空席の王 ──奴隷だった俺が最強の仲間を召喚して世界を支配するまで㉞
第三十四章
“継承される王座”
虚王の身体が、
崩れていく。
黒い粒子。
紫の光。
夜空へ溶けるように、
静かに消えていく。
レインは、
思わず手を伸ばした。
「待て……!」
掴みたい。
消えてほしくない。
理由なんて分からない。
でも。
この人を、
独りのまま消したくなかった。
虚王は、
少し驚いた顔をした。
そして。
困ったように笑う。
「……お前は本当に」
「優し過ぎる」
その声は、
どこか救われたみたいだった。
終末本体が、
狂ったように暴れる。
──ギャァァァァァァァァ!!!!
巨大な肉塊。
無数の目。
無数の口。
空を埋め尽くす終末が、
必死に虚王を恐れていた。
いや。
違う。
恐れているのは。
“継承”だ。
もし。
虚王の力を、
レインが完全に継いだら。
終末ですら、
届かない存在になる。
その未来を。
終末は本能で理解している。
ルミアが叫ぶ。
「レイン!!」
「今しかない!!」
フェルグラードも吠える。
「ブッ潰せェ!!」
ノクスの深淵魔力が、
空を染める。
ゼルヴァが、
漆黒の剣を構える。
エルシアは、
涙を流しながら微笑んでいた。
皆。
信じている。
今度こそ。
この王なら、
世界を救えると。
その時。
虚王が、
ゆっくりレインへ近付いた。
崩れながら。
消えながら。
それでも。
最後まで、
優しかった。
虚王は、
レインの胸へ手を当てる。
瞬間。
──ドクン
黒き玉座が、
激しく脈動した。
無数の空席が、
一斉に紫光を放つ。
世界震動。
空間共鳴。
そして。
レインの脳内へ、
膨大な記憶が流れ込む。
孤独。
痛み。
絶望。
仲間達の笑顔。
失った日々。
守れなかった命。
虚王が背負ってきた、
全て。
レインは、
歯を食いしばる。
苦しい。
涙が止まらない。
こんなの。
独りで耐えられる訳がない。
その時。
虚王が、
静かに囁いた。
「だから」
「お前は独りになるな」
その瞬間。
虚王の身体が、
完全に光へ変わる。
──サァァァァ……
紫の粒子が、
レインへ吸い込まれていく。
終末の神が、
絶叫した。
──ギャァァァァァァァァァ!!!!
空間崩壊。
世界震動。
終末本体が、
完全発狂していた。
巨大な黒腕が、
世界ごとレインを潰そうと落ちてくる。
だが。
レインは、
静かに顔を上げた。
紫の瞳。
そこには。
以前の弱さも。
虚王の絶望も。
もう無かった。
代わりに宿っていたのは。
“継承された覚悟”。
レインの周囲へ、
紫黒の王権が溢れ出す。
空席達が、
一斉に跪いた。
──ゴン……
──ゴゴン……
完全臣従。
魂そのものが、
王を認めている。
そして。
レインの背後。
黒き玉座の最上段。
今まで空だった場所へ。
新たな紋章が刻まれる。
《継承王》
終末の神が、
怯えたように後退する。
だが。
もう遅い。
レインは、
ゆっくり右手を上げた。
その瞬間。
世界中の紫雷が、
王へ収束する。
空。
大地。
空間。
全てが、
王へ従っていた。
そして。
新たな王は、
終末を見上げながら告げる。
「……終わらせる」
その声と共に。
世界そのものが、
レインへ跪いた。

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