『HUNTER×HUNTER』王位継承戦考察─ヨークシン逆回転と選挙編の発展、個のバトルから制度のゲームへ 総論 part I(33–34巻)
本稿は『HUNTER×HUNTER』33巻以降を初読した際のメモを軸に再整理したものです。精緻な結論を提示するものではなく、読書過程で生じた直感と推論の軌跡を可視化することを目的とします。1〜32巻分のノートもありますが、現在もっとも関心が集まる「王位継承戦編」に焦点を当てます。文章で進めるので33-34,35-36,37-38という構成軸で3本にわけます。
キメラ=アント、ヨークシンは王位継承戦が終わり次第、まとめる予定です。
33巻
・整理1
カキン王国に至るまでの権謀術数、王位の継承、暗黒大陸の部分的真相とジンとパリストンのせめぎ合い、クラピカの「護衛」における任務の始まり、一二支んの欠員をレオリオとクラピカが埋めるという形式、冒頭の主人公の紹介ページでついにゴンが主人公と明記されなくなり前巻においてようやくゴンとキルアの話は終わったんだという印象。
9割型、王位継承戦・暗黒大陸編にはこの2人は絡んでこない。暗黒大陸編は「ナニカ」を軸に動くこともあるが、王位継承戦においては、レオリオとクラピカの知略物語であることは確か。そもそも、なんでここにきて王位継承戦をやるのかといえば、キメラアントが暗に動線として動いていたというのも勿論そうだが、冨樫は間違いなくドライブ感と大枠だけを決めた上でライブ感でかいているからこそ、考えられる傾向としては、「「キメラアント」で王様の話をしたのだから、人間社会における王の話を、暗黒大陸編と絡ませて描くことでクラピカを登場させることの必然性を「緋の目」を交渉材料として入れることで主人公が不在な故、真正面から切るキャラクターではないクラピカを読者的に違和感のない形でインサートさせることがまずにあった。こうすることでクラピカ自身は興味がないが暗黒大陸編とキャラクターを持っていけるという運びをしている。
・整理2
V5→V6という過程で要はここで大事になってくるのは過去に5回臨んで変なものを人間界に取り入れてしまったという事実。まずはここだけに注目して考えてみる。兵器ブリオン、殺意伝染のヘルベル、欲望の共依存のアイ、快楽と命の等価交換パプ、底なしの希望を語る絶望のゾバエ病が持ち込まれているという点。ここで親切なのは空白ページでナニカが「暗黒大陸出身です」と書いてあること。つまりこの段階で確定したことは、選挙編の裏テーマであった「アルカ=ナニカ編」の段階で人間社会において、トップハンターやイルミでさえも恐ろしいと感じていた点で、この段階でパワーバランスが崩れているというのが正直なところ。つまりナニカを恐れている状態で、さらに暗黒大陸の厄災を考えると完全に33巻以前以後で『HUNTER×HUNTER』は別の作品となっている、あるいは視点切替では済まされないほどの大規模な世界拡張をしている。ここまでくるともう「幻影旅団」とかも総和的に言えば「ああ、人間社会におけるチンピラ集団ね」くらいのものにしかならない。故にここら辺をまとめると、ゾルディックは「ナニカ」を動線にしない限り、入り込む余地がなく、幻影旅団ももうつけ入る隙間がそこまであるとは思いにくい。
・整理3
カキン王国における「王位継承戦」の意義
とはいっても、本線が「暗黒大陸編」であるが故に、第四王子と第九王子は要とはなるが、誰が継承しても暗黒大陸ではそういった概念が通じない世界だから、延々細かく描いているが重要なのはどう王子を勝たせるのかではなく、継承戦の本質は「暗黒大陸に行くための前振り」でしかない。つまり、王位争いがどう決着しようが、暗黒大陸編では関係なくなる可能性が高い
•王子たちは、「人間社会の王を描く」ための駒であり、物語の最終的な主役ではない
継承戦は「システムの崩壊」が本質的なテーマ
•王子が誰か勝つというよりも、「王制そのものが崩壊する可能性」がある
