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里山の伝道師・今森光彦 成瀬が教えてくれない大津観光案内 ⑩

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すっかりご無沙汰してしまった。
大津は歴史文化遺産が豊富にある。しかも、大津には琵琶湖比叡山をはじめとする美しい自然がある。一口に自然と言っても、さらに身近なものが里山である。日本人には里山に身を置くと郷愁を覚えるDNAが埋め込まれているらしい。
以前にこのシリーズでは、叶匠壽庵かのうしょうじゅあんが運営する里山の苑地「寿長生すないの郷」を紹介した。これ以外にも大津は里地里山が多く、里山ブームの先鞭を付けた地でもある。

里山とは、一言で言えば「人が住む地域にある、人が造り出した自然」である。雑木林や田んぼ、ため池などは、手つかずの自然ではなく、人間の営みにおいて造られたものである。春にはふきのとうが顔を出し、水路にはメダカが泳ぎ、畦にはつくしが生えてくる。幼い頃はわらび採りを楽しんだことを思い出す。しかし、近年では里山が放置されて本来の機能を失いつつある。持続的な環境保全がなければ里山は維持できないのである。

危機に瀕する里山の再生に取り組む大津出身在住の写真家がいる。彼のフィールドワークを紹介しつつ、大津の里山散歩にご案内しよう。
読み進めるにしたがって、誰もが見覚えのある風景が脳裏に甦るだろう。里山に足を踏み入れて身も心もリフレッシュしてはいかがだろう。


写真家・今森光彦

大津の街中に生まれ育った今森光彦は、現在は田園地帯の片隅に自宅アトリエを構え、里山の自然風景や昆虫、琵琶湖などを撮影している。
プロのカメラマンになってからは、熱帯雨林から砂漠まで世界各国の自然を撮影した。日本での活動が主となってからは、環境保全などにも注力しながら様々な発信を行っている。また、切り絵(ペーパーカット)作家としても活動している。

ちなみに、弟の洋輔は琵琶湖の生物などを精緻に描く画家である。

弟・洋輔が描く琵琶湖の魚

今回の記事そのものをテーマにした兄弟での共著もある。「琵琶湖里山ふるさと散歩」である。

今森には熱心なファンが多い。単に自然を写すだけではなく、われわれがあらゆる生物と共生していくための環境づくりを示唆してくれるからだろう。

メディアへの露出は多いが、特にNHKとの縁は深く、多くの番組を手がけてきた。

NHK『ニッポンの里山』の撮影も今森が担当している。

『映像詩 里山』

里山の概念を一般に知らしめて、耳馴染みのある言葉に押し上げたのが、NHKスペシャルであった。

今森はこの作品において、根気強く定点観察するなど撮影全般を取り仕切り、『映像詩 里山』は国内外から大きな反響を呼んだ。
映像の中には、今森が住む大津市内で撮影されたカットも少なくない。

オーレリアンの庭

仰木おおぎにある今森の自宅アトリエには、今森の理想とするライフスタイルが詰まっている。オーレリアンとは「蝶を愛する人」を意味するという。

野池(ため池)まで敷地内に自作したのは大したものだ。個人宅なのでオーレリアンの庭がある所在地をここでは明記しないが、ネットからでも割と簡単に見つかるのは公然の秘密だよ。

比叡山北麓の里山

大津市中北部の農村地域は、豊かな里山が広がる。JR湖西線比叡山坂本駅から堅田駅までの区間がそれに当たる。
湖西線と湖西バイパスより西側の比叡山北麓は、琵琶湖を臨む棚田と雑木林が広がる別天地である。

雄琴

おごと温泉は男性向け歓楽街の近くにあるが、近年ではファミリーにも人気の温泉街で琵琶湖に面している。大津観光に里山めぐりを盛り込むなら便利で快適な宿泊地だな。

おごと温泉に程近い高台にあるハーブ園では、ハーブに関するワークショップが開かれている。

オーパルでは、琵琶湖でカヌー体験をしたり、里山めぐりに強い味方の自転車をレンタルできるぞ。

個人的には千野の集落がじんわりと面白く感じる。

林に囲まれた高台にあるひっそりとした集落には、良源(元三がんさん大師)の母・月子が隠棲したと伝えられる。

千野には祠と愛宕燈籠が点在する

仰木

仰木は、今森が生活しながら里山保全に精を出す地だ。特に上仰木地区は比叡山麓から琵琶湖を見下ろせる棚田の風景が見事だな。

仰木の棚田から琵琶湖を望む。遠く沖島が見える(家庭画報より)

比叡山の北麓から仰木峠を越えると大原女おはらめの里として知られる京都大原に出る。峠に至る道の中腹まで棚田が広がる。

印象深い馬蹄形の棚田も仰木にある。

馬蹄型の棚田 びわ湖大津経済新聞

今森が関係する里山保全活動拠点が、仰木にあるめいすいの里山である。メンバーは仰木で里山の再生に取り組んでいる。


仰木では至るところできちんとお供えされた地蔵を見かける

庭園が見事な東光寺に身を寄せながら、仰木の人々が捧げた深い信仰に思いを馳せる。

千日回峰行を達成した大阿闍梨の光永圓道が住職を務める覚性律庵かくしょうりつあんは、仰木の奥まった場所にひっそりと佇む。三井家の別荘であった城山荘の建築物が移築された堂宇は独特の風情を醸す。

覚性律庵に繋がる細道の手前にあるのが小椋神社だ。仰木の村祭りといえば田植えの儀式である。

小椋神社例祭「泥田祭り」

ちなみに、神社は森に囲まれていることが多く、これを鎮守ちんじゅの森と呼ぶが、里山とはまた別物だそうである。

伊香立いかだち

比叡山の北端に当たる東側の斜面が伊香立である。琵琶湖大橋鯖街道を結ぶレインボーロードに面した地域である。

ブライアン・ウィリアムズは、世界放浪の途中で伊香立に住み着いたアメリカ人の画家である。ちなみに、伊香立には途中という集落があるが、この話とは無関係である。うねった曲面に描く伊香立と琵琶湖の風景は、浮遊感とともに見る者を包み込む。

東近江市にある紅葉で有名な永源寺法堂の天井画は、ウィリアムズによる新作である。

ウィリアムズの曲面絵画Boss百町物語にて常設展示されている。

おっと、グルメ情報が一つもなかったね。志満家しまやは、鯖寿司が自慢の料理屋で、手頃に懐石料理を堪能できる。

大津の里地里山

大津市で里山を検索すると、除外しない限りは一里山いちりやまが多くヒットしてしまうが、もちろんここで言う里山ではない。
前述の仰木、龍谷の森、大戸川流域の里地里山が、環境省による重要里地里山に指定されている。
大津市南部エリアの奥山自然地域と都市地域の中間に位置する地域は、広く里地里山風景が見られる。
また、北部エリアでは比良山地の麓にも里山が多く、独特のシシ垣の遺構に往時の農村のあり方が垣間見える。

比良山麓のシシ垣

成瀬聖地巡礼や名所旧跡をめぐるのもいい。
これに加えて、散策に一歩足を伸ばせば、私達が忘れかけていた自然との関わりを手軽に取り戻せる。
エコツーリズムと気張って里山保全に汗を流すも良いが、まずはゆっくりと琵琶湖の里山散歩に出かけてはいかがか。くれぐれも花粉症対策はお忘れなく!

成瀬あかりは、中心街に近いにおの浜に住むので、市内の里山を頻繁に訪れることはないかもしれない。しかし、理系に進んだ成瀬のことだから、里山の生態系には興味津々だったに違いない。


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