【上司が「次も任せたい」と思う人は、何が違うのか】 人事部長として25年以上見てきた、「信頼が積み重なる人」の働き方 〈キャリア・女性活躍・管理職・自分軸・働き方・人事・メンタリング〉
「一生懸命やっているのに、なかなか次の仕事を任せてもらえない。」
「同じくらいの経験なのに、なぜあの人には次々と仕事が集まるのだろう。」
仕事をしていると、そんな疑問を持つことがあるかもしれません。任された仕事には真面目に取り組んでいる。期限も守っているし、大きなミスをしているわけでもない。それなのに、なぜか次のチャンスにつながらない。一方で、まだ経験が十分ではないように見えても、上司から新しい仕事を任され、少しずつ役割を広げていく人もいます。
人事として25年以上、評価や昇格、人材育成に携わり、多くの評価会議を見てきました。その中で感じるのは、上司が「次も任せたい」と思う人は、必ずしも最初から能力が高い人ではないということです。もちろん、成果を出すことや仕事のスキルは大切です。ただ、それだけで次の仕事が任されるわけではありません。
上司が仕事を任せるときには、「この人なら、分からないことがあっても前に進もうとしてくれるだろう」「問題が起きても、自分なりに考えてくれるだろう」「伝えたことを次の仕事に生かしてくれるだろう」という、ある種の安心感を見ています。そして、その安心感は一度の大きな成果ではなく、日々の小さな行動からつくられていきます。
では、どのような人に「もう一度任せたい」「次はもう少し大きな仕事を任せてみたい」と感じるのでしょうか。今回は、私がこれまで多くの評価会議や社員の成長を見てきた中で感じている、上司が「次も任せたい」と思う人の三つの共通点についてお話ししたいと思います。
① 「まずはやってみます」と一歩を踏み出せる人
― 上司が見ているのは、「今できるか」だけではない ―
一つ目は、新しい仕事を任されたときに「まずはやってみます」と一歩を踏み出せる人です。仕事を任されると、「やったことがないから不安」「失敗したらどうしよう」と感じるのは当然です。経験がなければ、最初から自信を持てないこともあるでしょう。それでも、次の仕事が集まる人は、「経験がないのでできません」で終わるのではなく、「初めてですが、まずはやってみます」と前に進もうとします。
もちろん、「何でも引き受ければいい」という意味ではありません。分からないことを分からないまま進めたり、明らかに自分一人では難しい仕事まで抱え込んだりする必要はありません。大切なのは、できるかどうかを最初から決めつけるのではなく、「まずは自分にできるところまでやってみよう」「必要であれば周囲に相談しながら進めよう」と考えられることです。
上司からすると、この姿勢はとても大きな安心感につながります。なぜなら、新しい仕事を任せるということは、上司にとっても一つの判断だからです。「この仕事を任せて大丈夫だろうか」と考えながら、少しずつ経験の幅を広げていきます。そのとき、「経験がなくても、まず動いてみようとしてくれる」と分かっている人には、次の仕事も任せやすくなります。
そして、挑戦した経験は、その人の中に少しずつ蓄積されていきます。一度目は上司に相談しながら進めた仕事も、二度目には自分でできる部分が増えている。三度目には、後輩に教えられるようになっている。そうやって仕事の幅が広がっていく人を見ていると、上司も自然と「次はもう少し大きな仕事を任せてみよう」と思うようになります。
つまり、次の仕事を任される人とは、すでに何でもできる人ではありません。「今はできなくても、この人なら経験を成長に変えていける」と思ってもらえる人なのだと思います。
② 「できません」で終わらず、「じゃあどうするか」を考えられる人
― 問題が起きたときほど、「また任せたい」が決まる ―
二つ目は、仕事が思い通りに進まないときに、「できません」で終わらず、「では、どうすればできるだろう」と考えられる人です。仕事をしていれば、予定していた通りに進まないことは必ずあります。期限が短くなることもあれば、必要な情報が揃わないこともあります。自分の力だけでは解決できない問題が突然起こることもあるでしょう。
そうした場面で、「この条件では無理です」と伝えること自体が悪いわけではありません。無理なものを無理と言うことも、仕事では必要です。ただ、「できません」で話が終わる人と、「このままでは難しいですが、こうすればできるかもしれません」とその先まで考えられる人では、上司が感じる安心感は大きく変わります。
例えば、「この期限では難しいですが、優先順位を変えればここまではできます」「一人では難しいので、○○さんにも協力してもらえれば進められそうです」「二つ方法を考えてみたのですが、どちらで進めるのがよいでしょうか」。こうした相談ができる人は、問題そのものを上司に渡しているのではなく、自分も一緒に解決しようとしていることが伝わります。