•「王の座」に誰かが座る話ではなく、「王という制度」が成り立たなくなるかもしれない
制度問題として一種のマグナカルタ的なものの導入があっても変ではない。つまり、継承戦の終着点は、「新しい国家体制の確立」に繋がる可能性がある。暗黒大陸編が進むと、「V6協定」が崩れ、新たな世界秩序が生まれる可能性もある。
•ライアーゲーム的な「ゲームのルールそのものが破綻する」展開というのも十分にあり得る。(恐らく一番現実的)
クラピカは「単なる護衛役ではなく、継承戦の構造を変える役割 になる可能性」
クラピカは「王子の護衛」を経て「王という制度そのものを揺るがす」かもしれない
•第四王子ツェリードニヒが実力的に最有力でも、それで決着するとは思えない。これを反転すると「強者が勝つ」ではなく、「そもそも王が不要になる」可能性がある。具体的に掘り下げてみよう。
「最強の王子が生き残るのではなく、最もルールを利用した者が勝者になる可能性がある」
『ライアーゲーム』の椅子取りゲームのように
→ 「生き残った最後の者が自動的に王になる」というルールならば、第四王子が最後に座れない展開もあり得る
「第四王子が「勝ったはずなのに王になれない」可能性」
→ 「王制を決めるゲームだったはずが、「ゲームが終わったら椅子そのものが消えていた」 というオチがあり得る
=「王座に就くこと自体ができなくなる」
【筆者仮説】
第四王子は、「圧倒的な戦力」持ちながら、「政治的に敗北する」可能性が高い」
戦いとしての勝者ではなく、「制度としての勝者」が別にいる展開もあり得え、それが第九王子である可能性は言わずもがな。
・歴史的なアナロジーとしてみたときの「王位継承」
スコットランドにおけるヘンリー→エドワード黒太子→リチャードという構図
王位継承戦の構造は、「ヘンリー(先王) → エドワード黒太子 → リチャード(継承者)」といった中世ヨーロッパの王族の流れに近い。
エドワード黒太子はクラピカなのか?問題
「王にはならなかったが、戦争と政治の中心にいた影の支配者」→ クラピカは「王族ではないが、王位争いに深く関与する存在」
【筆者仮説】
本人が王位を目指しているわけではないが、王族の争いに大きく関わる
→ クラピカは継承戦の当事者ではないが、護衛として中心にいる
→ エドワード黒太子も王ではないが、王権を支える最重要人物だった
「復讐と正義を背負いながら、争いの中心にいる」
→ クラピカはクルタ族の復讐と、目の奪還を目的にしているが、
→ その過程で「継承戦の中心人物」として影響を与えている。
「短命な英雄としての立場」
→ エドワード黒太子は王位を継ぐ前に病死している。
→ クラピカも短命設定(寿命を縮める能力を持つ)ため、
→ 彼が最後まで生き延びられない可能性が示唆されている?→これはアナロジー抜きに展開としてあり得そう
・整理4
「暗黒大陸編」
これは、ある意味で分かりやすい話である。少なくとも今行っている王位継承戦よりかは、単に化け物が多い世界に行きますよっという、クトゥルフ神話における未知の脅威を描いたものであってパッと言えば『ベルセルク』の世界が外の向こうにはありますというだけの説明しかされていないが読みやすさはある程度軽減されるはずである。
・世界観について
これはメタな視点で逆説的に事実並べて反転させることで「この展開はない」という論法なので若干大局的な目線になるが、これってやっぱりクラピカが出て来たことが大きいというのは暗黒大陸編までひきづると思う。
思い返して欲しいのは、初期に冨樫がクラピカとセンリツのモデルは『風の谷のナウシカ』における王蟲とその沈静化をさせる点に由来している。言葉遊び的にも、王蟲がクラピカのモデルとあるとすれば、以下の含みが出てくる。
クラピカのモチーフが王蟲(『風の谷のナウシカ』)」
・ナウシカの元ネタが『DUNE』『地球の長い午後』」
つまり、クラピカの「存在意義」を考えると、彼が異質な生命圏を理解できる唯一の存在になる可能性がある?
