真味糖 開運堂 長野県松本市 和菓子なスクチャイ189 2025.11.29
和菓子なスクチャイ189 長野県 > 松本市(安曇野市)
※くまの身長は7.5cm。大きさの参考に。
真味糖 開運堂 長野県松本市








1.明がらす=弥生御前=真味糖?
以前、岩手遠野の「明がらす」と長野市の「弥生御前」を書いた時、「松本市にも弥生御前みたいなお菓子があるよ」とコメントで教えてくれた人がいた。
それでずっと気になっていて「真味糖」をそのうち食べてみようと思っていた。
2.長野駅ビルで「真味糖」を入手
このたび長野駅ビル内の土産物屋さんに松本市の銘菓「真味糖」も売っていることを知ったのだ。
前もって電話して「真味糖」が売っていることを訊いておいたのだが、売り切れになる恐れはまったくないので取り置きしなくても来れば買えますよ〜とのことだった。
ともかく松本市の銘菓「真味糖」が長野駅で買えるとは便利なものだ。
それで吾輩は長野駅に行った時にめでたくこの「真味糖」を手に入れることができた。
6個入りで税込983円だった。
3.弥生御前=新味糖=ヌガー?
「弥生御前」の場合もそうだったが、この「真味糖」の場合、和風ヌガーなどと表現されているのが気になった。
吾輩はヌガーが苦手なのだ。あの歯にくっつく感じがどうも嫌なのだ。
知らないお菓子は一度は食べたい気持ちはあるが、最初からヌガーとわかっていたら拒否したい気持ちだった。
しかし、以前の「弥生御前」はヌガーのように歯に着くこともなく、落雁よりも繊細な粉を固めたようでどちらかと言うと軽快な噛み心地でサクサクと食べられるお菓子だったのだ。
「弥生御前」はむしろ吾輩好みのお菓子で、幸いなことにどこもヌガーではなかった。
そう言うわけでコーフン気味に「弥生御前」の話を書いたのだったが、そこに松本の「真味糖」と似てるよ〜とコメントが入ったのだった。
そういう経緯なので「真味糖」もヌガーではない可能性が高いと思いたい。
4.食べた




吾輩が食べた感触では、確かに「真味糖」は質感的に「弥生御前」だった。
しかし遠野の「明がらす」とは少し質感が違うのだった。「明がらす」はもう少したわむほどに柔らかい。
いずれにせよ、断じてヌガーではないのは幸いだった。
ヌガーはくっつく感じと強く伸びる感じがあるが、伸びなどまったくないし、「弥生御前」と同じく黒板に書く白墨(チョーク)のようでポキッと折れるような質感だ。
ただ、「真味糖」はやや厚みがあってずんぐり大きい感じだ。
「弥生御前」は薄べったい正方形だった。
形と大きさは違うが、作りは同じだ。
共に美味しくて吾輩好みだ。
ヌガーでなくて良かったね。
さて、そしたら「弥生御前」か「真味糖」のどっちが好き?と問われると、どちらも好きだが、食べやすさで言えば正方形で薄い「弥生御前」の方だ。
「弥生御前」は16個入りで税込1,890円で、「真味糖」はずんぐり大きめが6個で税込983円だ。
体積からしてほぼ同じ値段と言えそうだった。
どちらも高級チョコレートほどのいい値段だが、良い素材を使っているのだから仕方のないところだろう。
どちらも結構高級なお菓子の位置付けということで、その辺のスーパーのお菓子コーナーに売っている100円かそこらのビスケットやクッキーなどのお菓子とは違うのだ。
お茶会で立派な茶菓子として成立する銘菓なのだ。
それを畏れ多くも吾輩は結構むしゃむしゃと食べてしまった。
まあ食べるために買ったのだからいいじゃないか。
再度書くが、「真味糖」はとても美味しくて「弥生御前」と共に吾輩の好みのお菓子になった。
5.「開運堂」について
開運堂は、松本という「城下町」かつ「茶の湯文化」が深く根付いた街で伝統を守りながらも常に新しさを取り入れてきた名店だ。
開運堂の創業は明治17年(1884年)で、もともとは江戸時代から続く呉服商だったが、明治時代に菓子業へ転身した。
松本の老舗らしい格調高い和菓子はもちろんだが、昭和34年(1959年)という早い時期から本格的に洋菓子(「パリの五月」ブランド)を手がけているのも特徴なのだ。
松本民芸家具の創設者池田三四郎や、世界的染色家柚木沙弥郎(ゆのきさみろう)など、多くの芸術家と交流があった。
商品のパッケージや広告には彼らの作品が使われており、その美しさも人気の理由だ。
ちなみに松本の本店には「世界初」と言われるロボットがソフトクリームを巻いてくれる機械があり、老舗の厳格さと遊び心が共存している。
6.銘菓「真味糖」について
真味糖は、開運堂の歴史と松本の茶道文化を象徴する最高級の干菓子なのだ。
6.1.名前の由来と「歌舞伎」との縁
大正時代に考案された当初は、表面に見えるクルミの断面が歌舞伎の隈取りに似ていたため、「歌舞伎くるみ」という名で銀座の歌舞伎座でも販売されていた。
ところが昭和初期、松本で開かれた茶会でこの菓子を口にした裏千家淡々斎(たんたんさい)宗匠が「茶席菓子としてこれほど優れたものはない」と絶賛し、「真実の味、真の味」という意味を込めて「真味糖」と命名された。
6.2.味わいと食感は和風ヌガー?
素材は砂糖、蜂蜜、卵白、寒天、そして信州特産の「鬼胡桃」だ。
見た目は硬そうだが口に入れるとホロリと崩れ、蜂蜜の濃厚な甘みとクルミの香ばしさが広がる。
フランスの「ヌガー」に見た感じが似ているかもしれないが、より上品でキレの良い後味が特徴だ。
先の記事に書いた盛岡の「山善」のエピソードと同様、開運堂の真味糖も美智子上皇后陛下にゆかりのあるお菓子として知られている。
上皇后陛下は「真味糖」を大変好まれており、松本をご訪問された際やお取り寄せ、また皇室の茶会などでも用いられたことがあると伝えられている。
皇室の方々が召し上がるほど「上品で控えめな甘さ」と「素材の良さ」が認められており、長野県を代表する贈答品の筆頭として扱われている。
7.真味糖の「生」
真味糖には通常の干菓子の他に、よりしっとりとした「真味糖 生(なま)」も存在する。
非常に濃厚な甘みがあるため、濃いめに点てたお抹茶、あるいは渋めの日本茶と一緒に、小さく切り分けながらゆっくりいただくと最高だ。
パッケージ(柚木沙弥郎氏のデザイン)も非常に美しいため、大切な方への贈り物としてこれ以上ない品になる。
前回書いた盛岡山善の「もりおか絵巻」もそうだが、皇室に愛されるお菓子には共通して「その土地の素材(くるみなど)」と「職人の誠実な仕事」が感じられるものだ。
(おわり)
