空席の王 ──奴隷だった俺が最強の仲間を召喚して世界を支配するまで㉕
第二十五章
“空席の軍勢”
レインが、
王座から立ち上がる。
その瞬間。
世界の“重さ”が変わった。
──ゴォォォォォ……
空間が沈む。
空気が震える。
兵士達は、
立っていることすらできなかった。
膝をつく。
呼吸が苦しい。
魂そのものが、
“王”へ頭を垂れている。
アルティナですら、
光翼を維持できない。
「これが……」
「空席の王……」
彼女の声は震えていた。
終末の瞳が、
激しく脈動する。
空に浮かぶ巨大な瞳。
そこから、
無数の白い“手”が伸びる。
だが。
もう、
先程までとは違った。
恐れている。
終末そのものが、
レインを恐れていた。
レインは静かに空を見上げる。
紫の瞳。
そこには、
以前の弱々しさはなかった。
だが。
冷たい訳でもない。
むしろ。
深い悲しみを抱えたまま、
立っているようだった。
その時。
黒き玉座の周囲。
空席達が、
一斉に光を放つ。
──ゴゴゴゴゴ……
空席。
まだ埋まっていない席。
そこから。
“声”が聞こえ始める。
ルミアが息を呑む。
「……え」
ゼルヴァが、
ゆっくり剣を下ろした。
フェルグラードの笑みも消える。
ノクスが静かに目を閉じる。
彼らは知っていた。
この現象を。
かつて。
神代戦争の最終局面でしか、
起きなかった現象。
エルシアが、
震える声で呟く。
「まさか……」
「軍勢召喚……」
その瞬間。
空席の一つが、
砕け散った。
──バキィィィィン!!!!
紫雷。
黒霧。
そして。
空間から、
巨大な“門”が現れる。
古代文字。
神代術式。
門の向こうは、
深淵だった。
そこから。
ゆっくり。
“何か”が歩いてくる。
──カツ……
──カツ……
足音。
重い。
世界を踏み潰すような音。
やがて。
姿が現れた。
銀白色の装甲。
人型。
だが、
全長は十メートルを超えている。
身体中へ刻まれた、
神代魔法陣。
背中には、
六枚の機械翼。
片腕は巨大砲。
もう片方は、
神代剣。
そして。
赤い単眼が、
静かにレインを見る。
《認証完了》
《空席の王 個体識別一致》
《神代殲滅兵装》
《永劫機兵アーク・ゼノン》
《帰還します》
兵士達が絶叫する。
「き、機械が喋ったァ!!」
「なんだあれ!?」
だが。
終わりじゃない。
別の空席が、
再び砕ける。
──バキィィィィン!!!
今度は。
星空。
いや。
宇宙そのものが、
裂けた。
そこから。
巨大な魔女帽子を被った女が、
ふわりと降りてくる。
銀河みたいな髪。
瞳の中に、
星が回転している。
彼女は笑った。
妖艶に。
狂気的に。
「あらあら♡」
「王様、また死にかけてるじゃない」
フェルグラードが顔をしかめる。
「うわ」
「最悪なの来た」
ゼルヴァも露骨に嫌そうだった。
「星喰いの魔女かよ……」
女は気にしない。
空中で足を組み、
楽しそうにレインを見る。
「久しぶりねぇ♡」
「今度は世界、壊し過ぎちゃダメよ?」
ルミアが混乱する。
「増えたァァァ!?」
「なんで怪物しかいないのこの軍勢!!?」
その時。
終末の瞳が、
初めて後退した。
──ギギギギギ……
白い“手”達が、
怯えている。
それを見た瞬間。
レインは理解した。
空席の王。
それは。
“孤独な怪物達の王”。
世界に居場所を失った者達が、
最後に辿り着く場所。
だから。
誰よりも強い。
誰よりも壊れている。
レインは、
静かに右手を上げる。
瞬間。
黒き玉座の全空席が、
紫光を放った。
そして。
王は告げる。
「……始めるぞ」
その声と同時に。
終末戦争が、
再び幕を開けた。

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