ここに来て新しい役割を提示させるのも手法としてはありなんじゃないか→旅団が薄いから
クラピカは、「人間と異質な生命体の間に立つ存在」になれるか?
王蟲がナウシカを認めたように、クラピカも暗黒大陸の理を知る者になる可能性はあるのか
以上を考えてみると、クラピカは
・人間の社会の枠組み(幻影旅団との因縁)に囚われている
・だが、彼は「緋の目」という異質な能力を持つ
・ 暗黒大陸で、新たなアイデンティティを得る可能性がある?
【筆者仮説】
もしそうなら、クラピカは王蟲のように暗黒大陸と共存する存在になれるかもしれない
そしてここからSF的な話に囲っていくと『HUNTER×HUNTER』の場合間違いなく50年代から70年代SFの想像力以外は描かない。つまりサイバーパンク以後、ポストヒューマン、AIの路線では文明レベルでそんなものは描いていないのでそこに踏み込むことは万が一にも考えにくい。そうなると、現時点で発覚している60年代SFから70年代SFの想像力に基軸をおいている可能性が高いし、冨樫は1960年代生まれだからちょうど読み物としてその手のものを大量に摂取する事ができる世代だし、だからこそその手のテーマというのに馴染み深い→キメラアントがそうであったようによくできたSFをかける能力は証明済み。と、なるとルグィンのような両性具有的な異星人やハインライン型の展開もあり得る。ロバート・A・ハインラインの作品は、地球とは異なる文明・異なる価値観を持つ知的生命体との遭遇」を描く異星人との交流を通じて、人間とは何か? を問う
・暗黒大陸には、すでに五大厄災という人類の価値観を超えた存在がいる
・ しかし、もし知的生命体として人間と会話できる異星的な存在がいたら?→ドン・フリークスで回収できる
人類は暗黒大陸で支配者になれるのか?それとも、知的生命体の中での下位存在になるのか?
もし冨樫がハインライン的なアプローチを取るなら、「暗黒大陸の住人との接触を通じて、人類とは何か?を問い直す話になる」→これは、すでに「キメラアント編」でやっていることでもある。人類が知的生命体のトップであるという前提が崩れる展開→再演故に可能性は低い。ハンターたちがハンティングする側ではなく、狩られる側になる可能性→蝕
アーシュラ・K・ル=グウィンといえば、サブテキストとして使えるのは両性具有の種族を描いた『闇の左手』、完全に異なる社会制度を持つ異星人を描いた『所有せざる人々』もし暗黒大陸に価値観の異なる人類、または両性具有の知的生命体がいたら?人間社会の常識が全く通じない世界が広がっている可能性もありえる。
例えば、「暗黒大陸には男女という概念がない生命体がいる?」人間が当たり前に思っている個人の意識すら異なる可能性?→常識が通じない個体群もしそうなら、ハンターたちが直面するのは未知の生命ではなく未知の価値観になる?
それに暗黒大陸にいる存在は死の概念がない暗黒大陸の生命体は個ではなく群れとして生きている→聖書におけるレギオン的な着想として『ガメラ2』として読める。
【筆者仮説】
暗黒大陸の知的生命体は人類と融合することを求めている?→『DUNE』における砂虫とレト2世の融合で六千年の治世があったように
これが『闇の左手』的な発想なら、人間とは何か?性とは何か?自己とは何か?という主題になる。
宮崎駿が大好きな自己・アイデンティティの存在定義と確立が問われる可能性がある。
これはまさに「ハンターたちが本当にハンターとしての役割を果たせるのか?」 という話につながる。
ドン=フリークスが書いた「東の探索記」には、もしかすると異文明との接触が描かれている?
