空席の王 ──奴隷だった俺が最強の仲間を召喚して世界を支配するまで㉖
第二十六章
“終末侵攻”
空が、
砕けていた。
──バキィィィィン!!!!
終末の瞳。
その周囲の空間が、
次々と崩壊していく。
まるで。
“向こう側”そのものが、
現実世界へ侵食してきているみたいだった。
白い“手”達が、
空を埋め尽くす。
数万。
数十万。
もはや数える意味すらない。
世界の終わり。
それが形になった光景だった。
だが。
その前に立つ存在もまた、
世界の理から外れていた。
黒き玉座。
空席の王。
そして。
空席の軍勢。
レインは、
静かに空を見上げる。
紫の瞳。
その奥に宿るのは、
絶望ではない。
覚悟。
もう二度と。
誰も失わないという、
狂気にも似た決意。
その時。
終末の瞳が、
ゆっくり開いた。
──ギョロォォォ……
巨大な瞳孔。
その奥で。
“何か”が蠢いている。
ルミアが息を呑む。
《叡智の書グノーシス》が、
狂ったように警告を吐き出した。
《危険》
《危険》
《世界侵食率上昇》
《終末個体 接近》
ノクスが低く呟く。
「来ます」
次の瞬間。
空が、
内側から裂けた。
──ズルッ
兵士達が凍り付く。
現れたのは。
“顔”。
巨大。
星ほど巨大な、
白い顔。
目がない。
鼻もない。
ただ。
裂けた口だけがある。
その口が。
ゆっくり笑った。
──ニタァ……
その瞬間。
何千人もの兵士が、
発狂した。
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
「見るなァァァ!!」
頭を掻き毟る。
眼球が破裂する。
精神が、
存在を理解できない。
終末の瞳。
その正体。
“向こう側の神”。
フェルグラードが、
初めて露骨に顔を歪めた。
「おいおい……」
「本体出て来てんじゃねぇか」
ゼルヴァも、
漆黒の剣を握り直す。
「最悪だな」
エルシアだけは、
静かにネメシスを構えた。
蒼い瞳。
その奥に、
激しい怒りが燃えている。
彼女は知っている。
この存在が、
どれだけの世界を喰ってきたか。
どれだけの命を、
消してきたか。
レインの脳内へ、
かつての記憶が流れ込む。
崩壊した神代。
泣き叫ぶ人々。
空席達の死。
そして。
王が、
最後に選んだ結末。
──世界そのものを封印すること。
その代償として。
王は、
孤独になった。
誰もいない玉座へ、
座り続けた。
永遠に。
レインの拳が、
静かに震える。
「……ふざけるな」
低い声。
だが。
その一言だけで、
空間が揺れた。
終末の神が、
レインを見る。
巨大な口が、
裂ける。
──ニタァ……
嘲笑。
まるで。
“またお前か”と言っているみたいだった。
その瞬間。
レインの背後。
空席達が、
一斉に立ち上がる。
──ゴゴゴゴゴ……
フェルグラード。
ゼルヴァ。
ノクス。
エルシア。
ルミア。
アーク・ゼノン。
星喰いの魔女。
全員の魔力が、
空を染め上げる。
世界そのものが、
悲鳴を上げる規模。
それでも。
レインは静かだった。
王は、
ゆっくり右手を上げる。
その動きだけで、
軍勢全てが呼応する。
完全統率。
絶対王権。
そして。
レインは、
終末の神を見上げながら告げる。
「総員」
紫雷が、
天を裂く。
「侵攻開始」
次の瞬間。
空席の軍勢が、
終末へ向かって動き出した。

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