天罰くらいひどかった14世紀の災害
『死の舞踏』の世紀。天災が多発して、ヨーロッパでは人口が3分の1にまで減ったとされる恐怖の時代。しかし、そんな災害に見舞われていたのはヨーロッパだけではなかった。
14世紀の極大災害の予兆は13世紀からはじまっていたという研究者がいる。13世紀に起きた未知の大噴火が、その後の小氷期の到来をもたらしたのではないか、と。だが、記録に現れる本格的な災害は14世紀の初頭にはじまった。
1303年、ロードス島でマグニチュード8クラスの地震が発生し、地中海に面したエジプトの都市アレクサンドリアが大きな被害を受ける。ついでに、ピラミッドの表面の化粧石も崩れ落ちたという。
同年、クレタ島でもマグニチュード8クラスの地震が発生。
また、同年9月には、中国でこれまたマグニチュード8クラスの地震が発生。数十万人の死亡者が出る被害を受けた。
ここまでが準備運動である。
ここから助走の段階に入る。
1315年、小氷期が到来する。作物は実らず、ヨーロッパで大規模な飢饉が発生する。この時にすでに人口の3分の1が亡なくなっていたと言う研究者もいる。
さらに、1323年にはエジプトで世界7不思議の一角であるファロスの灯台を破壊した大地震が発生する。
その翌年、マリの王様マンサ・ムーサがメッカ巡礼の途中でエジプトを通過して大量の金をばらまき、カイロでは金価格が暴落するという災難も発生。
これで助走が完了。ここからが本番である。
1331年から1334年の間のどこかで、中国河北省杭州で大規模な旱魃と飢饉ののち、疫病により人口の9割が死亡するという異例の事態が起きる。
その後、中国からヨーロッパにかけての広い範囲で3年にわたり大規模な蝗害が発生。イナゴの群れに襲われた地域の穀物は食い荒らされ、飢饉が発生。
こんな時に、1337年、イギリスとフランスは英仏百年戦争を開始。
はっきりとした年は不明だが、中国の岷山山脈で地震ののち大規模な山体崩壊が起こり、周囲550kmを越える湖が形成され、チェ(場所を特定できなかった)では5百万人以上が死亡したとされる。
1338年から1339年にかけて、キルギスのイシク・クル湖近くのネストリウス教徒商人社会が疫病で全滅する。
インドから中東にかけての地域も疫病により人口が激減。
1342年にはドイツから北イタリアまで広がる「マグダラのマリアの洪水」が発生。
そして、いよいよクライマックス。
1346年、クリミアのカッファを包囲していたモンゴル軍兵士が戦闘中に倒れて即死するという謎の大量死事件が発生。なお、死体はカッファの町に投げ込まれた。
1347年、ペストと呼ばれる謎の死神がヨーロッパに上陸。数年かけてヨーロッパ人の人口を激減させる。とくに地中海沿岸地域の被害が大きい。とばっちりでユダヤ人が迫害を受け、多数殺害される。
1348年、1月、ヨーロッパ中央部で大地震が発生。地面から悪臭が漂い、地面から火が噴き出す。塩鉱近くでは地下から立ち上った高温の蒸気によって、牛や人が石化する事案が発生。
同年、ドイツでは血の雨が降り、さまざまな異常な天体現象が記録される。
同年、インドと中国の間で3日間の破壊的で意味不明な嵐が発生。雪のように降り注ぐ火によって町も人も焼きつくされる。海からの異臭によって海岸線一帯が汚染される。(詳細⇒⇒想像を絶するナニコレな大災害)
同年、エジプトで黒死病が発生。災害は7年間も続いた。カイロの死者は90万人にも達したとされる。
まだ終わっていない。ここからはもう追い打ち。
1356年、スイスのバーゼルで地震発生。バーゼル市は完全に壊滅する。
1362年、1月、第2マルセラスの洪水が発生。これは高潮によるものだとされる。イギリス・オランダ・ドイツ・デンマークにかけての広い範囲が被災する。
……と、以上のように、14世紀はなかなか悲惨な世紀だったわけだ。
ここに書いていない災害もまだまだある。読んでいてお気づきだろうが、ペスト、またの名を黒死病がヨーロッパの人口を3分の1にまで激減させた、という認識は妥当ではない。寒冷化と飢饉、それから大地震の連発により、もうかなりの人口が減っている。疫病というのは、たいてい寒冷化と飢饉や災害とセットでやってくる、それらの「結果」のようなものだ。
それに、当時の文献を読むと、やたらと「異臭が」「瘴気が」と海から吹き付ける異臭のする風を気にしている。14世紀の海では何が起こっていたのだろう?
ペストとは、黒死病とは、いったい何だったのか。
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