見つかっていない西の探索記が見つかることで、異文明の全貌が明かされるのかどうか。
暗黒大陸のどこかにドン=フリークス本人が生きていたら?→あり得る展開
そして、彼自身が異文化の一員になっていたら?→『異星の客』
さらに「西が未発見」という形で空白が与えられている。冨樫は空白を物語の核にする癖がある
ベンフォードやブリン的な路線も考えられなくはない。つまり、グレゴリイ・ベンフォード的「時間と人類の進化」
『暗黒大陸』は、ベンフォードの「時間的進化」や「人類が未知の環境に適応する物語」に似ている。
「人類の歴史の外側にあるものが、文明に決定的な影響を与える」
「科学的な根拠を伴わない異質なものが人類の運命を左右する可能性」
『HUNTER×HUNTER』のキメラアント編においては、蟻が急速に知性化し、人類と対等どころか凌駕する。
つまり「外部からの進化圧」こそが冨樫がすでにやったテーマ。ここを踏まえて暗黒大陸を読むのはハズレではない。
これは、「五大厄災」 や 「ドン=フリークス」 の設定に極めて近い。もし「東と西が揃ったときに何かが分かる」というのが伏線なら、人類の歴史そのものが、ある目的のためにデザインされている可能性すらある。
・時間の流れが通常と異なる暗黒大陸
・知的進化を超えた先にある未知の存在
・ドン=フリークスの千年以上生きているという設定は、ベンフォードの時間SFの文脈にあるという見立てもできる。
【筆者仮説】
暗黒大陸では時間の流れが通常と異なる可能性が示唆され、さらに人類の知的進化を越える存在が示されている。『東の探索記』の著者ドン=フリークスについても、「数百年前の人物とされるが存命の可能性がある」という扱いがあり、これはベンフォード的な「時間SF」の文脈(人類史の外側スケールでの叙述)に接続して読める。
・暗黒大陸にある未知の技術や知識
・人類の枠を超えた知性体の存在
・人類の知的進化に対する問いかけ
【筆者仮説】
ブリンのいう知性の拡張(Uplift)は、『HUNTER×HUNTER』の念能力の発展やキメラアントの急速な知的進化と高い通約性をもつ。『知性化シリーズ』が描くのは、上位知性による進化の介入と、知的序列/文明階梯の政治学、「知性とは何か」という哲学的問いだ。そうなると、やっぱりキメラアント編もまた、異種接触による知性の加速と価値体系の転倒を描く点で響き合う。ただし、ブリンが制度化された後見関係を主軸にするのに対し、H×Hでは自己触媒的進化と文化的感染、さらに誓約=契約倫理が知性の運用を規定する。この差異を含んだ相似として読むと、冨樫が70年代SF的文脈で知性の拡張を自作の規範(念の契約)へ折り込んでいる構図が見えてくる。
これまで提示してきたどれが選ばれるのか、はたまた違うテーマなのかは一読者の一存では断言できないのであえてぼかす。
・続・継承戦考察
その1 崩壊は「制度のレベル」で止まる
【作中傾向】 H×Hは「大きな揺れ」は描いても国家そのものの消滅は避けてきた(東ゴルドー壊滅も世界秩序は存続)。
王制が完全に崩壊するなら、それは革命レベルの話になる
•王国の消滅を描くと話が大きくなりすぎて、本筋が暗黒大陸から逸れる
•HUNTER×HUNTERは「大きな世界の変化」は描いても、「国家の崩壊」はそこまでやらない傾向がある
•ex.ヨークシン編で「幻影旅団が裏社会を牛耳る」が、世界そのものには影響を与えない
•ex.キメラアント編で「東ゴルドーが壊滅」しても、世界全体は変わらない
王制は存続するが、継承戦のルールは今回で終わるという落としどころなら、あり得る。
「最強の者が王ではなく、政治的な駆け引きで勝者が決まる」
のはあり得るが、「カキン王国が崩壊する」 まではいかない、というバランス感覚。
【筆者仮説】
したがって、王制自体は残るが、今回の継承ルールは終幕という落としどころが最も自然。勝敗は政治交渉/制度運用で決まり、カキン崩壊までは行かない。(33–38)
その2 赤子王+代理執政官の二重化
赤ん坊王子が生き残るが、政治を動かせないから代理執政官が立つ
このパターンの可能性
•「生存者が最後の王子になる」 というルールは破られない
•しかし、その王子(赤ん坊)は政治を動かすことができない
•「王位は継承されたが、実際に動かすのは別の人間」 になる
•そこで 「代理執政官」 というポジションが生まれる
もしそうなら代理執政官が誰になるか?何のため?
