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光のデスクは、私の聖域

4ヶ月間、書けませんでした。

理由はシンプルで、日常がカオスだったからです。

それでも毎日をやり過ごせたのは、あの3.5畳があったからです。


現在のデスク。窓なし3.5畳の書斎


はじめましての方向けに自己紹介をすると、本業はソフトウェアエンジニアです。カメラ歴17年の元コスプレカメラマンで、整理収納アドバイザー1級を持っています。

私は、窓のない3.5畳の書斎を、
照明で快適にする「光のデスク設計術」というシリーズを書いています。

今日は、その原点の話です。


「外」が持てない


私は今年の4月、第二子の育休を終えて復職しました。

休職前は、出社前にカフェへ行き、そこで発信作業をする日々でした。

ただ、時間が圧倒的に足りない。
通勤で、疲労も蓄積。
そして、地味にかさむカフェ代が、ジャブのように効いてきます。

その頃の私の3.5畳の書斎は、くつろぎとは程遠い、ただの狭い、条件の悪い部屋でした。
窓がなく、北向きで、薄暗い。 陽光の入らない、いわゆる行灯部屋です。

Before(物置時代の書斎)



よく「サードプレイス」という言葉を耳にします。

家でも職場でもない、第三の居場所。

それは本来、「外」にあるものとして語られることが多い場所です。

でも。

時間も、お金も、移動の自由もない人間には、「外」が持てません。

そんな私が、「家の中にサードプレイスのような場所を作れないか」と考えるようになったきっかけがあります。


「聖堂」という言葉


それは、趣味で進めていた整理収納の資格を勉強していた時のことです。

当時は第二子の出産を間近に控えていて、家の中はカオス状態。 「もっと家の中を快適にしなければ、出産後の2人の育児は乗り越えられない」。 そう考えて、整理収納を体系立てて学ぼうとしていました。

その中で出会ったのが、「聖堂」という言葉でした。

整理収納における「聖堂」とは、思い出の品やコレクションが捨てられず、片付けが進まない人へのアプローチの方法です。

思い出の品を、一ヶ所に集めて飾る。 すると、その場所が「聖堂」の役割をして、他の場所の片付けにも手がつけられるようになる。

そういうものでした。

このメソッドを知った時、私はある仮説にたどり着きました。

「聖堂」が家の中にあれば、心の避難所になるんじゃないか。


リビングは、彼らの場所


その頃の私は、片付けても片付けてもおもちゃが散乱するリビングに、とても疲弊していました。

当時の私は、リビングしか綺麗にする価値がないと思っていました。 書斎はとても条件が悪い部屋で、綺麗にしたところで、どうせ物置になるだけだと思っていたからです。

ある休日の夜のことです。

私は夜の照明で照らされたリビングを撮りたくて、昼間に息子が遊んでいたプラレールを片付けました。

昼間の育児で疲れている中、やっとのことですべてをおもちゃ箱にしまい、1時間かけて写真を撮りました。

翌朝、息子の恨めしそうな声で起こされます。

「ママ、プラレール、片付けた?」

とっさに、しまった、と思いました。 彼が作った「作品」を壊したことを、瞬時に理解したからです。

案の定、彼は癇癪を起こし、私を責めました。

私は自分の利を優先して、彼を思いやらない行動を取ったことを後悔しました。

そして、決めたんです。 リビングは子どもたちの遊びを優先にする。 彼らの作品があるうちは、勝手に片付けたり触ったりしない。

だから今も、思うように整然としたリビングが撮れないことは、日常茶飯事です。

では——私の居場所は、家のどこにあるんだろう?


