マイケル・ポランニー『暗黙知の次元』|自分の仕事を説明できない人へ
水曜日の夕方、「なぜそう判断したのですか」と問われて言葉に詰まる。あなたが説明できないのは、能力がないからではありません。説明できるものだけを能力と呼ぶ、その物差しが浅いのです。
どんな気づきも、日常の忙しさに流されると人は少しずつ忘れてしまいます。だからこそ、思考は「毎日」読んで定着させる必要があります。同調圧力に負けない自分を維持するため、このNoteを毎日の習慣にしてください。
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【翻訳】マイケル・ポランニー
水曜日の夕方ほど、輪郭のない時間はありません。月曜の緊張はすでに緩み、金曜の解放はまだ遠い。そんな日の面談や打ち合わせで「なぜそう判断したのですか」と問われ、うまく答えられなかった経験はないでしょうか。
判断そのものは正しかった。結果も出ている。それなのに理由を言葉にしようとすると、後から取ってつけたような、自分でも嘘くさく感じる説明しか出てこない。そして相手は、ほんの少しだけ残念そうな顔をする。まるで、説明できない仕事は、していないのと同じであるかのように。
私は今、マンチェスターの古い工業地帯にほど近い図書館で、この文章を書いています。煤に染まった赤煉瓦の建物が、雨に濡れて黒く光る街です。かつてこの街に、自分の正しさを説明しきれなかった1人の科学者がいました。
マイケル・ポランニー。1891年、ブダペスト生まれ。医学と化学の博士号を持つ物理化学者であり、生涯の終わりには哲学者と呼ばれた人です。
「私たちは、言葉にできるより多くのことを知ることができる」
1966年の著書『暗黙知の次元』(高橋勇夫訳、ちくま学芸文庫)で、彼が最初に置いたのがこの一文でした。暗黙知という言葉は、ここから世に出ています。
彼が挙げた例は、驚くほど平凡です。私たちは知人の顔を、100万人の中からでも見分けることができる。しかし、なぜ見分けられるのかを言葉で説明することはできません。目の間隔でも、鼻筋の角度でもない。それらすべてを使っているはずなのに、使っている内訳を語れない。それでも、私たちは確実に「知っている」。
説明できないのに、知っている。この当たり前すぎる事実を、ポランニーは生涯をかけて弁護しました。
なぜ、そこまでしたのか。理由は、彼自身が受けた屈辱にあります。
1914年、まだ20代前半だった彼は、気体が固体の表面に引き寄せられる現象について、ある理論を書きました。吸着のポテンシャル説と呼ばれるものです。1916年には実験による裏づけを添えて、それを完成させます。
そしてベルリンのカイザー・ヴィルヘルム物理化学研究所で、所長フリッツ・ハーバーに請われ、彼はその理論の全面的な弁明を行いました。居並ぶ聴衆の中には、アインシュタインもいたと伝えられています。空中窒素固定でノーベル賞を受けた化学者と、20世紀最大の物理学者。若い研究者にとって、これ以上の晴れ舞台はありません。
下された評価は、物質の構造について科学的に確立された知見を、まったく無視している、というものでした。
彼の理論は、その後およそ50年にわたって正当に扱われませんでした。潮目が変わるのは1930年、フリッツ・ロンドンが量子力学によって分子間に働く力を説明してからです。今日、シリカゲルや活性炭が匂いを吸い取る仕組みを語るとき、私たちは彼の見立ての上に立っています。
つまり彼は、正しかった。にもかかわらず、当時の言葉では、自分の正しさを最後まで説明しきれなかったのです。
ポランニーがこの一件を自分で書き残したのは、1963年、72歳のときでした。 米国の科学誌サイエンスに寄せたその文章の副題は、科学における権威には効用もあれば危険もある、という意味の言葉です。恨み言ではありません。彼は、自分を潰した構造そのものを解剖しにいきました。
実験室から哲学へ移った理由は、ここにあります。説明できるものだけを知識と呼ぶ制度は、その制度より先を行った人間を、必ず一度は殺す。 彼はそれを、他人の伝記ではなく自分の身体で知ってしまったのです。
水曜日の夕方、あなたが言葉に詰まったあの数秒間は、能力の欠落ではありません。むしろ、あなたが何かを本当に使えている証拠かもしれない。
ここから先では、この暗黙知という概念を、あなたの手元に持ち帰れる道具へと翻訳していきます。あなたが説明できないものの正体は何なのか。それを壊さずに扱う具体的な手順。そして「説明できない自分こそ正しい」という、甘く危険な居直りに落ちないための線引き。極めて実践的なハッキングについて、より深く翻訳していきます。
この先を読むかどうかで、明日の朝、あなたが自分の仕事をどう見るかが変わります。焚き火のこちら側で、続きをお待ちしています。
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