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〜第83夜〜「返してくる海」

🕯️ はじめに


海ってね……不思議なんですよ……。

広くて、静かで……
どこまでも続いているように見える……。

でもね……
あの“静けさ”って、本当に静かなんでしょうかねぇ……。

よく言いますよね……
「海は、すべてを飲み込む」って……。

えぇ……確かに、そうなんでしょう……。

でもね……

「飲み込んだものを、返してくる海」も
あるらしいんですよ……。





これは、夏の終わり頃の話なんですがね……。

ある家族が、海へ遊びに行ったそうなんですよ。

まだ暑さの残る夕方でね……
人もまばらになってきた時間帯……。

子どもがね、小さな貝殻を拾ってたんです。

「きれいだね」って言いながら……
夢中で、いくつも、いくつも……。

で、その中にひとつだけ……
妙に黒ずんだ貝があったそうなんですよ。

少し大きくて……
表面が、やけにざらついている。

親はね……
「それ、やめときなさい」って言ったらしいんです。

なんとなく……嫌な感じがしたんでしょうねぇ……。

でもね、子どもは気に入ってしまって……

結局、そのまま持って帰ったんです。

えぇ……。

その日の夜ですよ……。

子どもがね、突然起きて……

こう言ったそうなんです。

「これ、かえさなきゃ」

……えぇ?

って思いますよねぇ……。

親が理由を聞いてもね……

「海が言ってる」って。

まぁ、子どもの言うことですから……
最初は、夢でも見たんだろうと……。

でもね……

翌日も、同じことを言う。

そのまた翌日も……

そしてね……

日に日に、“声”が具体的になっていくんですよ。

「そこじゃない」
「もっと深いところ」
「まだ足りない」

……えぇ……。

親もさすがに気味が悪くなってね……
その貝を、海に返しに行ったそうなんです。

あの日と同じ場所へ……。

でね……
海に向かって、そっと投げた。

……その瞬間ですよ。

“波が、逆に引いた”んです。

普通ね……
波って、寄せては返すでしょう……?

でもその時はね……

まるで“何かが引きずり込むように”
一気に沖へと引いた。

そしてね……

その引いた波の中に……

見えたそうなんですよ。

びっしりと……

同じ“黒い貝”が……

砂の中から、こちらを向いているのが……。

えぇ……。

それだけじゃない。

そのひとつひとつにね……

“穴”があって……

まるで――

“目”のように、こちらを見ていたそうなんです……。

慌てて帰ったそうなんですがね……。

その帰り道……

子どもが、ぽつりとこう言ったんです。

「まだ、ひとつ足りないって」

……えぇ。

家に帰って、確認したら……

確かに……
貝は全部、返したはずなんです。

なのに……

子どものポケットの中に――

もうひとつ……

あの黒い貝が、入っていたそうなんですよ……。


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📝 あとがき


海っていうのはね……

境界なんですよ。

こちらと、あちらの……。

だからこそ……

“持ち帰ってはいけないもの”が
紛れてしまうこともあるんでしょうねぇ……。

貝殻なんて、ただの思い出……
そう思ってしまいがちですが……

それが本当に
“この世界のもの”かどうかは……

分からないのかもしれません……。

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この話の核心――

なぜ“返さなければいけなかったのか”
黒い貝の正体
そして「足りないひとつ」が意味するもの……

ここでしか読めない解釈をお話しします……。


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