治安・外交・暗黒大陸航路の三権限を暫定的に束ねる航海内閣の樹立なのか?
・クラピカが代理執政官になる可能性
彼が護衛していた王子が生き残るなら、「守るために政治にも関わらざるを得ない、ただし、クラピカは政治に興味がないので、むしろ「王制そのものを改革する」流れの方があり得る
・第九王子(ハルケンブルグ)が王の代理を務める
彼は「王位に執着しない」が、「改革を望んでいる」なら、赤ん坊王子の補佐をするが、最終的に国を変える」という流れもあり
・継承戦を管理しているV6が介入し、外部の人間が代理統治
V6がカキン王国の統治に影響を与える可能性
しかしそれは王制が実質的に外部管理される形
クラピカ案の正当性ラインとしては、「王子護衛の継続」+「航路の安全保障」=限定委任の誓約政治
結局王子が勝っても、結局政治は別の人間が動かす。すると、誰が勝ったかよりも、誰が実際に権力を握るかが重要になる
こうケースはクラピカが政治的な動きをする可能性が高まる。
赤ん坊王子+代理執政官の流れなら、「戦争の勝者が、統治の勝者になるとは限らない」 という展開で自然にいける
【筆者仮説】
「最後の生存者=赤子王」+代理執政官で実務を回すモデルは、口伝ルールの穴をついた解。実権者が誰になるかが本題にすり替わる。
候補
クラピカ:政治志向は薄いが、保護の延長で制度を縛る役に回りうる。
ハルケンブルグ:王位に執心しない制度改革派の代理として理屈が立つ。
V6の介入:外部統治の嫌悪感はあるが、暗黒大陸航路の正当化には最短。
・変奏的展開-ジャッジメント・チェーンによる統治誓約
クラピカが護衛している王子が生き残った場合、
ジャッジメントチェーンで「王としてのルール」を強制する という展開は確かにあり得る。これは 『ハリー・ポッター』における「破れぬ誓い」 と似た構造になる。王位を継いだ王子が「暴君にならない」ように縛る特定の政治方針を守らせる契約を課す、もし破れば即死 or 無力化 というルール。この場合、王座に就いた者が完全に操り人形になる可能性もある。
メリットは暴君化の未然拘束/制度の番人としての役割更新。
リスクは政治の私物化と見なされる。正当化には外部監視(V6・十二支ん)の枠組みが要る。
・第四王子圧勝がない構造
おそらく、単純な力関係では最強の可能性が高いが、それで勝負が決まる話ではない、これまでの『HUNTER×HUNTER』のパターンを見ると、「実力者がそのまま勝つ」ことは少ない。勝ちすぎると、彼のキャラとしての役割がなくなってしまう
「念獣」や「制度」の絡みで、最強であっても必ずしも王になれるとは限らない。
暗黒大陸編が本番なら、彼がそのまま王になっても話が膨らまない。故に、彼が実力的に最も優位であっても、「王になる」ことと「実際に政治を動かす」は別という前提がありそう。
【作中傾向】 H×Hでは最強=勝者にならない前例が複数(ヨークシン:知略、蟻編:毒、選挙:ルール操作)。
【筆者仮説】 ツェリは個の戦で無双しても、勝利条件の揺らぎ/制度の介入で政治的に退けられる筋。
念獣(制度の番人)の自律性もその障害として働く。(34–38)
・ルール前提の話
バトルロワイヤル方式(BR方式)=全員が死んで最後の一人が勝者というのは、単純な見方。最強の生存者が王になるとは限らない
【筆者仮説】
継承戦がBR(最後の1人)に見えても、勝利条件は制度で上書きされ得る。
【作中傾向】
H×Hでは「最強の個」がそのまま勝者にならない事例が反復されている。
ヨークシン編:戦略で封じる(クラピカ vs 旅団)
キメラアント編:毒と制度(宮殿制圧計画)で決着(メルエムは最強でも勝ち切れない)
選挙編:戦闘ではなくルール操作で決着
つまり、「ツェリードニヒが最強だから王になる」とはならない可能性が高い。
【中間結論】
「ツェリードニヒが最強=王になる」にはならない公算が高い。
最後に生き残った王子が王になる」というルールなら、
「最後に座った者が負け」 という仕掛けも可能。
「制度そのものが崩壊する」 → 「最も生き残ることに貢献した者が権力を握る」可能性
これは、『ライアーゲーム』の椅子取りゲーム的な展開に近い。→ 「王になろうとした者ほど、王になれない」構造があり得る。
・最後に生き残った者が王になるルール自体が破綻する可能性
・最も戦略的に制度を操った者が、実質的な勝者になるという展開が濃厚。
•「最後に生き残った王子が王」ではなく、「最後に生き残れなかった者が王になる」 展開
•もしくは 「最後に残った者が、「王になる資格を失う」仕掛け?
