#13薄明スピンオフ『九条稜真の恋』
こちらの物語は、先日完結した長編恋愛小説『薄明』の番外編(スピンオフ)ですが本編をお読みになっていない方でも単体でお楽しみいただける内容になっていますので、本編未読の方もぜひ気軽にお読みください。
前回のお話はこちら
薄明スピンオフ 九条稜真の恋
第13話
吉田が死んだという知らせを受けた時、私は日本にいた。
絶景を巡る旅のプロデュースや視察のため、ニュージーランドの未舗装の道をレンタルした車で走っていた時に、何らかのアクシデントがあって横転、滑落したらしい。
タイヤを取られたのか、野生動物が急に飛び出したのか。
吉田は自分でレスキューを呼んでいた。
ドクターヘリで運ばれたらしい。
なのに助からなかった。
うそでしょ吉田。
何してんの?
バカじゃないの?
何勝手に死んでんの?
私たちの会社、まだ始まったばっかじゃん。どうすんのよ。
何で急にいなくなっちゃうのよ
私一人で一体どうしたらいいってのよ。
ちょっとさっきからうっさいな
何この動物みたいな鳴き声。
戻してよ
ねえ神様
吉田がニュージーランドに行く前に戻して
行かないでって言うから
危険なことしないでって言うから
お金ならいくらでも出すからさ
全部あげるから戻してよ
誰か吉田を助けてよ
お願い
お金なんかいらないから
吉田を返して
だって私言ってない
一回もあの人に伝えてないの
まさかこんなことになるなんて誰も思わないじゃんね
ねえ、あんたに好きって言ってないよ吉田
一回も
ただの一度も言ってない
一度も伝えてない
お願い神様
吉田に会わせて
そしたらわたし今すぐ言うから
好きだって、今すぐ
今すぐ
今すぐに
何度でも言うから
笑ってよ吉田
笑って、俺もだよ、って言ってよ
好きだよ吉田、大好きだよ
いかないでよ
ひとりにしないで
置いていかないで
こんなのひどすぎるよ
……あ、なんだこの動物みたいな声
私じゃん
へえー、人ってこんな声出るんだ…
黒い額縁の中で吉田が笑う
吉田
知らないでしょ
私ね
ずっとあんたが大好きだったんだよ?
続きは明日21時頃更新予定です
