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指で「うつす」

 今回の記事は「主体、客体、身体(「客」小説を求めて・06)」の続きですが、小説や文学の話ではなく、指の話をします。

 今、みなさんはこの文章を読んでいるわけですが、この文章をにたどり着くまでに、またはこの文章を画面に呼び出すために、指で触れたり、撫でたり、弾くという仕草をなさったのではないでしょうか。

 ふれる、なでる、はじく。

 スマホのことですが、パソコンであれば「(軽く)叩く、押す、回す」という動作をしたにちがいありません。

 キーボードのキーを叩いたり、スイッチやボタンを押す、マウス自体やマウスのスクロールホイールを回す。「つまむ」動作もあるでしょう。

 たたく、おす、まわす、つまむ。

 どれもが指をもちいる仕草や動作であることに、驚かないではいられません。でも、これは今始まったことではなく、人が読み書きをするさいに昔からずっとしてきたことなのです。

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 なお、「つまむ」(「つむ・摘む・抓む・採む」と同じく「つめ・爪」から来ているそうです)は、「摘む」や「抓む」のほかに「撮む」とも書けますが、これは撮影の「撮」でもあります。

 漢字の解字によると、親指と人差指と中指でつまみとることらしいのですが(漢字源・学研より)、「写す・映す」における、その三本の指による仕草の親和性は無視できない気がします。

 たとえば、カメラでシャッターボタンを押す仕草、スマホの画面を指でいじって操作する仕草です。

 今の時代には、この三本の指を怪我すると、ずいぶん不自由をするにちがいありません。

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「つめ・つま・爪」、「つむ・摘む・抓む・採む」、「つまむ・摘む・撮む・抓む」。言葉を発音してみたり、文字をじっと見ていると、大昔の人たちは私たちにくらべて、きっと長い爪をしていたのだろう、と想像しないではいられません。

 いっぽう、今の私たちは指の腹を過剰なほどにつかって生活している気がします。私の人差指の指紋なんか今にも消えそうです。

 冗談はさておき、ここまでをまとめます。

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・目、指、画面:パソコン、スマホ、タブレットでの読み書き。キーボード、マウス、画面。指でタイプ、ロール(くるくるまわす)、タップ、スクロール、スライド。
・目、指、紙面:紙とペンとインクをもちいての読み書き。指でページをめくる、ペンを握る。
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 実は、指は、身体のうちで「うつす」と最も親和性のある部位なのです。「移す、写す、移す」のすべてとです。話がとても大きくなるので、このことについては、あらためて記事にするつもりでいます。
(拙文「「主体、客体、身体(「客」小説を求めて・06)」より)

 そんなわけで、指と「うつす」についてお話しします。


指で「移す」


 指で移すといっても、指をつかって物を移動させることは限られています。指というよりも五指、五指というよりも手、手というよりも腕をつかって、物を移動させるのが普通の考え方だと思います。

 たとえば、石です。たとえ小さな石でも、一本の指で運んで移すことは無理でしょう。砂粒ならできるかもしれませんが。

 二本の指でつまめば、小さな石なら移せるでしょう。五指をつかってなら、やや大きめの石でも移せそうです。

 かなり大きな石はどうでしょう? 岩はどうでしょう? 山はどうでしょう? 

 話が飛躍して申し訳ありません。 

 やろうと思えばできます。一本の指で、岩くらいなら動かせそうです。運んで移すことが可能です。

 そうです。指図するのです。指一本で指示するのです。

 指図(さしず)、指示、人差指、指揮、指令、指導

 こんなイメージです。

指で「写す」


 指図する、つまり指示するためには、「この岩を君たちに、あっちへ移してほしいんだ」と口にするだけで済むとは限りません。目の前に岩がなければならなし、運ぶ人たちも目の前にいなければなりません。

 山の中ですごく形と色のいい岩を見つけても、いったん山を下りて、しかるべき場所でしかるべき人たちを前に指示なければならないのです。

 何が必要になるでしょう? 

 地図と岩の写真は絶対に必要でしょう。写真という文字に目が行った人がいらっしゃるのではないでしょうか?

 写真を写す――。

 写真だけではありません。地図も写したものです。地図というのは、おおざっぱに言えば場所とか位置を紙面に写した図なのです。

 有り難いことに、今ではスマホがあります。これをつかわない手はありません。

指で「映す」


 スマホをつかえば、写すだけでなく、映すこともできます。動画を含む、広義の映像です。

「えーっとね、この道を行くでしょ、ややこしいんだけど、この大きな木が目印なんです。この木を曲がると、黒くて大きな岩があるんだけど、それじゃなくて、もう少し進んだところにある岩なんです。このまま画面を見ていてください」

 そんなふうに、動画を見ながら説明すれば、業者さんに的確に指示できそうです。

 もちろん、このときにも、スマホかタブレットかパソコンの画面を見ながら、指で差すことになるはずです。「そうそう、そこなんですよ。えっ? 私の土地だから大丈夫です。その岩をこの家の庭に移してください」なんて具合に。

 このあとに、動画をデータとして、業者さんのスマホやタブレットに「うつす・移す・写す・映す」ことになるのは言うまでもありません。

 今では「うつす・うつる」のは「データ」なのです。この点については、以下に紹介する「文字の振りをした文字」という記事で詳しく書きました。

うつせないからうつす、うつす「代りに」うつす


 ここで「文字の振りをした文字」という記事から引用します。

 移せないから写したり映す――。
 移す代わりに写したり映す――。

 上の二つは言い方の違いと言えるでしょう。物は言いようなのです。
 うつす、移す、写す、映す
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「うつす」をテーマにするさいには、「代わりに」は大切な言い回しだと思います。
 代償行動という側面を浮彫りにする言葉だからです。
(拙文「文字の振りをした文字」より)

「代わりに」が魔法の言葉に見えてきます。じっさい、そうなのです。次回はその話をします。

 今回は、体調と相談しながら短い記事が書けました。この調子でいきたいと思います。

 暖かかったり寒さが戻ったり――。季節の変わり目ですので、みなさんもどうか体調管理に気をつけてくださいね。

(つづく)

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