〜第79夜〜「新学期の席」
🕯️ はじめに
えぇ……
学校という場所はね……
子どもたちの声があって、
笑い声があって、
賑やかな場所なんですが……
夜になると、
急に静かになるでしょう。
昼間の気配が、
すっと消えてしまう。
するとね……
そこに残っていたものが、
見えてしまうことがあるんですよ……。
今日は、
新学期にまつわる話です。
これは、
ある先生から聞いた話です。
新学期が始まったばかりの頃。
担任の先生は、
教室の準備をしていました。
新しい名簿。
新しい席。
黒板には
「ようこそ ○年○組へ」
と書かれている。
夕方になり、
先生は一度
教室を出ました。
廊下を歩いていると……
ふと、
教室の中で椅子が動く音がした。
ギッ……
振り返る。
でも、
教室には誰もいない。
気のせいかと思い、
先生は家に帰りました。
そして翌日。
新学期初日。
子どもたちが
元気よく教室へ入ってくる。
席に座り、
出席を取る。
その時……
一人の子が言った。
「先生」
「この席、
昨日も誰か座ってたよ」
先生は
不思議に思いました。
その席は……
まだ誰も座っていない席だったからです。
空席。
転校生のために
空けていた席。
でも……
その席の机だけ、
なぜか椅子が少し引かれていた。
まるで……
誰かが、
そこに座っていたかのように。
その日の放課後。
先生は
もう一度、
教室を見回しました。
夕方の教室。
誰もいない。
でも……
窓際のその席だけ、
机がほんの少し揺れていた。
風もないのに。
先生は
ゆっくり近づきました。
机の上を見ると……
そこには、
小さな指の跡が残っていた。
埃の上に、
ちょこんと。
まるで……
誰かが
席に座っていた証拠のように。
その席は、
結局……
その年の終わりまで、
転校生が来ることはありませんでした。
でもね……
その先生は、
今でも言うんです。
夕方になると……
あの席の椅子が、
少しだけ引かれていることがあるって。
まるで……
誰かが、
新学期を待っているように。
📝 あとがき
学校には、
たくさんの思い出が残ります。
楽しい思い出も。
悲しい思い出も。
もしかすると……
その教室には、
まだ通いたかった子が
いたのかもしれませんね。
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