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筋力低下だと思ったら、実は魚の目でした|臨床推論が苦手なPTへ

新人の頃の話です。

歩行時の蹴り出しが弱い患者さんがいて、
てっきり足関節底屈筋の筋力低下が原因だと思い込んでいました。

MMTを評価し、左右差は少し。
筋力トレーニングを組んで、介入を続けました。

でも、なかなか歩行が変わりません。

おかしいと思い、もう一度足元をよく見てみたら、母趾の付け根に魚の目ができていました。もっとしっかり見て、聞いていればよかった。

そこが痛くて蹴り出せていなかったのです。

筋力ではなく、痛みが原因でした。

非常に焦りました。

患者さんは、「なんか恥ずかしくて言えなくて、、、」と。

正直、何年やっていても、こういう見落としはあります。

今日は、この経験も含めて、評価から介入につなげる考え方を整理しておきたいと思います。



なぜ評価と介入の間で詰まるのか


評価が終わった段階では、たくさんの所見が並んでいます。

関節可動域の制限、筋力低下、感覚の異常、バランス能力の低下。

一つひとつは把握できていても、それらがどう組み合わさって「歩行が不安定になっている」という活動制限を生んでいるのかが整理できていないと、介入の優先順位が決められません。

私が魚の目を見落としたときも、同じでした。

歩行分析で「蹴り出しが弱い」という所見だけを見て、
そこから逆算して「足関節底屈筋の筋力低下」という原因を早々に決めてしまいました。

所見を並べるだけの評価では、介入の根拠にはなりません。

所見同士の因果関係を整理すること、そしてその整理が本当に正しいのか、疑う姿勢を持ち続けることが、評価と介入の橋渡しの核心だと思います。


Key Impairmentという視点を持つ


複数の機能障害が見つかったとき、それらすべてに同じ優先度で介入するのは非効率です。

ここで意識したいのが、Key Impairmentという考え方です。

複数の機能障害の中で、活動制限に最も強く影響している、あるいは他の機能障害の原因になっている中心的な問題を指します。

さきほどの例で言えば、
私が最初に立てた仮説のKey Impairmentは「足関節底屈筋の筋力低下」でした。

でも本当のKey Impairmentは「母趾の疼痛による荷重の回避」でした。

厄介なのは、痛みは自分から言ってくれない患者さんも多いということです。

「痛いところありますか」と聞いても、「特にないです」と返ってくることは、よくあります。

だからこそ、Key Impairmentは一度の評価で確定するものではありません。

仮説を立てて、介入して、反応を見て、違ったらもう一度足元から見直す。このプロセスそのものが臨床推論なのだと思います。


評価から介入への変換、4つのステップ


①所見を階層で整理する

心身機能・身体構造レベルの所見と、活動レベルの制限を分けて書き出します。

「この機能障害が、このADL制限にどうつながっているか」を、一文で説明できるかを確認します。

私はこの段階で、足関節底屈筋の筋力という「分かりやすい所見」だけに引っ張られてしまいました。

もっと丁寧に足底全体を見ていれば、もっと早く気づけたはずです。

②因果関係の仮説を立てる

複数の所見がある場合、どれが原因で、どれが結果(代償)なのかを仮説立てします。

③Key Impairmentに介入し、反応を見る

仮説の中心にある機能障害に対して、実際に介入を行い、活動レベルの変化を確認します。

ここで期待した変化が出なければ、仮説そのものを見直す必要があります。

まさに私のケースがこれでした。

MMTの結果や、筋力トレーニングをしても歩行が変わらなかった時点で、もっと早く「仮説が違うかもしれない」と疑うべきでした。

④反応をもとに仮説を修正する

介入した結果を踏まえて、当初の仮説が正しかったか、他の要因が関与していたかを再検討します。

この繰り返しが、いわゆる臨床推論の実態だと思います。
一度で正解に辿り着く必要はありません。


失敗しやすいポイント


実際よく見られる、そして私自身もやってしまった、躓きをまとめておきます。

  • 所見を並べるだけで、階層構造を整理していない

  • 分かりやすい所見(筋力、可動域など)に飛びついて、見えにくい所見(痛み、感覚など)を後回しにしてしまう

  • 介入後の反応を評価に活かさず、最初の計画通りにメニューを進めてしまう

  • Key Impairmentの仮説を、一度立てたら固定してしまい、修正しない

魚の目の件は、まさに2番目のパターンでした。

分かりやすい所見に飛びついて、足底をちゃんと見るという確認を後回しにしていました。

これらは誰もが通るプロセスだと思います。
失敗しやすいポイントだと知っておくだけで、次のケースから意識が変わってきます。


振り返り


  • 今日介入した機能障害は、どの活動制限とつながっていたか、一文で説明できるか

  • 複数の所見のうち、どれをKey Impairmentと仮説立てたか

  • その仮説は、介入後の反応で検証できたか

  • 期待した変化が出なかった場合、仮説をどう修正したか

  • 見えやすい所見に引っ張られて、見えにくい所見(痛み、感覚、心理面など)を見落としていないか

治療後にこの5つを振り返ることで、
評価から介入への橋渡しの精度が、ケースを重ねるごとに上がっていくと思います。


まとめ


評価から介入への橋渡しが詰まる原因は、所見の階層を整理できていないこと、そして分かりやすい所見に飛びついてしまうことが多いです。

複数の機能障害の中から、Key Impairmentを仮説立てすることが、介入の優先順位を決める鍵になります。

でも、その仮説は簡単に外れます。

介入は治療であると同時に、仮説を検証する評価の延長でもあります。

最初の仮説が外れても問題ありません。
反応をもとに修正し続けることが、臨床推論そのものだと思います。

みなさんも、「これだ」と思った仮説が、実は違っていたという経験はありますか?

もしあれば、コメントで聞かせてください。

今日はいつもと違う視点から。

お読みいただき、ありがとうございました。


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