【簡単あらすじ】その可能性はすでに考えた(微ネタバレ)【井上真偽/講談社文庫】
『 これはーー奇蹟だ 』
東京都杉並区、老朽化の進んだテナントビルの二階にある活気の無い探偵事務所。
その事務所には、数学・文理の学問全般から時事・生活雑学に至るまで、幅広い見識を有し、深い教養に怜悧な知性を持ち合わせた探偵・上苙丞(うえおろじょう)が所属している。
上苙の唯一の欠点は、まるで金銭感覚が無いというところであり、そんな上苙に億単位でお金を貸しているビジネスパートナー?である、姚扶琳(ヤオフーリン)が、いつものように上苙とお金の件で喧々諤々としていたある日、事務所を訪れた女性の依頼は、そんな二人を強制的に大きな渦に巻き込んでいく…
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『はじめに』
突然強烈な寒波が押し寄せ、一気に冬になりましたが、「寒くて外出したくない」ということは、逆に言うと「室内での読書が捗る時期になった」とも言えますので、私だけでなく読書好きとしては良い面も多い時期ではないでしょうか。
衝動買い時期が中々終了せず、積読状態になりつつありますので、最近読んで印象に残ったり、買ったまま積んだりした本の感想を書こうと思います。
この感想で、その作品や著者に少しでも興味を持って頂ける内容にしたと思いながら書いていますが、登場人物やぼんやりしたあらすじなど、『微ネタバレ要素』を含む記載がありますので、その点にご注意ください。
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人知の及ぶあらゆる可能性をすべて否定できれば、この事件は奇蹟と証明したことになる、と話す風変わりな探偵・上苙が、持ち込まれた依頼を「奇蹟」と証明するため、上苙は相手が提示する可能性を全て否定していきます。
第一章 吉凶莫測(ジーシオンムオツア/吉兆読めず)
「あの、私―――人を殺したかも、しれないんです」
上苙の探偵事務所に依頼にきた、渡良瀬莉世という女性。
渡良瀬は、自身が子どもの頃に巻き込まれた事件について、
自分が本当に人を殺してしまったかどうかを推理して欲しい。
そして、本当にそこで何が起きたのかを知りたい。
という奇怪な依頼を持ってきた。
この依頼は受けるべきではないと考えているビジネスパートナー・姚扶琳(ヤオフーリン)の心配をよそに、探偵・上苙丞(うえおろじょう)は、嬉々としてこの依頼を受けた。
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第二章 避抗落井(ビーコンルウオジン/一難去ってまた一難)
この事件を奇蹟と断じた上苙を「詐欺師」と大喝し、その推理を否定すると元検事・大門老人は言う。
後日、大門老人が披露した推理は、宗教団体が飼っていた家畜の豚を利用したトリックだった…
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第三章 坐井観天(ズオジングアンテイアン/井の中の蛙)
中国でのフーリンの元相棒、宋儷西(ソンリーシー)。
フーリンの中国での裏家業の引退を撤回させ、もう一度一緒に働くことを画策しており、その引退撤回の障壁とみなした・上苙との推理合戦に勝つことを公言した。
そんなリーシーが提案したのは、リーシー自身が「どんなトリックを考えたか」をフーリンが当てるという勝負。
今回はある事情で、その勝負を上苙ではなく、フーリンが受けることになる。
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第四章 黒寡妃球腹蛛(ヘイグアフーチュウフーヂユ/クロゴケグモ)
敵の罠に嵌り、クロゴケグモの毒で苦しむ上苙。
今回、推理勝負を挑んできたのは、上苙を師匠と呼ぶ、元助手の八ツ星聯(やつほしれん)だった。
上苙は毒で苦しみながらも、八ツ星の挑戦を受ける。
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第五章 女鬼面具(ニユグウイミイエンジユ/般若の面が浮かぶ)
八ツ星の挑戦を退けた後、
「私はお二人に嘘をついていました。実はーー」
というある人物からの意外な告白に対しても、上苙は落ち着いていた。
しかし、その人物からの推理勝負は、話を聞いていたフーリンが絶望するほどの内容だった…
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第六章 万分可笑(ワンフエンカーシヤオ/ちゃんちゃらおかしい)
全ての推理勝負に勝利した上苙は、毒で疲弊した体を休めるため、物置のようなマンションの一室のベッドで寝ていた。
そして、今回の件に関する最終的な仮説を披露する。
「…気にするな。それくらいは奢ってやるね」
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「その可能性は、すでに考えた」
各章とも、新宗教団体で起こった(と思われる)事実に対して、各人が推理を披露します。
そこまではミステリー作品として珍しいものでは無いのですが、基本的に、
推理勝負を挑んでくる側は、「口にするのも阿保らしい大道芸トリック」で良く、
それを迎え撃つ上苙探偵は、「れっきとした事実や証言に基づき反証しなければならない」
という状況にあります。
つまり、「相手が披露した荒唐無稽なトリックは、可能性がゼロでは無いため、それについても真面目に否定しなくてはならない」というとても分が悪い勝負を、毎回、上苙探偵は受けることになります。
この状況をどのように打開していくのか、そしてラスボスとの闘いは、中々の意表を付かれた展開になり私の好みのまとめ方になった作品です。
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本作は、中国語が多く使用され、中国風の舞台も散りばめられているので、雰囲気が合わない方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、個人的には、この中国テイストの進め方がとても好きです。
中国語が読みづらいなどと思う方がいらっしゃるかもしれませんが、私としては田中芳樹さん(代表作:銀河英雄伝説)の「創竜伝」を思い浮かべながらの読み進めを行いましたので、本作の雰囲気がとても良かったです。
次作も是非読了ください!
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