負の覇権国、アメリカ
米国が世界の警察、覇権国家という、かつての認識を改める局面?
昨今、世界的にインフレという名の通貨価値の下落が著しく、その煽りを受けて法定通貨を株式、不動産、金地金に変換していく流れが活発化している印象がある。特に安全資産の位置付けでもある金価格については顕著だ。
我が国では円安に振れる度に、日本円は紙切れになるおじさんが無限増殖しては「ハハッ、見ろ!人がbotのようだ!!ハッハッハッハッハッハッ!!」と嘲笑うまでがセットだ。
しかしタチが悪いのは、現在の中央値的な大衆の金融リテラシーだと「日本円がダメなら米ドルで外貨預金をすれば良いじゃない」という、でっち上げられたマリー・アントワネット像みたいなノリで、金融機関や生保会社のお高い手数料が乗っかった割高な米ドル建て金融商品を、割安な日本円を売り、有り難がって積み立てているのが現実だろう。
日本円ほどではないかも知れないが、通貨価値が下落している点では米ドルも同じ状況にあり、米国が世界の警察、覇権国家という終戦後に植え付けられたであろう、古い世代なら誰もが信じて疑わなかった、かつての認識を改める局面を迎えつつある過渡期ではないかというのが、漠然とした個人的な感想だ。
”アメリカの衰退は、基本的にエネルギー・通貨・軍事的覇権の死角から捉えることができると思います。
エネルギーでは、何よりもピークオイルによる石油文明の行き詰まりがあります。これはまた豊富で安い石油を前提にしたマイカーなどのアメリカ的生活様式の危機でもある。
そして通貨では、(中略)ニクソンショック以後、金に代わって、ペーパードルが世界貿易の準備・決済通貨になり、アメリカはドル発行国として途方もない特権を手に入れました。だが、その結果、アメリカは通貨操作で食っていく虚業の国になり、実態経済は衰弱する。(中略)
軍事的派遣についてですが、(中略)今のアメリカは、軍事的派遣国どころか、自分の力を過信し、自分が作った罠にかかって自滅している国です。そしてまた非生産的な経済の軍事化も実体経済を衰弱させました。”
ドル離れが加速する行く末
私が年初に、コロナ前から積み立てていたS&P 500の一部を利確したキャッシュで、J-REITを保有するに至った。理由としては、外貨建て資産から見ると、日本の首都の不動産価額は、対外的に比較するとまだ割安水準に映る点。
(とはいえJ-REITの信託受益権は、不動産の所有権とは似て非なるものであり、もし仮にアクティビスト等が投資口の過半数を取得した際、投資法人や物件の何をどこまで掌握できるのか、金融商品としての歴史も浅く、未だ法廷闘争に至った試しもないため不透明な点に留意。)
また、株式市場の成り立ちを1602年のオランダ東インド会社から遡ると、歴史上アメリカ一強ではないサイクルも相応にあることや、覇権国家がひとつの国で1世紀以上続いた試しはないため、信じるか信じないかはあなた次第なアノマリー上、現在のアメリカ一強が2045年頃に終わっても不思議ではない程度に、今の米国社会は途方もない格差と分断を生み出して、不穏な空気が醸成されつつある点。
なにより、積み立て投資の代表格である全世界株式の信託報酬が、新NISAを見越して2023年に表向きは引き下げる形で、代替投資先が改善され、わざわざS&P 500のファンドで米国株に決め打ちする必要性が薄れた点の3つが大きい。(隠れコストを加味するとS&P 500の方がまだ安いが…)
当然、S&P 500からオルカンに資金がシフトしていくことで、米国株式の比重は0.6掛け程度となり、大なり小なり、個々人やファンドの米ドル離れが束になって加速すると結構なインパクトとなり、事実上、基軸通貨という名の金融特権で食っている虚業の国の実態経済は衰弱していき、我々の目が黒いうちに覇権国家の認識を改めなければならない新時代の到来は、有り得る話だと踏んでいる。
末期のローマ帝国に似ている?
なにより、先に引用した「なぜヨーロッパで資本主義が生まれたか」が出版されたのは2016年。第一次トランプ政権前だが、この時点で既にアメリカは「負の覇権国」だと、核心を突いた論調が展開されている。
”現在のアメリカは、私の言葉で言えば「負の覇権国」だと思うのですね。(中略)やることなすこと、すべてが世界中に深刻な動揺と混乱を撒き散らしています。アメリカはマッチポンプで様々な深刻な問題を作り出しておきながら、それを解決する能力がない。こんな迷惑な事はありません。”
著者は富の不平等が、社会の腐朽、知性と文化の荒廃を伴う文脈で、米国を「末期のローマ帝国に似ている」と評したが、言い得て妙だ。
とはいえ歴史を振り返ると、ローマ帝国が滅びるまで200年の歳月を要しており、現在の覇権国家の地位が1945年に確立されたと考えれば、完全崩壊は2145年頃の可能性も大いにあり、我々が生きているうちには、完全崩壊しない可能性も否定できない。
それでも、1980年代頃までの「話の分かる同盟国」としての覇権国アメリカが維持できなくなる過渡期に、我々ジャップが振り回される未来は想像に難くなく、超長期的な視点で米国が「負の覇権国」という認識を持ち合わせておいた方が、資産形成をする上で、破滅のレシピでもある「盲信」をせずに済む切り口として有用ではないだろうか。
そんなことを考えると、ペーパーアセットの中でも虚業ではなく、実需の伴った銘柄を選定したり、オルタナティブ投資は実物資産に留めると言った、「価値の裏付け」を推し量る癖や、不確かな状況の中で確からしい要素は何かを類推する習慣が、VUCAの時代に活きてくるような気がしてならない。
無論、冒頭に野次った円は紙切れになるおじさんの焼き増しで終わる可能性も大いに有り得る。いずれにせよ、答えは未来になってみないと分からない。
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