視えてしまう世界の話──100物語まで、あと少し。
「ねぇ……知ってます?」
怪談には昔から、こんな話があるんですよ。
“百物語”っていう遊び。
夜に人が集まって、
蝋燭を100本並べて、
怪談を1話ずつ語る。
語るたびに、
1本ずつ火を消していく。
そして最後の100話目。
最後の灯りが消えた時、
“この世ではない何か”が現れる。
……っていう話。
まぁ、昔の遊びですからね。
今の時代、
そんなの信じる人なんて少ない。
……少ないんですが。
実はね。
私、この「視えてしまう世界の話」を書き始めた時、
別に100話なんて考えてなかったんですよ。
ただ、
「昔あった不思議な話」
「病院で聞いた話」
「実際に体験したこと」
それを、
ぽつり、ぽつりと書いていただけなんです。
なのに気付けば……
今、
89夜。
あと11話。
……ここまで来たんです。
不思議ですよね。
ここまで来ると、
読者さんからも言われるんですよ。
「100話目、何か起きそうですね」
って。
いやいや、
そんなことないでしょうって笑うんですけど……
実は。
少しだけ、
変なことが増えてるんです。
例えば。
第70夜を書いていた夜。
誰もいないはずの廊下から、
“ペタ……ペタ……”って足音が聞こえた。
まぁ、
家鳴りかもしれない。
疲れてたのかもしれない。
そう思って、
続きを書いてたんです。
そしたら。
スマホの画面が、
真っ黒になったまま、
突然こう表示された。
【つづけて】
……通知でもない。
アプリでもない。
ただ、
黒い画面に白い文字。
【つづけて】
だけ。
ゾッとして、
一回スマホ閉じました。
でもね。
怖いのに、
なぜか書くのを止めようとは思わなかった。
それどころか。
“続きを待ってる何かがいる”
そんな感覚が、
ずっとあるんですよ。
変でしょう?
でも、
読者さんの中にもいるんです。
「読んでる時だけ、後ろが気になる」
「病院の話を読んだ日に、ラップ音がした」
「夜中に読んでたら、勝手にイヤホンが接続された」
……なんてね。
もちろん、
偶然かもしれない。
全部、
気のせいかもしれない。
でも。
怪談って、
そういうものなんですよ。
“信じるか信じないか”
じゃない。
“気になってしまった時点で、始まっている”。
昔、
あるお寺の住職さんに言われたことがあります。
「怪談はね、“扉”なんだよ」
って。
怖い話そのものじゃない。
“思い出すこと”
“気にすること”
“振り返ること”
それが、
向こう側との境界を薄くする。
……って。
だからね。
この連載も、
もしかしたら同じなのかもしれません。
1話読む。
また次が気になる。
気付けば、
毎晩読んでしまう。
「今日はやめておこう」
そう思ったのに、
開いてしまう。
そして、
いつの間にか。
“向こう側”に近付いていく。
まぁ、
大袈裟な演出だろって、
笑う人もいるでしょう。
でも……
ここまで読んだあなた。
今、
少しだけ後ろ、
気になりませんでした?
……。
…………。
さて。
100物語まで、
あと少し。
本当に最後まで辿り着けるのか。
100話目に、
何を書くのか。
そもそも、
“100話目を書き終えられるのか”。
実は、
私にもわかりません。
ただ一つ言えるのは。
この連載には、
作り話だけでは説明できない“何か”が、
時々混ざるんです。
病院。
古い家。
夜道。
寺。
写真。
動画。
留守電。
ナビ音声。
読者さんから届いた実話。
そして、
私自身が“見てしまったもの”。
この「視えてしまう世界の話」は、
ただ怖がらせるためだけの怪談ではありません。
読んだあとに、
少しだけ考えてしまう話。
“本当に怖いものは何か”を、
静かに置いていく話です。
もし、
あなたがまだこの連載を読んだことがないなら。
……ちょうどいいのかもしれません。
今なら、
まだ戻れます。
でも。
もし1話を開いてしまったら。
もしかすると、
あなたも100物語の“参加者”になるのかもしれません。
次の夜も、
きっと続きを読みに来てしまうでしょうから。
では……
また次の夜に。
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