仕掛けA:「最後に座った者が敗者」──椅子は残るが、座った瞬間に資格を失う/別条件が発動。
仕掛けB:「制度崩壊/無効宣言」──口伝ルールの可変性を突かれ、最も生存に貢献した者が実権を握る。
仕掛けC:代理統治の二重化──形式上の王と、実務を担う制度運用の勝者(代理執政)を分離。
【対応する比喩】
『ライアーゲーム』椅子取りの逆説「王になろうとするほど、王から遠ざかる」。
ここでの「椅子」は王座、「音楽」は制度の合図。合図の意味を読める者=制度の勝者。
【最小命題】
最強の生存者が王になるとは限らない。
椅子をどう運用するかを読み切った者が、実質の勝者になる。
サブテキストとして国家三大要素を反映。
権力、国民、領土 これすなわち国家の三大要素 という前提にたてばだいぶ見える
権力
現在は「継承戦ルール」という呪術制度と、念獣という強制装置によって保持されている。だが実際には王子本人が支配できるわけではなく、護衛や念獣が介入しているため、形式上の権力と実質的権力が乖離している。だからこそ「代理執政官」論が浮上する。誰が権力を行使できるのかが最大の焦点。
国民
王子や王妃に焦点が当たっているが、カキンの国民は「背景」にしかいない。だがその不在は空白ではなく、二線者の病理として制度の歪みを示す影の登場人物になっている。これは逆に言えば「国民不在の国家システム」であり、継承戦は国家ではなく王族制度だけを守る装置に過ぎない。国民の意思や福祉が介在しない制度は、現実の国家概念からすると極めて脆弱。だから革命=「国民を持ち出すことで制度が崩れる」可能性がある。
領土
カキンは領土拡張主義で、暗黒大陸航路を押さえることで「未知の資源と影響力」を領土に組み込もうとしている。つまり継承戦は「国内王権争い」であると同時に、外部拡張への正当性を担保する儀式でもある。
領土=暗黒大陸が接続している時点で、カキンの内部権力闘争が世界秩序に直結する構造になっている。
「権力・国民・領土」の3要素で見ると、カキンの王位継承戦は国家そのものを成り立たせている条件をわざと欠落させた危うい制度に見える。
権力は王子ではなく制度(念獣とルール)に奪われ、
国民は完全に不在
領土は暗黒大陸の拡張によって制度を超えて膨張している。
王位そのものが消滅する
•王位継承戦が制度そのものを揺るがす
・最後に残った者に王としての権限が与えられない」
・王の座に就く者が無意味な存在になる
•椅子取りゲームの最後の一人が、実は敗者だった構造
・ルールはあくまで口約束
王位継承戦は「制度として確立されたもの」ではなく、言伝(口伝)で進行している点が極めて重要
ハンター試験や念能力のルールと同じで、システムの確定性がなく、情報が不完全
言伝=ルールの可変性が大いにあり得る。
•継承戦のルールは、あくまで伝承されているだけ
•実際に制度として存在しているわけではない
•公式な記録や、確定したシステムがあるわけではない
つまり、ある種の騙し合いの要素が含まれている
「言伝」=「ルールが不確定であること」を示唆
•実際に最後の一人が王になれる保証はない
•隠された真のルールが後から明かされる可能性が高い
•単純な勝ち残りゲームではなく、ゲームマスターが別にいるかもしれない
『HUNTER×HUNTER』のこれまでの流れを考えても、単純なバトルではなく、 「制度の抜け道を見つけた者が勝つ」 というパターンが多い。
ハンター試験の最終審査 → 負けた方がハンターになれる
キメラアント編 → 王(メルエム)が最強だったが、勝負は「毒」で決着
選挙編 → ジン vs パリストンのゲームで、両者が「勝ち」と「負け」を同時に得た
アルカ編 → 願いの仕組みを「最も理解した者」が勝つ(キルア)
