【図解】脱炭素の切り札「グリーン水素」:2034年に275億ドル市場へ拡大する日米サプライチェーン
この記事でわかること
脱炭素化の鍵を握る「グリーン水素」の基本と注目される理由
グリーン水素のサプライチェーン全体像と、日米企業の具体的な役割
今後の市場拡大を後押しする政策や技術トレンド
最近、グリーン水素のニュースをよく見かけるようになりました。脱炭素の文脈で重要だと聞くけれど、具体的にどんな企業が、どうつながって動いているんだろう?と自分用に図解して整理しました。日米企業の意外な連携も見えてきて、とても面白かったので、皆さんと共有できたら嬉しいです。
今日のテーマ:なぜ今グリーン水素が注目なのか
世界中で脱炭素化の動きが加速する中で、今、「グリーン水素」に大きな注目が集まっています。これは、再生可能エネルギー由来の電力を使って水を電気分解し、製造される水素のこと。製造過程で二酸化炭素を排出しないため、カーボンニュートラルな次世代エネルギーとして期待されているんです。
特に米国では、政府が強力にこの動きを後押ししています。
インフレ抑制法(IRA)では、クリーン水素の生産に対して最大1kgあたり3ドルという手厚い税額控除が導入されました(出典:gh2.org)。さらに、エネルギー省(DOE)は95億ドル規模の「クリーン水素イニシアチブ」を展開し、国内に水素ハブを構築する構想を進めているんですよね(出典:gh2.org)。
こうした政策的な追い風もあって、世界のグリーン水素市場は急速な成長が見込まれています。2025年には約19.2億ドルだった市場規模が、2034年にはなんと275.2億ドルにまで拡大する予測。年平均成長率は34.74%にも達する見込みなんです(出典:参照元)。
特に、鉄鋼や化学といった産業分野や、長距離輸送、船舶・航空機といったモビリティ分野での需要拡大が期待されています。
「グリーン水素」サプライチェーン徹底解説
グリーン水素のサプライチェーンは、大きく「川上」「中流」「川下」の3つの段階に分けられます。このエコシステム全体で、多くの企業がそれぞれの役割を担い、つながりながら動いているんです。

世界のグリーン水素市場は、2034年に275.2億ドル規模に達すると予測されています(出典:参照元)。この巨大な市場を支える各段階を見ていきましょう。
川上:再生可能エネルギーによる電力供給
グリーン水素の「グリーン」たる所以は、製造に使う電力が再生可能エネルギーであることです。そのため、サプライチェーンの最も川上には、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギー発電所が位置します。
これらの発電所が、水を電気分解するためのクリーンな電力を供給するわけですね。2026年には、太陽光発電による電気分解が市場シェアの54.94%を占めると予想されており、製造コスト削減の鍵を握っています(出典:参照元)。
この段階で直接的に動いている企業リストは今回ありませんが、再生可能エネルギー発電事業者が重要な役割を担っています。
中流:生産、処理、貯蔵、流通、主要技術開発
川上で作られた電力を使って、実際に水素を製造したり、貯蔵・輸送したりする段階が「中流」です。ここには、電解装置のメーカーから、水素の液化・貯蔵・輸送インフラを構築する企業まで、幅広いプレイヤーがいます。
🇺🇸 代表的な米国企業
Linde plc(LIN) ― 水素バリューチェーン全体をカバー
産業ガス大手のリンデは、クリーン水素の大規模な生産、加工、貯蔵、流通ソリューションに積極的に投資し、開発を進めています。この分野で主導的な地位を築いている企業の一つです(出典:参照元)。
Plug Power(PLUG) ― 水素エコシステムを包括的に構築
プラグパワーは、水電解装置の製造から水素の液化・貯蔵・輸送、さらには燃料電池システムまで、水素バリューチェーン全体をカバーするエコシステムを構築しています。ルイジアナ州の製造施設が完成し、展開を加速しているのが話題です(出典:参照元)。
Cummins(CMI) ― 電解槽開発でグリーン水素市場へ進出