デスクを「聖堂」に


そんな時に思い出したのが、あの「聖堂」という言葉でした。

家の中に、一区画でもいい。

自分の聖堂にできる、お気に入りを飾れる場所があれば、なんだか落ち着くんじゃないか。

そこで思いついたのが、デスクでした。

私の3.5畳の、物置と化した書斎。

ここも「聖堂」にできるんじゃないか。

「聖堂」という言葉に、私は一筋の光を感じました。

それから3ヶ月後。

本格的にデスクを聖堂化するために情報を集めていた私は、ひとつのデスクに出会います。

海外のインスタグラマーさんのデスクでした。

「こんなデスクなら働きたい」
強く、そう思ったんです。

もうひとつ、私を突き動かしたのは、「在宅ワークを快適にしたい」という思いでした。

私は週の2〜3日を、この書斎で働いています。

それまで、3.5畳の書斎で在宅ワークをするのはとても気が重く、それ以外でデスクに座りたいと思うこともありませんでした。

私はカメラが趣味で、17年間カメラに触れてきました。

カメラという趣味は、やっている人ならわかると思うのですが、パソコンと向き合う時間も結構多いんです。

だから、書斎に快適に座れないことは、結構なデメリットでした。

デスクが、座りやすくて、居心地のいい場所になったら。

聖堂にもなる。
趣味もできる。
仕事もできる。

それって、何役もこなす、すごくいい場所になるんじゃないか。

——これが、私のサードプレイスになる。

後からそう気づくことになるのですが、当時はただ、胸がワクワクと踊っていました。

実際に私は、それから4ヶ月を経て、そのデスクを完成させました。

現在のデスク


光は、脳を騙せる


正直に話すと、「サードプレイスを作ろう」「家の外と認識させよう」と、最初から考えてデスクを作っていたわけではありません。

きっかけは、デスクを作った後のことでした。

海外のデスクセットアップ界隈には、画面に映っているものと同じ色にテープライトを同期させて、没入感を高める文化があります。

それを知った時、単純に「やってみたい」と思ったんです。

そして実際にやってみて、気づきました。

これってもしかして、私がコスプレカメラマンの時にやっていた、「シーンを想定して光を作る」メソッドと近いんじゃない?と。

コスプレの撮影では、アニメやゲームのキャラクターの、物語の1シーンを模した形で写真を撮ることが多いんです。

真夏の昼間の屋外。
夕方の公園。
朝の、薄明るい時間。

そういった「文脈」ごと、光で表現する。

それがコスプレ界隈では、一般的な撮影手法のひとつです。

光は、簡単に人の脳の文脈を変えてくれます。

昼間の文脈にも、夜の文脈にも。

偽物の太陽なら、私は10年以上、ストロボで作ってきました。

同じことを、家の中でもやってみせられるかもしれない。

最初に作ったのは、「星空のデスク」でした。

星空の壁紙をPCに映して、その光をテープライトに同期させる。

画面の光が、壁に滲んでいるような。
夜の星空の下のような、薄暗い光の環境です。

星空のデスク


発信したときは、すごく反響をいただきました。

ここが、私の転換期でした。

私は、なんとなくでやっていたこの場所の作り方を、毎回同じメソッドに落とし込むようになりました。


「聖域」と呼ぶことにした


整理収納のテキストにあった「聖堂」は、お気に入りを飾る場所でした。

でも、私が作ったのは、光で区切る避難所。

だから私はこれを、自分の言葉で「聖域」と呼ぶことにしました。

聖域とは、物理的な部屋のことではありません。

光の境界線で区切られた、脳の避難場所です。

これは、私の特殊な部屋の話ではないんです。

あなたのデスク1枚分のスペースでも、光の境界線さえ作れれば、作れます。

ここからは、その「聖域」の作り方です。


聖域の作り方・3ステップ


STEP1 場所を、自分に返す

私のデスクは、3.5畳の窓なしの書斎にあります。

でも、広さは問いません。

もっと狭くてもいいし、もっと広くてもいい。

極端なことを言えば、デスク1枚分でもいいです。

大事なのは、その場所の「所有権」を、自分に返すことです。

育児をしていると、家の中の空間は、いつの間にか誰かのための場所になっていきます。

リビングは、家族の場所。 子ども部屋は、子どもの場所。 キッチンは、家事をする場所。

仕事をしていれば、会社にいる時間も、誰かのために使う時間です。

だから私は、デスク1枚分だけ、自分に返すことにしました。

そこでは、発信活動もする。
仕事もする。
写真も見る。

用途はひとつではありません。

でも、共通していることがあります。

ここだけは、誰かのためではなく、
「自分の時間を過ごすための場所」にすること。

そうすると不思議なもので、用事がなくても座りたくなる空間になりました。


STEP2 光で境界線を引く