なら継承戦 は→ 戦力ではなく「王制の仕組みを理解した者」が最終的に生き残る確率がかなり高い
おそらく、念獣は扱いが当人もハンター側も難しいだろうコントロールが不可である以上、部は王子にあっても。
そういう状況をクラピカが見抜けないわけがない。そしてその行動が監視を通して王と王子に目をつけられる可能性もある。
なんせ第四王子は顔単位で緋の目を持っているからね。もうちょっと第四王子については考えないとダメだ
浅いまま読んではいけないのだ。
では、第四王子は知っているからこそ知らないこともあるのではないか?という問いはどうだろうか。
普通に考えれば「念」。
取得には苦労していないだろうが本質的に理解することと使うことは相容れない。
王子は念獣は使えること展開になるのだろうがそれと念は=ではないと思う。
いや、念は使えると仮定して、しかしここに彼が知識欲が凄いということが反転する展開があるのではないか?
つまり「知っているからこそ知らない盲点で敗因を期す」という展開は絶対ないとは言い切れない
そして念能力において、「奪う」概念が本格的に導入された描かれたことは実は少ない。
具現化系の能力を強奪することは『グリードアイランド編』のカードであったが、念能力そのものを奪うような「超理不尽な能力」はまだ本格的には描かれていない。そうなると「念能力を強奪する能力」が継承戦で登場してもおかしくない。
ツェリードニヒは膨大な知識欲で念の体系を学んでいくが、知識=運用ではない。
冨樫作品は「情報の非対称性」が常に勝敗を左右してきた(クラピカ vs 旅団、選挙編のルール解釈など)。
第四王子の能力が「念能力を奪うもの」だった場合、これは「クラピカの能力に直接干渉する」最強クラスの対抗策になりうる。逆に、クラピカが「念能力を奪うことを逆利用」する能力を手にしているとしたら、第四王子にとって最大の脅威になり得る。
単純に言い換えれば
『HUNTER×HUNTER』では「情報を持つ者と持たない者」の差が、戦いを決める要素になる。クラピカが幻影旅団をハメたのも、「情報格差」を利用したから。であれば継承戦も同じく、「誰がどの情報を知っているか」がカギになるはずだ(これはそうでしかあり得ない)。となると、第四王子がどれだけ知識を持っているかが逆に敗因になる可能性 を考える必要があるしそれは必然的な理屈として成立する。だからこそ、「王位継承戦が複雑すぎる」と言われるのも、ある意味で納得できる話なんでしょうよ。
しかし、敢えて言えば「考え抜かないと見えてこない構造」 がそこにあるからそこを最大限考えないのは甘え。
本当にヨークシン編がいかに源流かが分かるよね。この「王位継承戦」にもあの話はかなり活きてくる
分からないを軸にしていけば読めるんですよね。自分も確信して読めたことはないけど予想は立てられる。
問題は理屈と論理の精度。正当ではなく邪道と論理性がもつ逆説と問と解における概念における複雑さが拍車をかけている。
情報の優劣が勝敗を決めるのは必然。
ツェリの知識欲は盲点になり得る。
そこに「奪う能力」の新規投入が絡むと、制度的逆転が描ける。
実は1番のヒントをくれているのは昔の話で、それが1番出ているのが「言葉の帳尻」どういうかで意味合いは変わることが本作の本質の一つ。「多分」「おそらく」「きっと」という憶測は旅団では思考の位置図としてギャグとして機能していたが(ノブナガとマチの会話がそう)キメラアント編ではそれが逆上を買うし、アルカ=ナニカ編では扱うものが恐ろしいからこそ「いい加減な判断としての予断は」許されなかった。
旅団編では「言葉遊び」が許されるが、キメラアント編やアルカ編ではそれが許されない。その違いを意識することで、継承戦においてもどの言葉が信用できるか、どのルールが揺らぐ可能性があるかが見えてくる。
34巻
