#84『薄明』14章:挑戦③
前回のお話はこちら
あらすじはこちら
昼下がりの社長室が緊迫した空気に包まれていた
父の容赦のない追及が続く。
──西園寺は慈善団体ではない。
現場の士気を下げてまで、お前の個人的な『救済』に付き合う義理はない……──
茉莉は父の厳しい指摘に一瞬たじろいだが、落ち着いて自分の言葉を紡ぎ出す。
「お父様、現場の負担を懸念されるのは…当然です。
それでしたら、現場に送るのは学生ではなく、一定の基準──素行、学力…それらをクリアした上で本社の徹底した事前研修をパスし、西園寺の理念を叩き込まれた即戦力候補だけに限定するのはいかがでしょうか」
茉莉は『プランB』という資料を差し出した
「彼らは単なるインターンではありません。
本社が育成コストを全額負担し、実力が保証された段階で現場に供給するエリート予備軍です。
現場にとっては、採用コストゼロで志の高い戦力が手に入る、むしろ歓迎すべきリソース提供になります。
また現場には部門長の業績評価の指標(KPI)に「次世代人材育成貢献度」を追加することで、
育成を『負担』ではなく、『評価』にする。
それなら、現場のやる気も出るはずです。……どうでしょうか?」
「………。」
征嗣は組んだ腕を外さずに険しい顔で茉莉の提案を聞いていた
「ある程度の初期費用は必要かもしれません。
しかし労働人口が減少する中、グループに恩義を感じ、かつ優秀な人材を学生のうちから確保することは、
将来的な採用コストを大幅に削減する先行投資です。
それから、交通インフラをも担う西園寺グループにとって、交通遺児支援は単なる慈善ではなく、ESG経営、(※②)「事業責任の完遂」です。」
※②
環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(企業統治)(Governance)の3要素に配慮した経営や事業活動
「交通事故死ゼロを理念に掲げ、被害者支援まで含めて責任を果たす。
これが行政とのパイプを強固にし、
新規入札や事業認可において圧倒的な優位性を生みます。
お父様、これは、可哀想な子供たちを助ける話というだけじゃない。
10年後の西園寺の人材ポートフォリオ戦略なのです。」
茉莉はこの事業が個人的な救済ではなく、西園寺グループの永続的な利益のための戦略であるのだと鮮やかにプレゼンしてみせた。
「──そして。」
茉莉は背筋を伸ばし、最後に資料にはない重要な一言を付け加えた。
「彼、彼女らにとって、西園寺が救った第一号の少年──
交通遺児という立場から今の地位までのし上がった櫂が、その最高のロールモデルとして皆の憧れになるでしょう。」
続きは明日21時頃更新予定です
専門用語が多くて分かりづらい回かもしれません💦🙇🏻♀️
なんとなく、の雰囲気でさらっと読んでもらっても構いません。
ご質問等あればコメント欄で説明しますのでお気軽にどうぞ(^^)(感想もぜひ!)
