過去10年の音楽遍歴を綴る【元アナウンサーのエッセイ】
最近、名誉伝説にハマっている。
出会いはYouTubeの広告。ショート動画をスクロールしているとふいに流れてきて、吸い込まれるように本編を見ることになった。
MVの世界観もボーカルの声質も最高で、以来繰り返し聞いている。この曲は歌詞が尖っていていい。愛の関係性を甘い物ではなく、過去の相手の過ち、闇の部分も受け止めて2人の秘め事にする。そんな関係を「共犯者」とするのは斬新すぎる。
今年に入ってヨルシカやサカナクションの曲を繰り返し聴いていたが、アーティストごと新しい出会いがあったのはなんだか久しぶりのような気もする。
そういえば昔はどんな曲を聴いていたっけ。
過去10年の「今年の一曲」を挙げてみることにした。発表年にとらわれない、あくまでも私の人生を辿る選曲である。
筆者紹介-森田麗実-
元アナウンサー。2020年より富山県内のテレビ局に勤務。情報番組の司会やニュース番組のキャスターを担当するほか、原稿の執筆やカメラ撮影、映像編集など包括的に番組を支える。中学生から大学生まで、うたのおねえさんを目指していた。
2016年 ぼよよん行進曲
本当はこれは「今年の一曲」ではなく人生のテーマソングだ。自分の結婚式や葬式で流したい。私は中学生のころ、うたのおねえさんになりたかった。
この曲はゆうぞうおにいさんとしょうこおねえさん時代に発表され、当時は1番のみだった。高校生のとき、だいすけおにいさんとたくみおねえさんの時代にフルバージョンが放送され、2番以降の歌詞に引き込まれた。この曲には人生のダメな時も受け入れて、その上でふんばり飛びあがろうという力強いメッセージを感じる。人生の節目に繰り返し聴いている名曲だ。
過去10年では大学受験を乗り越えた際に最も聴いていたので2016年の曲として紹介する。
2017年 ヴァイオリン・ソナタ 第21番 ホ短調 K.304 第2楽章
今でも我が強い私だが、大学生の頃までは殊更強かった。流行りのアーティストはつゆ知らず、よく聴いていたのはもっぱら『おかあさんといっしょ』のキッズソング、Schroeder-Headz、クラシックなどだった。当時の私はジャグリングサークルに所属し、音楽を聴くときはパフォーマンスに使えるかどうかの判断軸があった。歌詞のない曲を選ぶことが多く、モーツァルトのバイオリンソナタもそのうちの一つである。悲しみ溢れる中、一筋の光が差すような希望もある、表情豊かな音楽が好きだった。
2018年 Oh Eh Oh Eh
En la universidad, estudiaba mucho español.
He olvidado casi toda la gramática, pero aquellos días eran muy buenos.
訳:大学ではスペイン語をたくさん勉強しました。文法のほとんどを忘れましたがいい日々でした。
打って変わって明るい曲である。学生時代に特に頑張ったことの一つにスペイン語学習があり、Gipsy Kingsの曲は学習の合間によく聴いていた。陽気になれる曲が多い中で特にお気に入りなのがこの曲。
2019年 だから僕は音楽をやめた
就職活動時代によく聴いていた。
2019年といえば5月1日付で元号が平成が令和になった年だ。周りの友人たちは非常に優秀で平成の間にいくつか内定があったり既に進路が決まっていたりした。私はというと平成の間には良縁に恵まれず、この年のゴールデンウィークは孤独に苛まれていた。アナウンサーの就活は一般的な就活と比べて早く、早ければ3年の夏以降に内定が出る学生もいる。人よりも長期間踏ん張るのは苦しく、そんな思いをこの曲にぶつけながらエントリーシートを書き、面接にはぼよよん行進曲を聴きながら向かったものである。
2020年 Catch up, latency
この年、私は地元・神奈川を離れ、富山に移った。同時に新型コロナウイルスが世界中に蔓延し、気軽には知人に会えなくなった。この出来事が私の音楽観に影響を与えた。それまでは自分の趣味に真っ直ぐだったが、他者の趣味に思いを馳せるようになった。ジャグリングサークルの仲間たちがこぞってパフォーマンスに使用していたUNISON SQUARE GARDENの曲を聴いては思い出に浸っていた。
2021年 僕の戦争
アナウンサーになってから毎年のように異なる苦しみがあった。若手としての壁、取材活動をする葛藤…全てが自分を成長させてくれたものの2年目は特に苦しかったのを覚えている。自分ではどうすることもできない怒りをこの曲で発散し、それを原動力に戦う日々だった。
2022年 U
前年に公開された『竜とそばかすの姫』はメタバースが一般化した社会を描いている。ここで挿入されたのがMILLENNIUM PARADEの『U』だ。この年、私はメタバースにのめり込んでいた。プライベートではもちろん、仕事においても社内の理解促進に取り組んでいた。アナウンサーになってから1番知の探求に取り組んでいた1年だったと思う。
2023年 普変
アナウンサー4年目にしてキャスターを担当するようになり、私は責任感にあふれていた。そのため先輩方と自分の実力差には悩んでいた。一方で自分の「理想像」も新入社員の頃に比べて鮮明になり、他者に対して思うことも増えてきた時期だった。変に綺麗事でまとめず、等身大に表現しているあのちゃんのこの曲は私を救ってくれた。
2024年 空白とカタルシス
2024年はほとんどが適応障害と共にあった。結果的に1番のめり込んでいたのが、ガールズバンドクライというアニメである。
ご参考
熊本から川崎に出てきた井芹仁菜が仲間たちとぶつかりながらバンドをする最高にロックな物語だ。主人公の境遇と当時の自分が重なり、何周もしている。ここで紹介している『空白とカタルシス』は、アニメ本編で唯一フルサイズで放送された作品屈指の名曲である。この曲だけでなく本編も要チェックだ。
終わりに
当時に好きだった曲で様々なことが思い出される。一つの切り口で人生を振り返るのは新しい発見があるのかもしれない。次は本や映画など、別の切り口で人生を振り返ってみようか…。
皆さんの人生の一曲はなんですか?
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