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「甘党と夜の入り口」 〜🐯Tiger’s eye〜

📝 まえがき

このお話は「はみだし親衛隊員・追補」として書いた、野浪さん視点の一幕です。
姐さん(センセイ)の手料理会を舞台に、賑やかな組員たちの様子と、その裏にある野浪さんの独占欲を描きました。
甘党の一面と、虎の目で見据える独占欲。その落差が「野浪理一らしさ」なのかもしれません。


📖 🐯「甘党と夜の入り口」野浪視点

食事会の夜。
センセイとタカが腕を振るったサンマや肉じゃがの匂いが、まだ部屋に残っている。

俺はコンビニ袋を片手に、ひょっこり顔を出した。
「……まだやってたか」

一斉に立ち上がる舎弟たち。
「お疲れ様っスーッ!!」と歓声が上がる。

袋から取り出した甘いものを机に並べると、場の空気がさらに沸き立った。
組員たちに先を譲り、最後に一つ残ったシュークリームを手にしたセンセイが、ひと口齧る。
口元にプチュっとはみ出したクリームを恥ずかしそうに拭う姿に、組員たちが爆笑する。

――ああ、ここが家なら、そのクリーム、俺が舐め取ってやるのに。

この夏からほぼ月1で続いている『姐さんの手料理会(仮)』。
準備も片付けも大変そうなのに、センセイは何故か気に入っていて、楽しそうだから俺も強くは止めたりしない。
組織としても「同じ釜のメシ」を食うのは連帯感や結束感を高める意味で悪くない。

……だが、本音を言えば、俺はイヤだ。
ふたりきりで過ごす時間が減るから。

その賑わいの中で、俺の視線は別の場所にあった。
リョウ。

若いその目が、無意識にセンセイを追っている。
皿を手に立ち上がるときも、笑いに混ざるときも。
その一瞬一瞬を――俺の虎の目は見逃さなかった。

――惚れんなよ。俺のだからな。

後片付けに紛れ、皿を下げるふりをしてリョウに近づく。
耳元で低く囁くと、彼は「へ?」と目を丸くし、必死に両手を振った。
「イヤイヤイヤイヤ……!」
否定のジェスチャーに、俺は小さく鼻で笑う。

その時、賑やかな声が飛び込んできた。
「よ〜し!珍しく全員揃ってるし、みんなで飲みに行くか〜!」

龍(リュウ)の掛け声に、舎弟たちが「オオ〜!」と一斉に賛同する。
「野浪さん、どうします?」と聞かれて、俺は軽く手を振った。
「いや、俺はいい。お前たちで行って来い」

財布から札を抜き取り、卓上に置く。
「飲み代の足しにしろ」
「ありがとうございます!」と歓声が上がり、場の熱気はさらに増した。

センセイは、そんな様子を笑顔で見送っていた。
俺は彼の肩に手を置き、軽く引き寄せる。
「……センセイ、疲れただろ? 帰ろう。な?」

少し驚いたように目を瞬かせたセンセイは、素直に頷いた。
「はい」

彼は俺の胸の奥を知らぬまま、ただ無邪気に微笑んでいた。

舎弟たちは大歓声のまま夜の街へ消えていく。
その背を見送りながら、俺の隣で笑うセンセイと――
複雑な表情で立ち尽くすリョウの姿が、対照的に目に映った。

🌙 ――完


📝 あとがき

野浪さんにとって、組員たちと共に食卓を囲む時間は確かに大事。
けれど本音を言えば、センセイを誰にも取られたくない。
そんな彼の複雑な想いを、リョウとの視線のやり取りに込めました。

「惚れんなよ。俺のだからな。」
この一言が、野浪さんの全てを表している気がします。

読んでくださってありがとうございました。

👇リョウくん目線でのお話はこちらからお読みいただけます🎵


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