この小説は出来事を楽しむ話ではありません。「感情をどう言葉にするか」 を読ませるタイプの文学です。だから「何が起きたか」より、 主人公の心がどんな順番で変わったか を見ると急に面白くなります。
ここからはさらに詳しく知りたい人向けに、一段深く読みます。
この小説は出来事を楽しむ話ではありません。
「感情をどう言葉にするか」 を読ませるタイプの文学です。
だから「何が起きたか」より、 主人公の心がどんな順番で変わったか を見ると急に面白くなります。
深掘りテーマ①
この小説は「帰宅」の話じゃない。「現実に戻る話」
表面では、
主人公が夜道を歩いて家へ帰る。
ただそれだけです。
でも心の中では別のことが起きています。
主人公は明らかに何か大きな出来事の後です。
その出来事は直接書かれません。
彼女と別れたのか。 大切な時間が終わったのか。 何か区切りがあったのか。
読者に断定させない作りです。
だから最初から主人公はこうなっています。
地に足がつかない
これって不思議な表現です。
普通なら、 「悲しい」 「嬉しい」 と書けばいい。
でも作者はそう書かない。
なぜか。
主人公自身が、 まだ自分の感情を理解できていないからです。
深掘りテーマ②
「蝶」は変身の象徴
タイトル。
冬の晩、蝶と僕
冬なのに蝶。
普通はいません。
つまり最初から現実じゃない。
蝶は何かの象徴です。
蝶ってどんな生き物でしょう。
卵 ↓ 幼虫 ↓ 蛹 ↓ 蝶
変わる生き物です。
つまり蝶は、
変化 成長 新しい自分
の記号です。
途中で主人公は蝶を触ります。
引っ張ります。
最後は一匹だけ残ります。
つまり主人公の中で、
変わりたい気持ちと、 変わりたくない気持ちが戦っている。
一匹消えるのは、 何かを手放した瞬間かもしれません。
深掘りテーマ③
「彼女」は本当に彼女なのか?
ここがかなり面白いです。
主人公はこうします。
白いコートの人に彼女の顔を当てはめる
これって実際には存在していません。
つまり主人公は、
現実を見ていない。
記憶を重ねている。
これは失恋だけじゃなくて、
人が喪失した時によく起きることです。
誰かを失うと、
街中の似た人を見る。
声が似ている。
背格好が似ている。
脳がまだ受け入れていない。
でも主人公は途中で、
やめた
と言います。
ここ重要です。
追いかけ続けない。
少し現実を見る。
小さいけれど成長です。
深掘りテーマ④
洋菓子屋の男は「未来の自分」
ここ、文学っぽい読み方をします。
男は主人公と似ています。
同じスーツ。
身だしなみ。
照れた顔。
しかも、
お互い頭を下げて笑う。
普通に読むと変です。
知らない人同士なのに。
だからこれは象徴です。
主人公はその男に、
「幸せそうだ」
と思う。
でも考えてください。
相手は主人公を見て笑っている。
つまり逆も成立します。
主人公も、 外から見ると幸せそうだった。
自分では気づいてないだけ。
ここ、すごく静かな救いです。
深掘りテーマ⑤
サンタの記憶=「期待することへの怖さ」
ここ難所です。
普通の子ども。
目を閉じる。 →朝になる。 → プレゼント。
主人公。
目を開ける。 → ずっと待つ。 →何も起きない。
これ、ただの思い出じゃない。
主人公の生き方です。
期待すると傷つく。
だから先回りして期待しない。
でも最後、
主人公は過去を思い出して笑っています。
つまり、
「あの頃の自分、案外悪くなかった」
と少し許せている。
深掘りテーマ⑥
最後の服を脱げない場面の本当の意味
ここは名場面です。
服を脱ぐ描写が異常に長い。
なぜ?
服=社会の自分
なんです。
スーツ。 ネクタイ。 ジャケット。
全部、
外向きの自分。
でも第一ボタンだけ外せない。
つまり、
まだ今日を終われない。
心が脱げない。
そして最後。
羽化することのない、永遠の蛹
蛹って苦しい時期です。
でも同時に、
蝶になる直前でもあります。
主人公はいま、
完全な不幸ではない。
完成もしてない。
途中です。
この小説の本当のテーマ
この話は恋愛小説じゃありません。
青春小説でもありません。
これは、
「人は変わる瞬間、自分でも何が起きているかわからない」
という小説です。
だから最後も答えは出ません。
でも主人公は帰った。
蝶は一匹残った。
つまり、
まだ終わっていない。
次の朝へ続いています。