このデスクは、物理的な壁ではなく、光で「ここは別世界だ」という合図を作っています。

私は、長年の撮影経験と、この部屋での試行錯誤から、ひとつの法則にたどり着きました。

色 × 位置 = 時間

光は、「何色か」だけでなく、「どの高さから来るか」で、時間の文脈を作れます。

たとえば、夜。

電球色のランプを、低い位置に1灯つける。
そして、天井灯を消す。

天井灯が煌々としている状態は、頭の上で太陽がさんさんと降り注いでいる状態に近いものです。

これでは、夜のくつろぎというより、「今は昼間の活動の時間だ」という文脈が残ります。

逆に、低い位置の電球色は、夕陽や焚き火のような「1日の終わりの光」です。

それを1灯だけつけると、部屋の一角に、昼間の世界とは違う時間が生まれます。

反対に、「朝」を作りたいときは、白っぽい光を、顔より高い位置に置きます。

色と位置を入れ替えるだけで、窓のない部屋にも「朝」が来ます。

私は、この「色 × 位置 = 時間」の法則で、照明を設計しています。

境界線の引き方を突き詰めたのが、この2本の記事です。


STEP3 意志ではなく、合図で入る

最後は、「聖域に入ること」そのものを、儀式にします。

ライトが灯る。
聖域に入る。
椅子に座る。

この流れを、毎日繰り返します。

意志ではなくて、合図で入る。

私の場合、電球はすべてPhilips Hueにしています。

HueやSwitchBotのセンサーを使って、部屋に入った瞬間に、照明が自動でつくように設計しています。

聖域に足を一歩踏み入れて、数秒。

私がやることと言えば、デスクの椅子に座ることだけです。

すべての照明を自動化しているわけではありません。

手でつける小さなライトもあります。

でも、それもまた、私にとっては合図です。

ライトをつける。
座る。
仕事に集中する。
発信の企画を練る。

その1つ1つが、自分のスイッチを入れるトリガーになっています。

聖域は、意志力がある日に使う場所ではありません。

むしろ、意志力が残っていない日に、自分を連れていってくれる場所です。

「今日は座りたくないな」という日でも、照明が勝手について準備が整ってしまうと、不思議と座ってしまうんですよね。

お風呂に入りたくない日でも、浴槽の栓を閉めて、お湯を張ってしまえば、なんだか入ってしまう。

あれと同じです。

一度、準備が整ってしまうと、なんだかもったいなくて、始めてしまう。

どうしてここまで照明にこだわるのかというと、この部屋には窓がないからです。

ないものに憧れる。

そんな「隣の芝生が青く見える」が、原動力なのかもしれません。

それから——カオスの中で


復職から4ヶ月。

実際に、このデスクが何をしてくれていたのか。

エピソードを書くとしたら、本当に——まさに、今日です。

いま、締め切り前の私は、note創作大賞に応募しようとして、この記事を書いています。

現在、7月8日の22時。

締め切りは、2時間後に迫っています。

本当はもう、眠くて眠くて、欲望のままに布団にダイブしたい。

今日も会社員として仕事をして、帰ってきて、子どもたちの世話をして、てんやわんやの1日でした。

それでも、なんとかこの部屋に来ました。

この部屋は、「私を座りたくさせる」「用事がなくても来させる」、そんな聖域だからかもしれません。

ここに来れば、やることはひとつです。

デスクの前に座る。

座ってしまえば、パソコンをつける。
画面には、書きかけのnoteの記事が映っている。

ここまで来たら、もう、書くしかありません。

今の書斎は、とても柔らかい光に包まれています。

夜のカフェにいるような、ほっとする感覚がします。

子育てと仕事に追われるカオスな家の中にも、私の「居場所」はあった。

今は、はっきりとそう思います。


まとめ


人生のカオスは、たぶん、そう簡単には片付きません。

子どもは明日もおもちゃを広げる。
仕事は忙しいまま。
自由な時間が、ある日突然増えるわけでもありません。

だから私は、生活が整うのを待つのをやめました。

その代わりに、カオスの中に、自分が戻ってこられる場所を作ることにしました。

外に居場所を持てない人ほど、家の中に、サードプレイスになりうる「聖域」を持ってほしい。

大きな部屋は必要ありません。

デスク1枚分でもいい。

まずは、テーブルランプを1灯置いて、天井灯を消してみてください。

いつもの部屋の一角に、光の境界線を引く。

それだけで、そこに流れる時間が少し変わるかもしれません。

4ヶ月間、私は書けませんでした。

それでも今夜、私はここで書いています。

人生が整ったからではありません。

整わない人生の中に、自分へ戻る場所を作ったからです。

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