空席の王 ──奴隷だった俺が最強の仲間を召喚して世界を支配するまで㉝
第三十三章
“誰も救えなかった王”
虚王の言葉が。
レインの胸へ、
深く突き刺さっていた。
「昔も居れば良かったのにな」
その一言。
それだけで。
どれだけ独りだったのか、
分かってしまった。
終末は、
未だ空で暴れている。
巨大な肉塊。
無数の目。
無数の悲鳴。
世界そのものを侵食する、
“向こう側”。
だが。
そんな終末より。
今のレインには、
虚王の方が苦しそうに見えた。
黒い外套が揺れる。
紫の瞳。
その奥には、
底の見えない孤独が沈んでいた。
その時。
終末の神が、
再び咆哮する。
──ギャァァァァァァァァ!!!!
巨大な黒腕が、
空を覆い尽くした。
今度は、
世界そのものを掴み潰す気だ。
兵士達が絶望する。
「終わる……!」
「世界が……!」
ルミアが術式を展開する。
ノクスが深淵魔力を放つ。
フェルグラードが黄金炎を爆発させる。
ゼルヴァが空間を斬り裂く。
だが。
止まらない。
終末本体が、
あまりにも巨大すぎる。
その時だった。
虚王が。
小さく、
息を吐いた。
瞬間。
──ピシッ
空へ、
黒い亀裂が走る。
次の瞬間。
終末の黒腕が、
何の前触れもなく崩壊した。
──ボロボロボロ……
兵士達が息を呑む。
虚王は、
動いてすらいない。
ただ。
“そう思った”だけで、
終末が壊れている。
レインの背筋へ、
冷たいものが走る。
強すぎる。
あまりにも。
虚王は、
空を見上げたまま呟く。
「……もうやめろ」
その声。
優しかった。
怒っていない。
憎んでいない。
ただ。
疲れていた。
終末の神が、
震える。
巨大な瞳が揺れる。
恐怖。
本気で怯えていた。
その瞬間。
レインの脳内へ、
大量の記憶が流れ込んだ。
神代最後の日。
終末に侵される世界。
仲間達の死。
空席達の絶叫。
そして。
虚王。
独りで立っていた。
誰もいない。
全部失った世界で。
それでも。
最後まで、
終末と戦っていた。
その姿を見た瞬間。
レインの目から、
涙が零れる。
「……なんで」
声が震える。
「なんで、独りで……」
虚王は、
少しだけ困ったように笑った。
「誰も居なかったからな」
軽く。
本当に軽く。
まるで。
“仕方ないだろ”と言うみたいに。
その笑顔が、
レインには痛かった。
エルシアが、
静かに涙を流していた。
ノクスも俯いている。
フェルグラードですら、
拳を握り締めていた。
皆、
知っている。
この王が。
どれだけ壊れながら、
世界を守ったのか。
その時。
終末本体が、
狂ったように膨張を始める。
──ゴゴゴゴゴゴ……
空が裂ける。
星が崩れる。
世界限界。
アーク・ゼノンが警告を吐き出した。
《崩壊確率上昇》
《世界維持不能》
ルミアが叫ぶ。
「レイン!!」
「止めないと世界が!!」
だが。
虚王は、
静かだった。
ゆっくり。
レインへ振り返る。
そして。
優しく笑う。
「だから」
紫の瞳が、
静かに細められる。
「今度は、お前が救え」
その瞬間。
虚王の身体が、
黒い光へ変わり始めた。

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