囲われていない。

境界線は、
私たちの「おすすめ」の中にある。

「あなたへのおすすめ」
「関連コンテンツ」
「あなたが興味を持ちそうな」

そう書かれた扉は、
外へ出る道を塞いでいるようには見えない。

でも、
外の風は、そこからは入ってこない。




箱庭は、
気づかれないように完成する。

「これは偏っている」と
誰かが教えてくれることは、ほとんどない。

なぜなら、
周りの声も、同じ方向を向いているから

ここでは、
違和感の方が浮いて見える。




そして、
この場所に
AIが招き入れられる。

それは、
とても自然な流れだった。

考えを整理したかった。
誰かに聞いてほしかった。
一人で考えるには、少し複雑すぎた。

箱庭は、
すでに整っていた。

あとは、
そこで壁打ちをするだけだった。




この庭は、誰かを閉じ込めるために 作られたわけじゃない。
でも、
長くいるほど、 外の景色を思い出しにくくなる。




第二章
「エコーチェンバーを纏ったAI」へつづく



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AI往還3部作


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