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空席の王 ──奴隷だった俺が最強の仲間を召喚して世界を支配するまで⑨

第九章

“王座の記憶”


空気が、
壊れていた。

白い“手”が天門から現れた瞬間。

世界から、
音が消えた。

風も。

悲鳴も。

炎の音すら。

まるで、
世界そのものが“沈黙”を強制されている。

兵士達は、
動けなかった。

本能が理解している。

見てはいけない。

近づいてはいけない。

“理解された瞬間に終わる”。

そんな恐怖。

ガルドは地面へ崩れ落ち、
震える声を漏らした。

「なんだよ……」

「なんなんだよ……アレ……」

返事はない。

誰も答えられない。

フェルグラードですら、
黄金炎を荒れ狂わせながら睨んでいる。

ゼルヴァは剣を構えたまま、
低く呟いた。

「……クソ」

「よりによって“外側”かよ」


ルミアが息を呑む。

「ゼルヴァ……知ってるの?」

銀髪の女は、
珍しく笑っていなかった。

黄金と深紅の瞳が、
真っ直ぐ“白い手”を睨んでいる。

「昔」

“神代戦争”で見た」

空気が凍る。

ルミアの顔が青ざめた。

「う、そ……」

「神代戦争って……」

「数千年前……!?」

ゼルヴァは答えない。

ただ。

巨大な漆黒の剣を握る手に、
力を込める。

レインは気づいた。

……震えている。

ゼルヴァが。

あの“竜殺し”が。

レインの胸がざわつく。

それほどなのか。

アレは。

その時だった。

“白い手”の無数の目が、
一斉にレインを見た。

──ゾワッ

全身が粟立つ。

脳へ直接、
氷を流し込まれる感覚。

視界が歪む。

次の瞬間。

レインの意識が、
引きずり込まれた。

──暗闇。

いや。

違う。

“宇宙”。

星々。

崩壊した世界。

燃える空。

無数の玉座。

その中央。

巨大な“黒い王座”。

そして。

そこに座る影。

顔は見えない。

だが。

声だけが響く。

《見つけた》


レインは息を呑む。

「誰だ……」

影は答えない。

代わりに。

無数の“死体”が見えた。

竜。

神。

天使。

怪物。

全て、
王座の下へ積み上がっている。

血の海。

終わった世界。

その中央で。

“王”だけが座っていた。

《王座は終わっていない》

《空席は、まだ埋まっていない》


レインの頭に激痛が走る。

「ぐっ……!!」

視界が戻る。

現実。

戦場。

ルミアが叫んでいた。

「レイン!!」

「しっかりして!!」

レインは膝をつく。

呼吸が乱れる。

心臓が暴れている。

今のは何だ。

記憶?

幻覚?

違う。

“王座の記憶”。

そう直感した。

その時。

白い手が、
ゆっくり動いた。

空間が裂ける。

たった指を動かしただけで、
山脈が消し飛んだ。

──ズバァァァン!!!!

遥か遠方。

巨大な山が、
綺麗に“消滅”した。

爆発じゃない。

切断でもない。

“存在が削除された”。

兵士達が絶望する。

「む、無理だ……」

「勝てるわけ……」

フェルグラードが、
牙を剥いた。

「舐めるなァ!!」

黄金炎爆発。

その巨体が、
白い手へ突撃する。

速度。

もはや光。

神代災害同士の衝突。

──ドゴォォォォォン!!!!

空間崩壊。

空が砕け散る。

黄金炎と白光がぶつかり、
巨大な爆発が巻き起こる。

だが。

白い手は止まらない。

逆に。

フェルグラードの炎を、
“喰っていた”。

黄金が消えていく。

フェルグラードの顔から、
初めて余裕が消えた。

「なっ……!?」


ルミアが叫ぶ。

「魔力を吸われてる!!」

アルティナですら、
後退していた。

あの断罪の聖女が。

恐怖している。

レインは立ち上がる。

震える足。

怖い。

死ぬほど怖い。

でも。

逃げられなかった。

胸の奥。

黒き玉座が、
燃えていた。

怒っている。

“敵”を許さないように。

そして。

脳内へ、
新たな声が響く。

《条件達成》

《空席No.4 解放準備》

《“対天上権限存在”適合者を検索開始》

紫雷が、
世界を走った。


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