やはり想定していた通り旅団が落ち合う流れではあった。
「ヨークシン編」説が的中。しかし変奏している。重要なのはヒソカvsクロロというファンサ、いい加減決着なんてつかないと思っていたが一応はついた(がしかし奇策で一命を取り留め、コルトピと携帯の人の2名を惨殺。これはただただ描写がえげつなかったが本編に要求されるものと比べれば割とヒソカ寄りの私怨であって冨樫が描いた結果はマチを生かしたこと。これはどう効いてくるかだが一旦保留。私怨によるヒソカvs団長除く旅団という同時進行も追加。多層的だ。ヨークシンは外部からの圧=クラピカにより旅団が揺れる構図。34巻は内側(ヒソカの私怨)から組織論が侵食。以後の旅団は合理的盗賊団から復讐集団への変質を強いられる。クロロ戦は勝敗の決着というより、ヒソカの立場を「観測者→破壊者」に更新する儀式。ここで旧神話の処理係としての役割が確定する。
クロロは乗る。結局あいつが能力としてはヒソカより強いのだから、しかも動機がカキン王の狙うものと同一。ここはクラピカの動線張り。そして本題の王位継承戦だが、そうかなるほど。王子がいるなら王妃もいるここまではわかっていたがそこに下段式ボディーガードの導入は間違いなく今回付け足したが上級と下級の身分差や要人の有無を考えれば正当。
「ヒソカ vs 旅団(下層)」が王位継承戦(上層)に遅れて干渉する導線がここで開通。
以降、上層=制度戦/下層=暴力連鎖が並走する五角形構造は確実。
そしてやっぱりクラピカは正確に「情報」を知ろうとしていた。だからこれも「ヨークシン編」の再来。しかし厄介なのは準ハンターや他のボディガードそのものではなく、事情を伏せることで全員が同じことを共有していない。この一点こそが情報の非対称性
「念を知っている・知らない」すらはっきりいって気にかけることではない。問題は護衛でさえバラバラなのに、そこに念獣という本人さえ意図できない怪物がいる。実際にこの間の終わりは「寄生型」という言い方をされているが、他者に強制させる力もあるということ!!。これは念獣の原点に関わってくるのかもしれないがともかくとしてクラピカはその存在には気づいている。しかしやっぱり誰も理解できていないという状況でこの話は終わっている。その意味では導入でしかないので難しくはない、しかし今の状態で続くことこそが最悪のルートでありそのことによって思索すらも交差することになるでしょう。
念獣は恐らく防衛本能でもあり本人のメタファーでもある。ということは生来における自分が最も〇〇するものの具現化という説までは詰めることができる。なぜコントロール下にないのか→元々そういう何かが原材料だから→手を入れることにヒントがある。
つまり手を入れることで本人の意思を切り話すということも考えられる。クラピカが情報をさぐり、情報を知っているやつがいちばん大事なことを知らずに過ごすのが危険だったため念獣が軸となって場面が動いたクラピカ陣営は逆に良かったのかもしれない。
人数が少ない→だからこそ被害は最小限に押さえらる。
そう考えてあってくれ、クラピカと思ってしまうのはキャラクターへの情があるから。
言葉の帳尻が最も大事なゆえに状況は簡単に変わるし。念獣のシステムも未確定だ。そこまで動きがあったという感じはしませんが。
「ヨークシン編」の構造的な再演」
「旅団 vs ヒソカの因縁が継続し、並行して動く」
「念獣が念とは別の、制御不能な要素として機能する」
「戦闘力よりも、情報を制することが重要になる」
「継承戦のルールと実態がズレているため、知る者が支配できる」
王位継承戦がはいった33巻、34巻の感想はひとまずこれで締め。
総まとめ
33巻=「クラピカを制度へ介入する必然性」
34巻=「外圧→内圧という旅団変奏」
35-36巻分は以下になります。よろしくお願いします。