エンジンメーカーとして知られるカミンズですが、ニューパワー部門で電解槽の開発を積極的に推進し、グリーン水素市場への進出を目指しています。シェブロンとの提携も強化しているんですよね(出典:参照元)。
🇯🇵 代表的な日本企業
三菱重工業(7011.T) ― 大規模な水素貯蔵技術とグリーン水素・アンモニア開発
三菱重工業は、米国ユタ州で進められている大規模水素貯蔵プロジェクト「Advanced Clean Energy Storage」に貢献するなど、グリーン水素の社会実装に力を入れています。水素とアンモニアのバリューチェーン全体での技術開発と事業展開を進めているんです(出典:参照元)。
岩谷産業(8088.T) ― 水素サプライチェーン構築と水素ステーション整備
日本でいち早く水素ビジネスを手掛けてきた岩谷産業は、川崎重工業と組んで豪州でのグリーン水素サプライチェーン構築に着手しています。また、トヨタとカリフォルニア州で水素ステーション整備計画を進めるなど、国内外で水素インフラの整備をリードしている企業です(出典:参照元)。
ENEOSホールディングス(5020.T) ― 水素キャリア製造・輸送技術開発と海外プロジェクト
ENEOSは、水素を効率的に貯蔵・輸送するための「MCH方式」といった水素キャリア技術の研究開発に注力しています。豪州、東南アジア、中東でのグリーン水素製造・輸送プロジェクトにも参画し、既存の石油インフラを活用して効率的なサプライチェーン構築を目指しています(出典:参照元)。
川下:利用と最終製品
製造・貯蔵・輸送されたグリーン水素は、最終的に様々な分野で利用されます。これがサプライチェーンの「川下」です。
🇺🇸 代表的な米国企業
FuelCell Energy(FCEL) ― 定置用燃料電池発電所と水素製造装置
フューエルセル・エナジーは、クリーンエネルギーの定置用燃料電池発電所を提供しています。また、固体酸化物形水電解装置による水素製造も手掛けており、大規模な水素製造システムの開発を進めているんです(出典:参照元)。
Bloom Energy(BE) ― 固体酸化物形燃料電池(SOFC)のリーダー
ブルームエナジーは、固体酸化物形燃料電池(SOFC)の分野でリーダー的存在です。データセンターや商業施設向けの分散型電源プラットフォームとして広く採用されており、AIによる電力需要増加を背景に、さらに注目を集めています(出典:参照元)。
🇯🇵 代表的な日本企業
今回は川下で直接的に挙げられる日本企業はありませんでしたが、多くの日本企業が燃料電池車の開発や、産業用途での水素利用技術開発を進めています。
市場全体から読む
グリーン水素は、世界の脱炭素目標達成に不可欠なピースとして、その重要性を増しています。市場の成長予測は非常に力強く、2034年には275.2億ドル規模に達すると見られています(出典:参照元)。
米国政府のIRAによる1kgあたり3ドルの税額控除や、95億ドル規模のクリーン水素イニシアチブは、グリーン水素のコスト削減と商用化を強力に後押しするでしょう(出典:参照元)。こうした大規模な政策支援は、初期段階の市場形成において非常に重要です。
また、2026年にはサウジアラビアのNEOMグリーン水素プロジェクトが年間25万トンの生産を開始するなど、世界各地で大規模な製造施設が稼働する予定です(出典:参照元)。これは、グリーン水素が絵空事ではなく、現実のエネルギーソリューションとして着実に進展していることを示しています。
グリーン水素の製造コストを下げるためには、再生可能エネルギー発電のコスト低下と、水を電気分解する技術の進歩が不可欠です。特に太陽光発電による電気分解は、2026年には市場の54.94%を占めると予測されており、この分野の技術革新が注目されます(出典:参照元)。
また、水素の貯蔵や輸送の課題解決も重要です。軽量性、高圧対応性、耐食性に優れた炭素繊維複合材料製の圧力容器の採用が拡大しており、次世代技術としてType Vなども注目されています(出典:参照元)。