ここで大切なのは、最初から正解を出すことではありません。経験が浅ければ、考えた方法が最善ではないこともあります。それでも、「自分なりに考えてみました」という姿勢があるだけで、上司からの見え方は大きく変わります。なぜなら、上司が本当に安心して任せられるのは、問題が起こらない人ではなく、問題が起きたときにも一緒に前へ進める人だからです。
仕事が順調なときには、その違いはあまり見えないかもしれません。しかし、トラブルや想定外のことが起きたときに、その人がどう向き合うかはよく見えます。「どうすればできるだろう」「今の自分にできることは何だろう」と考え、必要であれば周囲の力も借りながら前へ進もうとする。その積み重ねが、「この人なら何かあっても相談しながら進めてくれる」という信頼になり、次の仕事につながっていくのです。
③ フィードバックを、次の仕事に生かせる人
― 「伝えて終わり」にならない人には、もっと任せたくなる ―
三つ目は、上司や周囲から受けたフィードバックを、次の仕事に生かせる人です。私は、成長が早い人には「素直さ」があると感じています。ただし、ここでいう素直さとは、上司の言うことを何でも聞くことではありません。自分の意見を持たず、言われた通りに行動することでもありません。
大切なのは、何かを指摘されたときに、すぐに「でも」「それは違う」と跳ね返すのではなく、一度受け止めてみることです。「なるほど、そういう見方もあるんだ」「自分には見えていなかったかもしれない」「では、次は少し変えてみよう」。そうやって、フィードバックを自分の行動に変えられる人は、経験を重ねるたびに少しずつ仕事の質が上がっていきます。
上司の立場からすると、この変化は意外とよく見えています。前回、「もう少し早い段階で相談してほしい」と伝えた人が、次の仕事では早めに相談してくれた。以前、「結論から説明するともっと伝わりやすい」と伝えた人が、次の会議では話し方を変えていた。ほんの小さな変化でも、「前に伝えたことを意識してくれている」と分かります。
すると上司側にも、「この人に伝えれば、次に生かしてくれる」という感覚が生まれます。そして、その感覚は「もっと教えたい」「もう少し難しい仕事も経験してもらいたい」という気持ちにつながっていきます。反対に、何度同じことを伝えても行動が変わらなければ、上司としては新しい仕事を任せることに慎重になってしまいます。
人は、最初から完成された状態で仕事を任されるわけではありません。仕事を任され、フィードバックを受け、それを次に生かし、また少し難しい仕事を任される。その繰り返しの中で成長していきます。だからこそ、「今どれだけできるか」以上に、「経験したことからどれだけ学べるか」が、その後のキャリアを大きく左右するのだと思います。
☑️ 「次も任せたい」は、日々の小さな信頼から生まれる
― 仕事が集まる人は、期待を積み重ねている ―
ここまで、「次も任せたい」と思われる人の三つの共通点についてお話ししてきました。「まずはやってみます」と一歩を踏み出せること。「できません」で終わらず、「じゃあどうするか」を考えられること。そして、フィードバックを受け止め、次の仕事に生かせることです。
この三つに共通しているのは、特別な才能ではありません。圧倒的な成果を出さなければできないことでもありません。むしろ、毎日の仕事の中で少しずつ積み重ねられる姿勢です。そして、その小さな積み重ねを、上司や周囲は思っている以上によく見ています。
「この人なら、とりあえず一度やってみてくれる」「困ったときにも、自分なりに考えて相談してくれる」「伝えたことを次に生かしてくれる」。そうした安心感が一つずつ積み重なることで、「この人には次も任せたい」という信頼に変わっていきます。そして次の仕事を任されることで経験が増え、その経験がまた次の仕事につながっていく。仕事が集まる人には、こうした小さな循環が生まれているのだと思います。
私はこれまで多くの評価会議を見てきましたが、最初から完璧だった人ばかりが評価されてきたわけではありません。むしろ、「まだ経験は少ないけれど、伸びそうだよね」「次の仕事も任せてみたいよね」と、未来への期待を集める人が、少しずつ大きな役割へ進んでいく姿を何度も見てきました。
評価とは、これまでの成果だけに与えられるものではありません。その人のこれからに対する期待も、そこには含まれています。
だから、「もっと仕事を任せてもらえる人になりたい」と思ったとき、最初から完璧になる必要はありません。目の前の仕事の中で、まず一歩踏み出してみる。難しいことがあったら、自分なりに「どうすればできるか」を考えてみる。そして、もらったフィードバックを、次の行動で一つだけでも変えてみる。
その小さな積み重ねが、いつか周囲からの「この人なら、次も任せたい」という言葉につながっていくのだと思います。
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