ここから先は私の推測ですが、IRAやDOEの強力な政策支援は、グリーン水素の商用化を加速させる上で非常に大きなドライバーになりそうだと感じます。特に、コスト競争力が高まれば、さらに多くの産業で導入が進むのではないでしょうか。
個人的には、太陽光発電と電解技術の進歩が、グリーン水素の経済性をさらに高める鍵を握っていると考えています。これらの技術が成熟すれば、グリーン水素は化石燃料に代わる主要なエネルギー源として、より現実的な選択肢になるかもしれません。水素キャリア技術や貯蔵・輸送技術の進化も、普及には欠かせない要素ではないでしょうか。
まとめ
事実の整理
グリーン水素は、再生可能エネルギー由来の電力で製造され、脱炭素化の切り札として注目されています。
米国では、インフレ抑制法(IRA)による税額控除や、エネルギー省(DOE)による大規模なイニシアチブが導入され、市場拡大を強力に後押ししています。
世界のグリーン水素市場は、2034年には275.2億ドルに成長すると予測されており、特に産業用途や輸送分野での需要拡大が見込まれています。
サプライチェーンは、再生可能エネルギーによる電力供給(川上)から、水素の生産・貯蔵・輸送(中流)、そして利用(川下)まで多岐にわたります。
Linde、Plug Power、Cumminsといった米国企業や、三菱重工業、岩谷産業、ENEOSホールディングスといった日本企業が、それぞれの領域で技術開発や社会実装を推進しています。
製造コスト削減には、再生可能エネルギー発電コストの低下と電解技術の進歩が不可欠であり、貯蔵・輸送技術の進化も重要です。
私の見方
グリーン水素は単なる燃料というだけでなく、エネルギーシステム全体の変革を促す触媒的な存在だと見ています。
政府の強力な支援は、初期投資のリスクを低減し、技術開発とインフラ整備を加速させる上で非常に効果的だと感じます。
再生可能エネルギーのコスト低下と電解技術の進化が、今後のグリーン水素普及を左右する重要な要素になるでしょう。
貯蔵・輸送技術の標準化と効率化が進めば、国際的なサプライチェーンの構築もより現実的になるのではないでしょうか。
日米の企業がそれぞれの強みを活かして連携することで、グローバルな脱炭素化に大きく貢献する可能性を秘めていると思います。
参考:今回登場した注目企業(日米)
※市場の注目度・話題性の観点で挙げた参考情報であり、売買推奨や順位ではありません。
Linde plc(LIN) ― 水素バリューチェーン全般をリードし、大規模な生産・加工・貯蔵・流通ソリューションを展開
Plug Power(PLUG) ― 水電解装置から燃料電池まで、水素エコシステムを包括的に構築
FuelCell Energy(FCEL) ― 定置用燃料電池発電所と固体酸化物形水電解装置による水素製造を提供
Bloom Energy(BE) ― 固体酸化物形燃料電池(SOFC)のリーダー、分散型電源でAI需要にも貢献
Cummins(CMI) ― 電解槽開発と商用車用燃料電池システムでグリーン水素市場へ進出
三菱重工業(7011.T) ― 大規模水素貯蔵技術とグリーン水素・アンモニア開発を推進
岩谷産業(8088.T) ― 水素サプライチェーン構築と水素ステーション整備を国内外で展開
ENEOSホールディングス(5020.T) ― 水素キャリア技術と海外グリーン水素製造・輸送プロジェクトに注力
グリーン水素の未来は、多くの技術革新と国際協力にかかっています。日々のニュースを追いながら、この大きな流れを一緒に見ていきましょう。
【免責事項】
本記事は公開情報に基づく情報提供であり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。当メディアは投資助言・代理業の登録を受けておらず、個別の投資助言は行いません。記載の企業は市場で話題という事実や役割の紹介であり、売買推奨ではありません。本文中の予想・見解の部分は筆者個人の見方であり、将来を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任で。出典は併記していますが正確性・完全性を保証しません。株価ページへのリンクは価格確認のためで売買推奨ではありません。

